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介護業界人事部

2022.03.01 UP

職員の定着や業務改善、幹部候補の育成につなげる新しい取り組み/未経験の方が活躍する職場とは?「人事の方に聞いてみました」Vol.10

未経験から介護・福祉の仕事を始めて活躍する方をインタビューする『ひとりひとりの「はたらく」ストーリー』。実際に介護・福祉の現場で活躍されている方からお話をお聞きすると、「職場の環境」・「社内の人事制度」・「フォロー体制」など、活躍のためのヒントが様々にありそうです。CFT(クロスファンクショナルチーム)の責任者である大西さん(写真右/以下大西)、CFTメンバーの真壁さん(写真右から2番目/以下真壁)・柿崎さん(右から3番目/以下柿崎)・立田さん(左から3番目/以下立田)・深瀬さん(左から2番目/以下深瀬)に、詳しくお聞きしました!

人財に関する課題解決や業務効率化を推進するCFTの取り組み

――2021年から始動されたというCFT(クロスファンクショナルチーム)プロジェクトを立ち上げた大西さんにお聞きします。このプロジェクトの狙い、法人としてどのような課題があったことから、このプロジェクトを始めたのかも教えてください。

特定の施設に在籍せず、全6施設を横断的に回るチームをCFTと呼んでいます。現状は4名1チーム。プロジェクトの狙いとしては次の通り3つあります。
①現場スタッフの定着(余裕のあるOJT指導を行うことで早期離職を防ぐ)、②現場の業務改善指導・支援(一定以上のスキル・知識を持つ、スタッフで業務改善を推進・定着させる)、③将来の幹部候補者の育成(横断的な部署に所属することで全社的視点を持つ従業員を増やす)です。
このプロジェクトを始めた背景の一つに、離職率が高まり、派遣勤務者が増えて人件費が高くなる。一方で育成体制が作れず、新入職員が入社してもOJTが実施できない状態が続いていました。その課題を全社的に解決できる部門をつくり、介護技術のレベルの標準化もできる仕組みがあると良いなと思っていたところ、本社への異動のタイミングがあり、提案しました。

――プロジェクトの始動から約半年間が経ちますが、特に力を入れて実施されてきたことは何ですか。

現場の業務改善、特に“統一化”に力を割いてきました。というのも、それぞれ事業所特有のカラーがあり、それは良い部分でもあるのですが、全社のルールや手順がバラバラな部分がありました。そのため、CFTのメンバーが各施設をまわり、情報を集約して統一し、マニュアル化・WEB化を進める。そしてそのマニュアルやルールが浸透しているかを確認するという循環で、統一化を進めてきました。以前は、現場の実態が見えなかったのですが、職員と同じユニフォームを着て現場に入ることで、課題が多く見えてきました。例えば、配薬関連のことがマニュアルに記載されておらず、良い取り組みが知られていない。現場に入り、その気づきをマニュアルに記載し、誤薬事故対策の強化につなげました。誤薬事故対策強化月間の成果も含め、この半年だけで誤薬事故が30%ほど少なくなりました。

――CFTメンバーにお聞きします。本社からスタッフが派遣されるということで、現場スタッフからの反発はありませんでしたか?

真壁:当初は、現場のスタッフからの反発がありましたが、少しずつ歩み寄りができました。まず、「改善しに来ました」というスタンスではなく、あくまで「一緒に現場を良くしていこう」というスタンスで、お手伝いをしながら現場に入りました。また、各会議や、食事休憩の時に雑談を交えながら、その話をして徐々に伝えていきました。そうすることで、次第に信頼関係が築けるようになり、現場の皆さんとのコミュニケーションが図りやすくなりました。
柿崎:CFTの活動を続けることで、良いことも悪いことも含めて、直接現場の声が聞けるようになり、本社に対して「もっとこうしてほしい」という声を聞くことができる。その改善策を考え実施し、現場に還元する策を実施することで、さらに信頼をしていただけるようになるかと思っています。ただ全てを叶えるのではなく、会社を良くするという視点で協力いただくこともあり、バランスが大事ですね。
立田:チーム内では、定期的に会議等で良い取り組みを共有し合うようにしています。

――現場の声を拾い、それを形にするというのはパワーがいることですよね。熱心な想いを持つ方々がメンバーとなられているのではないかと想像します。CFTのみなさんに志望動機をお聞きしたいです。

立田:10年目の勤務を間近に迎えるにあたり、自分の働き方を変えるきっかけになると思い応募しました。マネジメント業務が苦手だったのですが、CFTであればプレーイングマネジメント的な要素もあり、これならできるかもとチャレンジしました。
真壁:ちょうど、こんな取り組みがあったらいいなと思っていたんです。CFTを通じて、現場と本社の両サイドから見えるものにギャップがあるのではないか、そのギャップを改善につなげる力になりたい、成長したい、と思い応募しました。
深瀬:もともと『コンタクトパーソン』という、1対1でケアできる制度に惹かれて、当社に入社しました。入社から3年が経ち、副主任として、職員のマネジメントや20人ほどのご入居者を見るようにもなりました。初めは一人のご入居者の方を幸せにすることから始まったのですが、徐々に対象が広がり、さらにCFTメンバーになることで、多くの人を幸せにできるのではと思い、応募しました。
柿崎:私は、外部から応募して入りました。有料老人ホームでの勤務経験はなく、不安はあったのですが、病院ではなく、在宅や施設における看護師の役割に興味があったこと、CFTという制度が珍しく、自由度の高さにも惹かれてチャレンジしました。

――大西さんはどのようにメンバーを選抜されたのでしょうか。

大西:社内アンケートで立候補を募りました。「すぐに希望する」を選んだ人を面接し、質疑応答の内容や過去の2年分の人事考課を基に、メンバー同士のバランスも考慮に入れながら選抜しました。面接の中では、「志望動機」や「CFTとして何をやりたいか」という“やる気”・“想い”の部分を確認して選抜しました。

――2021年度から一般学部を含めた新規学卒者の受け入れを始めたとのことですが、理由はありますか?
大西:理念に基づいて新卒を一から育て、数年~十数年後にはその職員が幹部となり理念を体現する。そして徐々に理念が浸透する状態を目指していきたいと、CFTを立ち上げるタイミングに、手探りの中で新卒採用を始めました。今後、受け入れ人員を増やすために、育成体制をさらに整えていくべきと思っています。

▲CFTの皆さんと未経験で新卒入職した吉田さんが話す様子

――職員インタビューに出てきた、介護業界未経験の吉田さんについて、研修はどのようなスケジュールで実施されていましたか?

大西:1か月間、“介護保険 “や”身体拘束“などの基本的な介護の知識を含む座学や、見学等を時間割で実施していました。5・6月は週3程度、介護職員初任者研修修了資格へ向けて授業を受けるスケジュールです。当社では、介護資格がない期間に介護業務はしないという決まりにしていて、授業以外は、一日の流れを見学。資格取得後は、先輩に随行しながら直接的なケアに入ります。その後も、独り立ちまでは1年間程度の育成期間があり、サポート体制を組んでいます。吉田さんについては、特に新卒1期生ということで、1人の不安を感じないようにするため、CFTのメンバーと一緒に過ごす時間を多くもつようにしました。プライベートのことも含めてコミュニケーションを多くとることができ、お互いに信頼関係をつくることができました。

▲入職時研修の研修スケジュール(一部)


▲新入職員研修の様子

――CFTの取り組みのほか、職員間の連携を高めるために実施している取り組みはありますか?

大西:『ポジティブサンクスカード』という制度があります。職員間で良いところをポジティブに伝えあう機会を設けるため、定期的にカードを渡し合っています。職員間でなかなか言葉にできない感謝の気持ちを伝えるいい機会となり、職員間の連携を強めることができています。

▲「ポジティブサンクスカード」を掲載する様子

――今後、CFTとしてチャレンジしたいことはありますか?

柿崎:各施設の職員同士の横のつながりや情報の連携が、このような社会情勢もあって、できていないとも感じています。今後、CFTがその横のつながりをつくる役割を担っていけたら良いなと思っています。
大西:CFTの取り組みを行う中で見えてきた課題を、まずは解決することが第一と思っています。そして横のつながりをつくり、理念を主軸とした良い事例の共有や展開を行い、理念浸透・コンセプトの統一化にもつなげていきたいと思っています。

【大和ハウスライフサポート株式会社】
大和ハウスグループの経営ビジョンである『心をつなごう』のもと、自立型と介護付ホーム併設の有料老人ホームや、介護付有料老人ホームの計6施設を運営。(https://www.dhls.jp/)。ご入居者一人ずつに担当スタッフがつく「コンタクトパーソン制度」や、ご入居者の夢を実現する「ONLY ONE プロジェクト」など、ご入居者一人ひとりに寄り添ったサポートを行う。2021年よりCFT(クロスファンクショナルチーム)プロジェクトを始動。特定の施設に在籍せず、横断的な働き方ができる人員を配置することで、職員の定着や業務改善指導・支援を行う。未経験で活躍されている方のインタビューはコチラ

【文: HELPMAN JAPAN 写真: 大和ハウスライフサポート株式会社】

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