介護業界人事部
2021.06.28 UP
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未経験から介護・福祉の仕事を始めて活躍する方をインタビューする『ひとりひとりの「はたらく」ストーリー』。実際に介護・福祉の現場で活躍されている方からお話をお聞きすると、「職場の環境」・「社内の人事制度」・「フォロー体制」など、活躍のためのヒントが様々にありそうです。人事の方に詳しくお聞きしました!
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施設全体で同じ目標を持つことでモチベーションアップにつなげる
――定着率が92.1%ということですが、以前は違ったそうですね。
開設から15年経っているのですが、10年くらい前まではいくら採用しても辞めてしまう状態でした。理由は主に2つあって、看護師と介護士の対立と、各部署の介護職間の対立でしたね。看護師と介護士間のコミュニケーションが不全であったり、ユニットごとに、ケアのやり方とか業務がバラバラでした。「うちはこうしているけどね」という言葉が出ていて、変に競争してしまっていました。各々のユニットや部署は一生懸命やっているんですが、理念を共有していなので、個々の大切にする目的や考え方に相違が生じ、お互いが相容れない状態。最終的には、変わらないのは「施設のせい」という考えに至る職員が多かったです。
その原因によって生じた大きな問題は、リーダーが研修に行った後に現れました。他法人のユニットケアの実地施設に研修に行った職員が、せっかく沢山の良い事例を学んで持ち帰ってきたのに、施設側が改善することができなかった。そうすると、モチベーションが逆に急降下してしまい、離職につながるんですよ。
――育成のための研修がマイナスにに作用してしまったんですね。どのようにして今の定着率にまで改善したのですか?
離職を防ぐために役立ったことは、職員が同じ目標を持つことでした。目標を持つための方法として、県や国など外部からの認定(=評価)をもらうことや、ユニットケアの実地施設となることに挑戦しました。それらの目標を掲げていた時も、始めの3年間くらいは反発があったりと、意見がそれぞれ食い違って、それを調整したりと大変な思いをしましたね。改革を通じて、10人くらい辞めたこともありました。現場の反発があった時の解決策としては、外部の調査員を入れて、徹底的に指摘してもらったことです。調査員は、ユニットケア受け入れ施設にお願いをしました。やはり外の方に入っていただくと、施設長が言うよりも、指摘を受け入れてもらいやすい。それどころか、「もっと頑張るぞ!」と思ってもらえて、改革が加速していきましたね。次第に、職員が一丸となり、施設長も自ら「変えていくぞ!」と旗振り役になってくれました。定期的に外部の調査があるので、指摘への改善や、極力指摘のない状態を目指して一丸となり、認定という評価をもらえることが、モチベーションアップにつながっています。その結果、定着率の改善につながりましたね。
――苦い想いもしながらも、外部の方にも協力をいただきつつ、激動の中で改革を進めたんですね。そのほかにも現場職員の方のやる気を高めていることはありますか?
施設長からのトップダウンというよりも、現場の職員がチームで考えられるようにしています。例えば、各ユニットリーダーに権限を委譲しており、ユニットで自由に使える費用として年間6万円予算を組んでいて、各ユニットごとに使い方を決めてもらっています。使用用途としては、ユニット内でイベントを開催したり、家具を買ったりしています。
あとは、働きやすさ改革として、定期的に職員アンケートを行い、改善できる仕組みを作っています。「屋根付きの駐輪場がほしい」「喫煙所がほしい」「休憩室がほしい」という要望がこれまであり、実際に設置してきました。休憩室は3ヶ所作り、リクライニングチェアーも置いていますよ!年間休日も増やし月10日、年間121日休めるようにしています。
――働きやすさを高める様々な工夫をされていますね。採用に関しても教えてください。
経験者については、即戦力でスキルを発揮していただけるという点で採用しています。一方で、以前働いていた考えを持ち込んでしまうことが少なからずあり、前職の経験と、私たちのケアとのギャップを埋められないこともありました。ちなみに、私たちの施設では個別ケアをやっており、時間通りに一斉に起床や食事をして…というようにはしておらず、1人1人に合わせて、入居者さんごとに生活のリズムが異なります。他にも、入居者さんのいるフロアは生活の場なので、効率性を求めた館内一斉放送もしません。一斉に介助することに慣れていると、個別ケアに慣れるまでが大変かもしれませんね。
未経験者は、介護の基礎を学んでいただく分、独り立ちまでに時間はかかるのですが、“前職のやり方”という知識がない分、施設が教えることを素直に吸収してくれるんです。今は、未経験者が定着しているかもしれませんね。現在リーダーの内、約5割が未経験者からのスタートです。働きながら学べるよう、福祉資格専門学校と連携して、実務者研修の授業も受けられるようにしています。ちなみに、職員だけではなく、地域の方も受け入れているんですよ!その後、職員は国家資格である介護福祉士を取得しています。
――職員を採用するにあたり、採用基準はありますか?
介護職については、ホスピタリティーのある方ですね。人の気持ちを汲め、入居者さんに寄り添えるような人です。私たちは、スーパースターはいらない、スポーツのチームプレーと一緒で、目的を一緒に達成できる人を求めています。面接の際には、それを伝えた上で「それでもいいですか?」と求職者に訪ねて、すり合わせをしています。また、どんなホスピタリティー性をお持ちか確認するために、これまであったエピソードを聞くようにしています。例えば、前職やこれまでの経験ではどのような役回りをしていたか、何か困った人がいた場面でどのように対応したか、あとはおじいさんおばあさんとどう過ごしてきたかなどもお聞きしたりします。
介護職以外の他職種についても、採用するときに気を付けているポイントがあります。第一に、“笑顔で接することができること”です。入居者さんが中心であることを大切にしていて、そのために笑顔で接することができることを求めているのですが、それは入職後も施設長から職員に伝えるようにしています。強く意見を主張される方ではなく、穏やかな方の方が、当法人の風土には合っていますね。
【社会福祉法人寿徳会】
神奈川県にある社会福祉法人寿徳会は、高齢者向けの特別養護老人ホームのほか、障がい者向けグループホーム等の事業を展開。(https://www.hadanosyojuen.com/)。定着率は92.1%。神奈川県から、一定以上のレベルを満たすことで認定される「かながわ認証」を受けるほか、ユニットリーダー研修の受け入れ施設としても選ばれている。未経験の方に活躍していただくための制度・取組事例はコチラ
【文: HELPMAN JAPAN 写真: 社会福祉法人寿徳会 提供】