facebook
twitter

介護業界人事部

2021.07.29 UP

職員の意見から生まれた福利厚生は26種類。全国平均から大幅に下回る離職率の秘訣とは

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

未経験から介護・福祉の仕事を始めて活躍する方をインタビューする『ひとりひとりの「はたらく」ストーリー』。実際に介護・福祉の現場で活躍されている方からお話をお聞きすると、「職場の環境」・「社内の人事制度」・「フォロー体制」など、活躍のためのヒントが様々にありそうです。人事の方に詳しくお聞きしました!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

職員が働きやすい職場づくりを目指すためのプロジェクトチーム。定着率アップ以外に生まれた「誇り」。

――福祉学部以外の学生を採用されているとのことで、これまでどのような学部の新卒学生の採用をされてきましたか?
これまでに、大卒経済学部、文学部、人文学部、法学部、健康生活学部の出身者、高校普通科を卒業した方を採用しており、合計34名が無資格・未経験者で入職されました。

――数多くの他学部の学生を採用されてきたんですね!他学部の学生を採用するまでの経緯を詳しく教えてください。
平成22年くらいまでは、毎年、各介護福祉士養成校から新卒学生を5~6人程度採用できていたのですが、年を重ねるごとに難しくなってきました。理由は2つあり、①養成校への入学者が年々減少していることとそれに伴い、長崎県内では、短大1校、専門学校1校の介護福祉士養成課程が廃科されたこと ②景気が上向くことで売り手市場となり、高校における進路選択時に介護の仕事を選ぶ方が減ったことです。一方で、養成校に入学する人にも変化が生まれ、外国人留学生や雇用保険を使って通う方の割合が多くなり、養成校を通じた採用に対する考え方自体も変える必要がありました。これらのことは、毎年、長崎県内の介護福祉士養成校へ学校訪問をする中でわかってきたことです。以上の理由から、介護福祉士養成校から有資格者を継続的に採用することに限界を感じ、無資格・未経験者の積極採用に着手しました。

――無資格未経験の若手を採用することについて、現場の方からはどのような反応がありましたか?
現場の方も上記の理由で採用が難しくなっていることで、実習受け入れを通じて一緒に働きたいと思える方が減っているという考えが一致していました。また、採用数を確保するためには、“人と接する仕事がしたい”、“福祉や介護に興味を持っている”など、介護業界への志を持つ無資格・未経験者を育成していく必要があるという考えも一致していたので、比較的スムーズに受け入れてもらえました。
私たちは“福祉文化の創造”という理念を掲げていて、「福祉のひとづくり」と「福祉のまちづくり」を目指しています。そのため、地元長崎で福祉に携わりたい人を育てていくことは経営理念に合致していますし、地域資源をつくることにもなる。ひいてはご利用者やご家族のためにもなるという点で、理念にかなった採用方法だと考えています。無資格・未経験者を、一人前の介護福祉士として育てていくことが我々のミッションであるという共通認識で進めることができています。


▲ご利用者様について話し合うカンファレンスの様子

――一般学生を採用するにあたり工夫されている点はありますか?
新卒採用については、無資格・未経験の学生に興味を持ってもらうために、採用ナビサイトを活用するほか、合同説明会に参加し、まずは気軽に参加してもらえるようなブースづくりをしています。例えば、法人や業務説明を中心にするのではなく、就職活動で困ったことを先輩職員が伝えたり、「介護の仕事は究極の接客業」というように、業界の魅力についてお話をしています。また、オンラインインターンシップに取り組んでおり、業界を絞る前の学生にアプローチすることで、令和2年度は43名の学生が参加してくれました。令和3年度も8月までに20名の予約をいただいています。インターンシップは、大学3年生を対象に、6月から広報を始めて、夏休みや休日に参加していただけるようにしています。法人説明会や面接についても、オールオンラインで対応しており、UターンやIターンの学生からの応募も増加しています。人と接する仕事や、ノルマを強く求められない仕事を探す学生にとっては、介護業界に興味を持っていただきやすく、その中でも長崎で働きたいという方に私たちを選んでいただいていますね。
これらの採用活動の企画については、新卒採用チームを作り、採用担当のほか、入職して2~3年目の職員も参画し、みんなでアイデアを出しながら実施しています。


▲合同会社説明会の様子。若手職員がプレゼンすることで新卒学生に身近に感じてもらえている。

――職員インタビューでお話をお聞きしたところ、育成体制がとても手厚いようですが、制度を作られるまでの経緯を教えてください。
平成15年10月に施設を3つオープンし、約130人の職員を一気に採用しました。ただ、開設後3年が経過したころ、離職者が増加し離職率が17%まで増加してしまいました。辞める理由を聞くと、職場の人間関係、例えば先輩の指導が厳しかったということや、施設の方針になじめないという後ろ向きな退職が多かったことを覚えています。その事業拡大時に新卒採用を始めたのですが、その方々の一部も早期離職。早期離職者がいる限り、介護の質も安定せず、これでは穴の空いたバケツにひたすら水を汲むようなものでした。このままでは安定した組織体制は構築できないと考え、まずは新入職員研修に力を入れることとしました。(研修については職員インタビュー参照)

――そのほか、法人全体の定着率アップのために実施していることを教えてください
今回は大きく2つご紹介します。
新卒採用に力を入れると、結婚、妊娠、出産というライフスタイルの変化が生じる女性職員が増えてきました。全ての職員が気兼ねなく育児休業を取得し、短時間勤務として復帰できるように育児休業の取得を推進し、令和2年度までに93名の女性職員が150回育児休業を取得。育児休業取得率、復職率も100%です。
また、日々の育児に追われ、自身の昼食準備ができない職員や、カップラーメン等で簡単に済ます職員が多かった為、健康経営の一環として、平成29年度には「シンフォニー稲佐の森」敷地内に職員食堂を設置しました。一汁三菜のランチを一食300円で提供し、1日約100名の職員が利用しており、大変好評です。また、令和2年度からは、「救護施設彦山の森」において、「オフィスおかん」という置き型社食サービスも導入しました。
これらの取り組みについては、経営者や管理者側からのトップダウンで決定したことではありません。職員が働きやすい職場づくりを目指すために、平成26年度から内部横断的な「ひとづくりプロジェクトチーム」を立ち上げ、その中で定期的な職員アンケート等を実施しながら、優先順位をつけて法人で実施できることに取り組んできた成果です。(最下部にそのほかの取り組みも記載)
研修を含めたこれらの取り組みの結果、17%にも高まった新入職員の離職率は低減し、直近では新入職員の1年目の離職率はゼロ、年間の介護職員の離職率も7%程度(長崎地区においては4%程度)となっており、全国平均である16%を大幅に下回ることができています。


▲職員のニーズから生まれた職員食堂

――働きやすい環境を整えることで、定着率以外に生まれたことも教えてください!
当法人を一度退職した職員が、再び働きたいという復職者の増加がありました。もう一つは職員からの紹介採用です。令和2年度は復職者が9名、職員紹介採用が19名、計28名でした。一度当法人を退職した職員が復職することは勇気がいることですし、知人や友人を紹介するには責任を伴います。そのことを前向きに捉えてくれている職員が増えてきたことは本当にありがたいことですし、とても感謝しています。
また、年齢・性別に関係なく、誰もが働きやすい環境づくりに積極的に 取り組む長崎県内企業を、県が優良企業として認証する制度「Nぴか認証制度」があり、審査の結果、5ランクあるうちの上から2番目である四つ星認証を受けることができました。現在、四つ星企業は県内に19社しかありません。そのほか、令和元年度に「ながさき女性活躍推進企業大賞」を受賞するなど、外部認証を積極的に受審することや、表彰されることにより、当法人へ応募することや、働くことに対する安心感を得ていただきたいと考えています。
そして個人的に嬉しかったことですが、職員向けアンケートに、「私はこの法人で働けることに誇りを持っています。とても働きやすい環境を作ってくださり、本当に感謝しています」との記載がありました。当法人は職員が法人で働くことに誇りを持てるような組織づくりを目指しているのですが、一歩ずつ前進していると感じる瞬間でした。

(参考)職員の意見から生まれた福利厚生(26種類)
■事業所内保育施設あり(稲佐の森保育園、利用料食費のみ)
■職員食堂あり(稲佐の森レストラン昼食300円)
■ドリンクサーバーあり(コーヒー、紅茶、日本茶)
■介護技術については、マンツーマンのプリセプター制度で指導
■希望休制度あり・慶弔休暇、慶弔見舞金あり
■バースデー休暇・リフレッシュ休暇あり(勤続5年以上で連続5日間)
■法人費用負担で懇親会実施(年に2~3回)
■職員用無料駐車場完備
■育児休業・介護休業制度あり
■育児休業取得率・復職率→100%
■永年勤続表彰制度あり(勤続20年以上)
■法人オリジナル研修を年間19種類129回実施(2019年度)
■新卒者に対して1か月間の新入職員研修を実施
■委員会、会議、研修をできる限り業務時間内に実施

【社会福祉法人長崎厚生福祉団】
長崎県にある社会福祉法人長崎厚生福祉団は、昭和54年に設立し、今年で42周年を迎える社会福祉法人。「福祉文化の創造」を経営理念とし、長崎県内において、特別養護老人ホームなど計34の社会福祉事業を経営している。(http://www.nagasaki-kouseifukushidan.or.jp/)。年齢・性別に関係なく、誰もが働きやすい環境づくりに積極的に 取り組む県内企業を、県が優良企業として認証する「Nぴか認証制度」で四つ星認証を受けたほか、「ながさき女性活躍推進企業大賞」も受賞。未経験で活躍されている方のインタビューはコチラ

【文: HELPMAN JAPAN 写真: 社会福祉法人長崎厚生福祉団 提供】

一番上に戻る