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介護業界人事部

2021.06.16 UP

介護未経験者の入社後ギャップによる離職を防止。“サポートスタッフ”を通じて拡がる介護人材採用のすそ野

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未経験から介護・福祉の仕事を始めて活躍する方をインタビューする『ひとりひとりの「はたらく」ストーリー』。実際に介護・福祉の現場で活躍されている方からお話をお聞きすると、「職場の環境」・「社内の人事制度」・「フォロー体制」など、活躍のためのヒントが様々にありそうです。人事の方に詳しくお聞きしました!

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「想い」と「リアルの仕事」のギャップから生まれる離職を防止!“サポートスタッフ”という職種。

――「サポートスタッフ」という職種を作った経緯を教えてください!
福祉を目指される方が、この10年くらい極端に減っていると感じていることが一番のきっかけです。以前は、福祉養成校の卒業生から採用していたのですが、そもそも近年生徒が減っています。そこで、未経験で業界に興味のある方を施設で向かい入れ、自法人で育て、キャリアアップを目指すというルートを作りました。それがサポートスタッフです。
サポートスタッフのキャリアラダーを考えた際に気を付けたのは、“ギャップ”です。早期退職の理由を調べた際、人間関係以外の理由で挙げられたのが“ギャップ”でした。「思っていた仕事と違う…」というような言葉があったんです。というのも、福祉業界を大きい枠で捉えている方が、実際の仕事に携わった時にギャップを感じてしまうのではないかと。そのため、「想い」と「リアルの仕事」を埋めていく必要があると考えたんです。

▲無料の採用管理ページで作った介護職スタッフ募集時の原稿(上)とサポートスタッフ募集時の原稿(下)。介護職とサポートスタッフの求人を分けて出すことで、求職者の面触れる機会の増加と、採用したい人物像にあった採用が可能。この原稿を通じて『サポートスタッフ』を採用することができた。

 

――「サポートスタッフ」について詳しく教えてください
例えば、泉寿会の一施設である『いずみ苑』のサポートスタッフは、施設内で2人体制にしています。1年間かけて実力をつけて介護職にステップアップするような仕組みにしています。これまで介護職になった人は2名。ちなみに、私たちはサポートスタッフという職種を必要としているのではありません。ずっと同じサポートスタッフの仕事を続けるという前提ではなく、“介護職になる“というキャリアを歩んでいく練習期間として、利用者さんの生活のご理解を深めるための期間にしています。周りのスタッフも、これから介護職になるメンバーという認識で接していますね。

――サポートスタッフが介護職になる過程も教えてください
『いずみ苑』の場合、サポートスタッフとしての1年間の内、後半の残り約2か月は、介護職に近い仕事を行っていただきます。ご移動・入浴のお手伝い等の仕事をしていただき、対応方法を学んだ上で、リーダーがその様子を確認します。そこで認められれば介護職となります。リーダーがそこで確認していることは、『ご利用者さんを尊重した関わりができているか』という点を大切にしています。正直なところ、介護の技術は、介護職になっても身に着けられるため、利用者さんへの想いという一本の柱があることが重要です。そして、社会人のプロであるということも大事です。ちなみに、施設によっては高校生サポートスタッフが多く、各施設でも特色があります。

――社会人のプロについて詳しく教えてください!採用基準にもつながるお話だと捉えています
未経験の方の場合、前職などで、どんな想いをもって仕事に臨んできたかのスタンスを見ています。例えば、インタビューをした伊東の場合、会社内でいくつかの異動がありましたが、毎回その職場で自分が出来るベストを尽くしていて、そこが魅力的だと感じました。そして前向きに学ぶ姿勢。未経験で働くということで、介護の仕事においては、今までの経験が生きる場面とそうでない場面があります。なので、教えを乞うて一から学ぶ姿勢があるということは、未経験で働く上で必要だと思っています。

――育成体制についても詳しく教えてください!
各施設によって少々異なるのですが、主にサポートスタッフの育成体制としては、基本的に先輩のサポートスタッフが教える役を担います。入職後、介護職が3日付いて業務を教えるのですが、その後はサポートスタッフが先輩として教えます。そのため、必ず半年以上ずらして採用するようにしています。先輩にとっては、人に伝えるという経験値を積んでほしいんですね。というのも、介護職は『自分自身が行った介護』について、言葉で伝える場面が出てきます。Aのやり方をBに変えたときにその理由も含めて説明ができないといけない。未経験の方が増えていく中で、自分が行ったことを自分で説明できるというスキルがないと、専門職を自法人内で育てていくことはできません。サポートスタッフなどの未経験の方が育てられる土壌を作ることは、法人の務めだと思っています。

▲職員向けの研修を実施する様子

――未経験の方を受け入れるにあたり現場から声は何か上がりましたか?
この制度を始めて5年くらい経ちます。最初に未経験の方を受け入れる時は、現場からの反発がありました。また、反発以外に起こったこととしては、一緒に専門職として働くメンバーと認識されていなかったんですね。そのため、サポートスタッフと介護職との関係性が悪くて、介護職をただ手伝う人のようになってしまったんです。
それを解決するために、サポートスタッフは、ゆくゆくの介護職メンバーであることや、介護職の育成も自分達の仕事だということを、まずは伝えました。伝える時は、腹落ちをさせるために、「意味」を理解してもらうことが大事ですね。トップからただ降りてきた話では行動できないため、丁寧に伝えていく。また、採用活動を行った場合、どれくらいの採用コストがかかるかも伝えています。専門職である介護職は、職人のようなところがあり、見て学んで、できないなら次を育てよう、という育成方法を取りがちですが、そうではない。「人材は自分たちで育てるものであること、そのためにも、その人の得意なことを理解して活かせるようサポートしよう」と伝えています。

――そのような育成スタンスを浸透させるために、どのような工夫をされましたか?
まずは各施設の役職者に未経験の方を受け入れる理由、スタンスを伝えて、その者が見本となり職員に伝えてもらうようにしました。
また、施設見学はその日に出勤している介護職が担当しています。施設の良さは現場の方々がきちんと伝えられるようになる必要があると思っていますし、やはり人事よりも良いと思えることを正直に伝えられる。そうすることで、始めに話した理想と現実のギャップが生まれにくくなります。
現場の魅力を伝えられるように、研修で現場職員から魅力を言語化してもらい、施設見学でその内容を織り交ぜながら話してもらっています。また、全施設の施設見学をした求職者から希望する施設をヒアリングするのですが、やはり説明の上手い施設に希望が集まる。その話した内容を施設間で情報共有するように伝えています。
結果として、自分たちが施設見学で案内をした入職者の方だと、人事が採用した場合よりも愛情を持って育てられるんですよね。

――お話をお聞きしていると、人事の方の現場へのフォロー体制がとてもしっかりされているなと感じました
現場を経験した私と、経営目線で人事を担当している別の担当者とでこの仕組みを考えました。現場と経営は両輪。働く環境を現場からよくすることで、経営を安定させることができ、双方に影響し合っていると思っています。これまでやってきたことや、何人採用できて、離職したか等、毎年振り返りをして、検証して、次年度の計画に転換するということを実直にやっています。

 

【社会福祉法人泉寿会】
千葉県千葉市若葉区にある社会福祉法人泉寿会は、1996年に特別養護老人ホームを開設し現在4施設12の事業を展開。(http://senjyu-kai.com)。高齢者の方々に日々の安らぎと生き生きした暮らしを実現していただく為、心のこもった、温もりのある、「心豊かなサービス」を提供することをビジョンとする。未経験で活躍されている方のインタビューはコチラ

【文: HELPMAN JAPAN 写真: 社会福祉法人泉寿会】

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