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2022.10.21 UP

自然と求職者が集まる施設。10代・20代の職員が多く働く理由とは?ICTを活用した採用成功事例をご紹介。 ―採用管理ツール編―

介護業界におけるICTの未導入率は25.8%、介護ロボットの未導入率は80.6%(*1)という状況の中で、ICTの導入に躊躇される法人様の声をお聞きします。そのような法人様に向け、ICTや介護ロボットを導入することによるメリットや課題解決の可能性など、積極的に活用されている法人様の事例を通じてご紹介します。導入を検討する介護事業所の方のほか、これから介護業界を目指す方や「介護業界のICT化の状況はどうなっているのか」を知りたい方にとっても、役に立つ情報です。

社会福祉法人吉祥会 寒川ホーム(以下、寒川ホーム)の副施設長今村さん、事務担当吉田さんに詳しいお話をお聞きしました。

(*1)令和2年度介護労働実態調査 事業所における介護労働実態調査 結果報告書 介護労働安定センター
http://www.kaigo-center.or.jp/report/pdf/2021r01_chousa_jigyousho_kekka.pdf

インタビューダイジェスト

職員の働きやすさを大切にするため、ICTを積極的に活用。自然と応募者が集まる秘訣とは。

――ICTを活用した採用活動についてお聞きしたいと思っております。まずは、そもそもどのような採用活動をされていますか?

私たちの職場は、10~20代の方が多いですね。主に学生や主婦の方が多いのと、未経験者が多いです。応募者が私たちの施設に感じている魅力としてよく聞くのは、自由な服装でオシャレができるということ。採用経路としては紹介が主です。地域の学校や職業安定所、職員からの紹介のほか、委託業者からの紹介もありますね。それぞれの方面から紹介を受けることができるのも、信頼関係があるからこそだと思っています。職員が自分の妹や子どもを紹介してくれたりもしますが、それは本当に職員が働きやすいと感じてくださっているからこそではないかと。また、職員に対して「関係業者さんは、皆さんお客さんだから、丁寧に接しましょう」と伝えるようにもしています。

――媒体だけに頼らず、様々な方からの紹介を得られるようにしているのですね。応募が来てから採用までの流れも教えていただけますか。

面接応募があった際は、その日にメールか電話をするようにし、その場で面接調整までしています。面接時間については、求職者に合わせます。面接の設定時間の裁量は面接官にあることから、朝早くから、遅い時間も含めて対応しているので、面接に来なかったということがほとんどないんです。24時間365日…ではないですが、2名の面接官でできる限り対応していますね。わざわざ来てくださるので、求職者のご予定に合わせたいと思っています。
面接当日の流れとしては、まずは担当者二人で自己紹介や雑談をし、必ず施設見学や施設説明をしたうえで、面接というような流れでやっています。施設説明の際は、その人専用の名前を入れた説明書をつくってお渡しし、お越しいただいた感謝の気持ちを伝えるようにしています。求職者の方からは「すごい丁寧にされていらっしゃいますね」と喜んでいただきますね。
そして面接時には、必ず理念に関してお話するようにしています。私たちの理念は「ご利用者さんと同じくらい職員を大切にするということ」「ICT・介護ロボットの活用」「地域貢献活動」です。「職員を大事にする」という理念については、例えば「残業」に関してお伝えします。求人情報には「残業はない」という記載があっても、実際にはサービス残業があるということをまれに聞くことがありますが、私たちの施設では本当に残業がないということをお伝えします。そして能力をベースにした給与やボーナスの仕組みについてもお話します。2つ目に、ICTについては私たちの施設では、使えないと働くことが難しいことをお伝えしています。

面接のときに大切にしていることは、法人の情報を良い面だけ伝えるのではなく、悪い面も含めて正直に伝えるようにしています。というのも、冒頭にお伝えした通り、採用活動を積極的にやらなくても人からの紹介も多くあるため、採用に困っていないということもあり、積極的に入職を勧めることはしていないのです。採用の電話をかけたときに、悩んでいただいて構いませんし、もちろん気にせず断ってくださいよっていうことも正直に話しています。また、すぐに正社員として働かなくとも、アルバイトとしてまずは職場体験を受け入れるようにもしています。
面接の後は、採用したい方であれば即日電話するようにしています。その後、入職後のギャップを減らすためにも入職までの間にもう一度理念について説明するようにしています。

――面接官が話す内容と現場の職員が話すことの間にギャップがあり、実際と違うということで辞めてしまうという話も聞きます。寒川ホームではいかがですか?

そのような理由で辞める方はいないですね。3つ理由があるかと思います。まず、入職前の説明の際、面接担当の職員だけではなく現場の管理者とも話をする時間を設けることで、入職前から職員とのコミュニケーションをとるようにしています。2つ目に、入職後に面接官とも定期的なコミュニケーションをとる機会があり、その後も顔が見える関係ができていることもあるかもしれません。3つ目に、面接した人の情報と退職した理由を、全管理者を集めて情報共有するようにしています。そこで何が悪かったかなどを話し合い、必ず次に活かすようにしていますね。
それに加えて、わざわざ採用専任担当を置いていないことも理由に挙げられるかもしれません。兼務なので採用に集中できないというデメリットはありますが、現場のことを理解していてかつ現場にも顔を出す採用担当がいることでギャップが減らせるというメリットもあるかもしれません。

▲今回お話を聞いた今村さん(上・一番左)や吉田さん(上・右から3番目)と現場の職員の様子

――理念についてもう少しお聞きしたいです。特に「ICT・介護ロボットの活用」について詳しく教えてください。

先ほど紹介した理念を決めたのは約5年前の大量離職がきっかけです。先ほどもお伝えした通り、採用に困ったということが今まで無かったこともあり、法人の強みや弱み、理念について、時間をかけて考えてきたことがありませんでした。そのような中、数年前に人事制度を能力給に変更したことが理由で離職者が多く出たことがあり、寒川ホームや介護業界がこれからどうなっていくのかという将来のことを見据えたうえで、改めて法人の理念を変えることにしました。その中でも「ICT・介護ロボットの活用」については、今後ICTの活用が介護業界の中でますます必要とされるだろうということから、理念に絡めて積極的に活用しようと考えました。理念に含まれていることで、その後ICTを積極的に導入することができる理由になりましたね。

▲職員やご利用者の負担を軽減するため介護ロボットの導入を積極的に行う。

――現在、どのようなICTを活用されていますか?

1つ目に、コミュニケーションツール上で情報共有できるようにしています。掲示物だと見落としがちなので、必ず見てもらえるメリットがありますね。2つ目に、介護記録はタブレットでできるようにしています。3つ目に、荷物チェックアプリも入れています。

ICTを導入するときは、採用を担当している私たちが先導して導入を進めています。現場の職員はICTツールについて知る機会が少ないので、私たちが情報提供と提案をするようにしていますし、職員の困りごとはほっとかないようにし、ICTで解決できるならば積極的に導入を提案します。提案時は、このようなミスが起きている、これくらい作業に時間がかかっているなどの理由をもとに職員や上長に説明するようにしています。
今後、採用活動で新たに実施を検討していることは、施設内見学を動画視聴できる仕組みや、WEBで面接ができる仕組みを作りたいと思っています。寒川ホームの理念が本当に体現されているかは、対面だからこそ伝えられてきた部分も多くあります。オンラインにすることによって、地域のニーズにこたえられるほか、遠方の方からの応募も期待できるかなとも思っています。

▲職員の勤怠は事務の効率化を図るため、ICカードで管理をしている。

――ICTを導入するうえで、職員からの反発などはありますか?どのように対応されていますか?

初めてのことですとやはり抵抗もありますが、「ICTの活用」という理念を持ち出して、受け入れていただくようにしています。また、ICTの導入に対する積極性がボーナスアップにつながるような評価設計にしています。
ICTの活用について、約30項目の自己チェックシートを用いて、自分・上司・そのほか複数の職員の目を通じて確認。面接の機会も設け、さらにその方のICTの活用状況を把握します。このようにして、評価・給与にまで反映させてICTを浸透させるようにしています。そのほかにも、全職員向けアンケートを行い「こんなICTを使うのはどうですか?」など聞くようにしています。アンケートを通じて反対の声があまりに多いようであれば、無理には導入していません。
ICTの導入後のフォローは、一人一人に対してフォローするほか、ICTについての研修会も行います。研修会では、今日は「何歳代の方に向けた研修」、今日は「外国の方に向けた研修」、今日は「未経験に向けた研修」など、それぞれの方の持つ背景に合わせて説明するようにしていますね。そのようにフォローして便利だとわかっていただけると、ICT導入に対する反発も少なくなってきますね。

――採用管理についてもICTを使っているということで、詳しく教えていただけますか?

採用に困ったことがなかったことから、採用にかけられるお金について、予算を立てるということをしておりませんでした。そのため、紙媒体やインターネット媒体に出すと掲載料が高いなと感じていました。また、媒体がいろいろとありすぎて、どれを選んだらいいか迷うこともありました。AirWORKというHPも作れる採用管理ツールを使っていますが、無料ということもあり継続して使っています。今介護職の採用は、AirWORKと自社ホームページくらいです。

――掲載するまでの流れや、導入する際に大変だったことや便利になったことなど教えていただけますか?

掲載までの流れとしては、ターゲット設定(どのようなターゲットに対し、どんな求人を作るか)を自分たちで考えてから、掲載作業を行いました。一般的な媒体とは違い、営業の方が求人を作るのではなく、自分たちで一から元データを作ることは大変でした。ただ、一度作ってしまえば情報は私たちのもとに残ることから、今ある求人情報をコピーして作ればいいので、2回目以降の掲載作業はスムーズでした。私たちの場合は、AirWORK の導入時に担当の方にサポートをいただくことができ、Excelで事前に情報を整理することで、一からの情報づくりとはいえ、楽だったと思っています。
ICTを取り入れたことで、応募状況が都度事務局のメールに転送されるので気づきやすく対応しやすくなりましたね。またこのツールを使うとindeedに自動で連携されるのですが、無料で本当に掲載されるのか不安があったものの、転載されたときは感動しましたね(笑) 三ヶ月に一回新規作成を行うと連携がされやすくなるそうですが、今は積極的な採用活動をしていないことから、そこまで更新していません。

――採用管理ツールでは、どのような求人を出していたのですか?

求人を出すときに特に押し出したポイントは、ターゲットが若い層かつ未経験者ということもあり、ネイルOK・服装自由ということ。「利用者さんに対して素晴らしいケアをします」、「ご利用者様の笑顔あふれる・・・」というようなことをアピールするのでなく、働きやすい環境ですよということを押し出すようにしました。面接のときも、「どのようなケアをやっていますか?」という質問よりも、はっきりと「人間関係どうですか?」の方が聞かれますね。そもそも人間関係が良くないといいケアができないと思っているので、チームワーク、働きやすさを大切にしており、それをアピールするようにしています。掲載した写真については、若い職員が多く働いていることをアピールするため、若手の職員を多めに掲載するようにしました。

――明確にターゲットを決めたうえで求人を出していらっしゃったんですね。実際にどのような効果がありましたか?

掲載を始めてから今日までに9名の方から応募がありました。そのうち、現在では2名が在職しています。そのうち一人は介護助手の方が入職されています。その方は入職後に「もっと勉強したい」ということで、資格取得を目指すなど積極的に働いてくださっています。これまで介護助手という求人を出したことがなかったのですが、無料ということもあり、試しに出してみたところ、思ったよりも多く集まり驚きましたね。未経験の方とはいえ、理念に共感してくださる方が入職してくださり、その後介護職になるというような育成の仕組みができたことは、新たな採用活動の手法が増えてよかったと思っています。


▲ 求人を出す際は、髪型や服装が自由なことをアピールし、かつ若手層が多く映る写真を積極的に使用した。

――今後、採用活動で実践されたいことは何ですか?

施設内見学を動画で視聴できる仕組みや、WEBで面接ができるような仕組みを作りたいと思っています。対面だからこそ私たちの良さが伝えられると思ってはいますが、どのようにすれば対面の良さを大事にしながらオンライン化が進められるかを検討しています。一方で、遠方からの応募も期待できるのではと、メリットも感じています。

――今村さん、吉田さん、ありがとうございました!

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▼ RE:ICT・ROBOT~ICTと介護ロボットの可能性を改めて知ろう~

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【文: HELPMAN JAPAN 写真: 社会福祉法人吉祥会 寒川ホーム】

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