介護業界人事部
2021.04.07 UP
未経験から介護・福祉の仕事を始めて活躍する方をインタビューする『ひとりひとりの「はたらく」ストーリー』。実際に介護・福祉の現場で活躍されている方からお話しをお聞きすると、「職場の環境」・「社内の人事制度」・「フォロー体制」など、活躍のためのヒントが様々にありそうです。人事の方に、詳しくお聞きしました!
他業界で培った『人間力』を福祉に
――インタビューで様々なお話をお聞きしたのですが、そもそも未経験者の方を受け入れようと思ったきっかけを教えていただけますか?
もっと様々な方にお会いしたい、と思ったことがきっかけですね。各事業所の管理者は、面接時に『人間力』を重視しています。経験やスキルは後からでも身につけられ、実際のご利用者とのケアや、向き合う場面を通じた現場だからこそ習得できるスキルや力があるのかなと思っています。それよりも『どんな想いを持つ人なのか』という想いの部分と、『将来どのように成長しそうか』という可能性の部分を大事にしていますね。そのためまずは一度、経験の有無による制限や条件を付けずに募集をしてみようという方針になりました。
――『人間力』として、どのような部分に着目されていますか。
『人間力』については様々ありますが、『人と接することが好きかどうか』、『人の話を聞くのが好きか』、『相手の想いを汲み取れるか』、などのポイントを確認していますね。それを知るために『人と接するような仕事をしてきたことがあるか』という質問をすることもあります。ご利用者の中には、自分の想いを伝えることが難しい方もいるので、特に『相手の想いを汲み取れるか』については、大事にしています。その力は、学校で勉強するだけでは身につかないなと感じています。ただ、相手の想いを汲み取ることはなかなかできることではありません。相手の立場に立って物事を考えられることや傾聴ができる方の場合、ご利用者と接する中で相手の気持ちに気付けたり、相手の気持ちを汲み取ることができるようになったりするなと考えるためです。
――求める人材像を明確にされていますね。未経験の方の選考基準・選考プロセスについて教えてください。
未経験という理由で変えているプロセス・基準は無いですね。ただ、面接の前後に、必ず施設見学で現場を見ていただいています。入社してから「こうじゃなかった」というようなマイナスのギャップを少しでも減らすためです。見学をしていただくことで、こんなスタッフやご利用者がいるということ、こういう職場の雰囲気なんだ、ということを目で見て感じた上で判断してほしいと考えています。
――未経験者の方を受け入れるにあたってどのような研修をされていますか?
入社後に前期と後期に分かれて、同時期に入職して約半年経過した職員を対象に、集合研修を行っています。そこで改めて社内ルールの確認や、各事業所の事例共有などこれまでの振り返りを行っていますね。
他には月に一回、各事業所内でもOFF-JT研修を行っており、事業所内の特性に合わせた事例検討会をしています。例えば、知的障がい者、強度行動障がい者へのケアについての研修ですが、高齢者分野でいうケアプラン会議に似ていますね。
加えて、年に一回法人の全職員を対象とした全体研修も行っています。ここでは各事業所の成功事例や失敗事例の共有をしています。せっかく沢山の事業所があるので、他の事業所での好事例や学べる事例として、多くのことを学んでいただけると思っています。失敗事例については、同じようなことが起こらないように法人の方針・理念を含めた確認や、外部講師を招いてテーマに沿っての講習も行っています。
そのほかにも、ミドル研修、役職者研修、人の心理を学ぶ研修を設けているほか、視野を広げて頂くために、他事業所の施設見学の機会も作っています。
▲年1回開催する全社研修の様子
――教育体制や資格取得の支援制度について教えてください!
未経験の方の場合、入社してから約3か月間は教育担当を必ず1名が付いて、いきなり1対1でケアをすることのないようしています。その期間内で、福祉の基礎知識を学んでいただくほか、何が良くて何が良くないのかというケアの境界線を実地研修で学んでいただいています。資格取得の支援については、取得出来た際に奨励金を支給しています。
――未経験で入職された方から、これは役立ったと声のあった研修はありますか
障がいをお持ちの方で、強度行動障がい(自傷や他害を行う)と呼ばれる方がいます。当法人では、県から委託を受けて、この方たちへの支援のスキルやニーズの把握方法(アセスメント)の研修を行っています様々な事例を踏まえて行うのですが、自分がいる事業所のご利用者に当てはまる事例も多く、そのまま使えることもある実践的な研修ということで、役立ったという声がありましたね。
――未経験者を受け入れるにあたり現場からの声は何かありますか?
みなさん、歓迎の気持ちで受け入れていますね。未経験で入社された職員も多いため、入社時の不安もわかっている人が多いです。そのため、周りの職員が「みんなが通ってきている道だから支えるのが当然!」という社風がありますね。約3か月間、教育担当がつきますが、教育担当だけにすべてを任せるということもなく、チーム全体でもサポートしていこうよ、というみんなで支え合う雰囲気がありますね。
――異動やキャリアアップ事例やキャリアチェンジについて教えてください
正職員を目指したい職員は手を挙げてもらう、キャリアチャレンジ制度を設けております。別途トレーニングを受けていただき、合格したら正職員になります。毎年5~6人くらい挙手があり、ほぼ正社員になっていますね。
キャリアチェンジについては、毎年経験してみたい事業所や分野など、今後のキャリアの方向性を調査し、それに基づく人事を検討しています。事務の仕事をしていた職員が支援員を希望し異動することもあれば、逆パターンもありました。近隣地域内での異動もあるため、生活介護や施設介護などの直接的なケアを行う職種から、就労支援B型という『働く』ことを支援する職種に変わる場合もあります。ご本人のやる気と法人の事業がマッチングできるように心がけていますね。
――最後に、未経験から入社されて活躍している方の共通点を教えてください
様々なことに取り組んでいる法人のため、「挑戦したい!」「ご利用者のためにこういうことをやりたい!」という想いがあり、実行している職員が活躍していますね。例えば、ある事業所のプロジェクトでは、ご利用者のお誕生日月にやりたいことを職員が汲み取り、それを叶えるというITO(いと)プロジェクトというものがありました。古文のいとおかしの「いと(とても、非常に)」と「糸」のように様々なことが繋がっていくように、という想いを込めたプロジェクト名で、職員が主体となって考えたものです。ご利用者の人生を振り返った時に、こんなことをしたら喜んでくれるんじゃないか、と職員が企画から実行までおこなっているんですよ。誕生日ケーキを用意して一緒にお祝いする、というのは良くあると思うのですが、更に一歩踏み込んだ挑戦をしながらご利用者と一緒に楽しんでいます。
【社会福祉法人南高愛隣会】
「生きる誇りへの、挑戦」「人生は 楽しい」を合言葉に掲げ、障がいのある方の夢や希望を叶えるために挑戦を続ける社会福祉法人 南高愛隣会。長崎県下の5市にて約1,000名ものご利用者へサービス展開を行う。(http://www.airinkai.or.jp/)未経験で活躍されている方のインタビューはコチラ
【文: HELPMAN JAPAN 写真: 社会福祉法人南高愛隣会 提供】