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介護業界人事部

2017.08.01 UP

介護現場での仕事を正確・公平に評価できる仕組みづくり。介護スタッフ職でも月収36万円が可能な、技術に特化した人事制度導入の背景とは?

介護現場での仕事を正確・公平に評価できる仕組みづくり。介護スタッフ職でも月収36万円が可能な、技術に特化した人事制度導入の背景とは?/SOMPOケアメッセージ株式会社

SOMPOケアメッセージ社は、もともと病院を運営していた橋本氏が創業したメッセージ社が母体の会社だ。

当時、創業者の橋本氏が病院の現場を訪れた際に、プライバシーがない医療現場に衝撃を受け、「自分だったらこんな場所で医療や介護のサービスを受けるのは絶対に嫌だ、自分が受けたい介護サービスをつくろう」と思ったことが創業のきっかけになった。

この創業時の思いは当社の中に今でも脈々と受け継がれており、「自分なら」と考えて業務を進めることが自然と従業員にも浸透しているという。

そんなSOMPOケアメッセージ社の風土を反映し完成したのが介護現場の技術に則した人事制度だ。

この人事制度は役職軸とは別に、技術を磨いていくことで等級と年収を上げていくことが可能な制度だ。

等級を上げるためには年に1回の、技術に特化した試験のパスと数回の技術系講習の受講が必要になる。

介護業界では役職ごとに等級を上げていく制度は数あれど、技術を客観的に評価し、等級の指標にしているこの制度は最近業界内外からの注目を集めている。

創業当初からSOMPOケアメッセージ社を牽引してきた同社執行役員の山川さんはこう話す。

「当社では創業以来、ご利用者様のご意向を第一に考えて行動するということをとても大切にしてきました。一方、従業員に対するケアについて考える機会はこれまであまりありませんでした。そこで、従業員に対してどのような制度や環境を整えれば、従業員が生き生きと働くことができるかということを真剣に考えました。その過程の中で生まれたのが、この人事制度です。」▲ご利用者のことを考えるのは当たり前、その上でどう従業員のことを考えるかが大事だと語ってくれた同社執行役員の山川さん続けて、この人事制度の運用を担当している同社人事部の阿部さんはこう話す。

「私たちはこの人事制度で2つのことを実現したいと考えています。

1つ目は、ご利用者様・従業員の双方が不安のない援助を受けられる・提供できるようにすること。弊社がご提供するサービスの品質にばらつきがあっては、ご利用者様は安心して援助を受けることができません。品質のばらつきをなくし、ご利用者様に安心して援助を受けていただくためにも、この人事制度は役に立つと考えています。やはり技術に関するハッキリとした『ものさし』が出来た意味は大きいです。従業員も指標があるため、ケアの方針で迷ったり衝突したりすることがなくなりました。

2つ目は、きちんと『キャリアパス』を明示し、従業員がスキルアップでき、長く働ける環境をつくるということ。介護業界では転職をする中で都度その時々の先輩に技術を教わり、成長してきたという方も少なくなく、その結果、系統だった教育を受けてこなかったという方も少なくありません。
そんな状態では、本人が望むキャリアパスを歩むことが難しくなってしまいます。弊社では、従業員に自分が望むキャリアパスを歩んでいってほしいと考えているので、介護に必要なスキルを見える化し、何ができたらどのようなグレードになるのかを明確にしています。」▲役職も大事だが、技術をきちんと見える化し、評価することも重要だと語る同社人事部の阿部さん

更に進化を続ける、これからの当社の人事制度の形とは?~SOMPOケアグループとして、一体での運用を目指す~

昨年からSOMPOホールディングスグループの仲間となった同社。

今後はSOMPOケアネクスト社と統一した人事制度を目指していく。

「これまでは同じグループでも弊社とSOMPOケアネクスト社とでは別々の人事制度を運用していましたが、2018年4月を目処に一本化することを検討しています。それにあわせて両社で賃金体系も一本化する予定です。そうすることでより両者間の人事異動がしやすくなり、従業員にとっては働く場が広がります。学びの場、成長の機会が増えることで、結果的にご利用者様にとってもより安定したサービスを提供できるのではと考えています。」と、阿部さんは語る。

SOMPOケアメッセージ社とSOMPOケアネクスト社が合わさる形で誕生したSOMPOケアグループはいまや業界No.2の売り上げを誇る。

文字通り、業界のリーディングカンパニーになった。今後は、人事制度でも業界最先端を目指す。

介護職の社会的地位を上げることが、真の目的。そのためにも、本人事制度を運用し、磨き続けることが、大切

前述の山川さんはこう話す。

「私が本当に成し遂げたいことは、介護職の価値を上げること。

スウェーデンのように、介護職をもっともっと社会的地位が高い仕事にしていきたいと考えています。そのためには、プロの介護職の方が正当に評価される必要があります。
弊社の人事制度では、ベテランと未経験者の給与には納得感のある明確な差があります。なぜなら知識もあり、経験もあるベテランの従業員の方のほうが、よりご利用者様に安定感のあるサービスを提供することもできるし、明らかにできることも多く、その質も高いからです。
まずはこの制度を核として多くのプロ意識の高いベテラン介護職を世に輩出していくことで、介護職の社会的地位を上げることに少しでも貢献していくことができればと思っています。」▲介護職の社会的地位向上には、技術の可視化が必要だと語る山川さん

人事制度についての実際の従業員の声「大切なのは選べること」

取材をする前にHELPMAN JAPANではたまたま同社に所属をする介護スタッフの方と会話をする機会があった。

取材のことは一切話さず、率直にこの人事制度について聞いてみたが、かえってきた答えは非常にシンプルだった。

「技術を上げていくだけで、年収を上げていける制度があるのは大変ありがたいです。もちろんこの業界は、上の役職に上がりたい、技術を極めたい、年収を上げたいという方ばかりではないのは承知しています。でも、ありがたいことに、この会社は私たち従業員に『選択権』をくれているんです。
人事制度を利用して、頑張って等級を上げてもいい。現状維持でもいい。

大切なのは私たちが選べるということ。

この制度をつくってくれたこの会社には本当に感謝しています。だって、私たちにはチャンスがあるんですから。」

【文: 櫻井 量子 写真: 佐々木 庸介】

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