介護業界人事部
2021.12.20 UP
ICTなどの業務効率化により週休3日制を実現できた秘訣は?/未経験の方が活躍する職場とは?「人事の方に聞いてみました」Vol.9
未経験から介護・福祉の仕事を始めて活躍する方をインタビューする『ひとりひとりの「はたらく」ストーリー』。実際に介護・福祉の現場で活躍されている方からお話をお聞きすると、「職場の環境」・「社内の人事制度」・「フォロー体制」など、活躍のためのヒントが様々にありそうです。人事の増田さんに詳しくお聞きしました!
未経験者の受け入れ時には、“将来の変化”を伝えることで、現場の職員が協力しあえる
――はじめに、採用について教えてください!未経験の方を採用するにあたり、どのような視点を持って採用をしていますか?
介護業務の経験有無に関係なく、“思い”を聞くようにしています。なぜこの仕事を選んだのか、介護を始めた後、どうしていきたいかということは必ず聞くことにしています。介護の経験があったとしても、この長寿村のやり方をしっかりと学んで体現していただきたいと思っているので、そのような素地のある方に来ていただきたいと思っていますね。もちろん、即戦力のある方を採用できることが良いのですが、日々の業務をスピーディーに行うことが先に来るより、ご利用者さんをよく知り、その人のためにケアができる人に来てほしいです。そのこともあって、法人の理念研修を大切にしています。
――職員インタビューでも、研修が充実しているように感じました。理念研修のことも含めて、詳しくお聞きしたいです!
今回インタビューした職員が働く施設である横濱かなざわ翔裕園は、新規オープンだったこともあり、ご利用者さんが入居する前の空いている施設を利用して、研修を1か月ほど実施することができました。経験者も未経験者も一律に受講していただいていて、佐藤・髙橋・淺井の3名とも受講しました。淺井は、初めての介護業務でしたが研修受講後、約2か月で業務ができるようになりましたね。
研修の内容はいくつかありますが、特に理念研修に力を入れています。これは、職員全員が受けてます。また、ケアのあり方についても研修の中で伝えています。例えば、私たちの施設では、特別養護老人ホームは「生活する場所」だと考えており、「入居前の生活の延長」だと考えています。ユニットでご飯を炊くのですが、ご飯が炊ける匂いによって生活の場を創り出します。そのようなコンセプトを、必ず研修で伝えるようにしていますね。この理念や方向性をもとに日々の目標設定もするような仕組みを作っています。また、職員が各自自分の好きな時に見ることができるeラーニングなどで、実技・介護全般、ケアマネ対策も含めて学べるようにしています。対面でないと伝えられない、ニュアンスが伝えにくい研修は実地で行っています。
さらに、新卒を含めた未経験者については、入職時研修を行っています。そこでは、介護の基本のほか、働く人のスタンスについても話しています。未経験者の方については、直接的なケアを入職後すぐ行うのではなく、高齢者と話したり接したりすること等、間接業務を行ってから、ケアに入るというように、ステップを踏めるよう業務の組み立てをしています。
加えて、2年間のメンター制度もあります。各ユニットリーダーがメンターとして付き、業務の中で本人が困った時に相談できるようにしています。
ある程度経験を積んだ後には、理事長等の経営層と、直接話ができる元気塾や、、海外研修などのユニークな研修も実施し、職年数や階層に応じて多様な職員が学ぶ機会を提供しています。
▲研修の様子
――研修の他にも、日々のフォローや業務の組み立て等、工夫されているんですね。新卒の定着率が97.56%と高いのですが、研修以外に何か秘訣はありますか?
介護を学んでいる方に比べて、介護を知らない方はマインドの醸成等、一から育成する必要があり、そのためにフォロー研修を行っています。そのほかには、親睦会を行うことで、職員同士の関わりを定期に持つようにしています。新型コロナウイルス感染症拡大の前には、職員の行事として、ボウリング、山登りなども。職員同士のかかわりが多い分、新人さんが職員同士とのつながりをうまく作れていると思いますね。人間関係はいいほうです。
▲親睦会に親子で参加する増田さんの様子。※新型コロナウイルス感染症拡大前の写真。職員が親子で参加できる企画も行われている。
――研修だけでなく、横のつながりをつくることが肝なんですね。人間関係が良いとのことで、どのようにしてそのような関係をつくれているとお考えですか?
上司部下・職種関係なく、気軽にお互いが話しかけられていて、普通に話せる関係性を作るようにしていますね。例えば、ご利用者さんについて、今後どうしていきたいということをざっくばらんに話し合えていますし、言っていいんだという雰囲気を作り、思っていることを口に出せるようにしています。
――職員インタビューの中で、働きやすいというお話がありましたが、働きやすい環境づくりのために、どのような制度があるかについても教えてください!
働きやすさをつくるために、ICT等の機器を取り入れながら業務を改善しています。人がやらなくてもいいことはやらずに、いかに効率よくできるようにするかを考えています。一方で、従来のやり方を変えるときは職員側の受け入れが難しく、反発もあります。そのような場合は、この先楽になるよ、と将来を見せるようにしています。その点は、未経験の職員を受け入れる時と状況が似ていますね。同じように、最初は育成に労力がかかるけど、この先職員が育ったら、楽になるよと伝えることで、協力体制をつくれていますね。
結果的に、人員も安定し、施設によっては週休3日制を取ることができています。ほかにも、柔軟で多様な働き方を増やすために、子どもが生まれたことで退職された方には、再雇用制度を設けたり、小さなお子様がいらっしゃる方には短時間勤務やフレックス勤務、始業時間の繰り上げ、繰り下げ制度など、多様な働き方ができるようにしています。
また、インタビューでもお話した淺井は、遠方の他県から引っ越してきたのですが、寮制度があるので2万円くらいで住むことができています。寮は普通のアパートと同じように居室がそれぞれあるタイプです。淺井は「たまに同じ寮の人と話す程度だけど、同じ法人の人が住んでいるので、お互い変則勤務であることを理解しています。なので、夜勤明けの場合でも、音等を気にせず安心して住むことができています」と言っていましたね。
――インタビューでは、今後の目標として3人とも資格取得を目指しているお話をしていらっしゃいました。資格取得やキャリアステップについても教えてください!
長寿村では、働きながら資格がとれる制度を設けています。グループ内の教育事業の中には介護福祉士の養成校もあるため資格取得に向けた受講も相談可能となっています。キャリアパスについては、独自の制度があり、専門職コースと管理職コースから選択できる。先ほど紹介したeラーニングも連動させながらステップアップできる仕組みです。このような制度もあってか、資格を目指す勉強熱心な方がかなりいらっしゃいますね。
▲カフェのような雰囲気の施設内は、職員の働く意欲にもつながる。
――大変参考になるお話、ありがとうございました!
【社会福祉法人長寿村(元気グループ)】
「共に生きる」というグループ共通の基本理念の基、医療・介護福祉・教育事業を行っています。その中、介護領域においては「家族主義」「現場主義」「感動介護」という思いのもと、秋田・宮城・静岡・茨城・埼玉・東京・千葉・京都・滋賀・愛知・大阪・熊本・福岡の13都道府県、91拠点と海外においては、台湾、中国、カンボジアといった国に事業を展開(https://genki-group.jp/)。「今までの常識・業界の常識にとらわれない。様々な可能性にチャレンジし、未来のあたり前を創る」ことを法人の使命とする。職員には、様々なチャレンジをするための環境・学び・育つ機会を提供。経験者、未経験者にかかわらずそのステップに合わせた研修プログラムが充実している。未経験で活躍されている方のインタビューはコチラ。
【文: HELPMAN JAPAN 写真: 社会福祉法人長寿村 提供】