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2022.04.08 UP
介護・福祉の分野では、ご利用者様のケアのほか、経営・現場人事まで幅広い困りごとや悩み事に日々直面しています。そんな皆様に向けて、介護・福祉業界を良くしようと支援する様々な民間企業の方にお話をお伺いし、困りごとの解決に役立つような情報をご紹介します。今回のテーマは【ICT×在宅介護】。10年間の介護士・老人ホームのマネジメント経験を経て、株式会社LINKを設立した代表取締役 水野さんに詳しいお話をお聞きしました!
ご利用者やご家族、そして働く人の課題も解決するオーダーメイド介護サービス
――どのようなサービスを提供していますか?
株式会社LINKは、「誰もが幸せな最期を迎えられる世界」を実現するため、オンライン上で介護士を派遣するオーダーメイド介護サービス「イチロウ」を運営しています。自宅で大切な人に囲まれながら最期を迎えるという、人が当たり前にもつ願望を叶えられる世界を実現したいと思い運営しています。
介護・福祉業界でみられる問題
――介護業界におけるどんな問題に対峙されているのでしょうか?
(1)要介護者が自宅で最期を迎えられないこと
自宅で最期を迎えたい人が約7割程度(*1)という調査結果がある一方で、実際に自宅で最期を迎えられる人は14%程度に留まっており(*2)、人生の最期を過ごしたい場所で過ごせていない問題があります。
(2)介護を理由とした離職や事件
毎年、約10万人が、介護や看護を理由に離職しています。(*3)離職しなければならなくなった理由として、例えば、有給休暇を使い切ってしまってために会社を休むにも同僚に申し訳ない、などが挙げられ、仕事を続けながら介護をすることの難しさがわかります。また、介護を理由とした無理心中や虐待などの事件も起きています。
私が介護施設で働いていた際に起きたことが背景の一つにあるのではないかと考えています。それは、施設入居者の多くが毎日のようにおっしゃっていた「家に帰りたい」という言葉。この言葉からもわかる通り、施設に入居することが、必ずしも最適な選択肢・解決策にはならない。そして、そのような施設入居者の「家に帰りたい」という要望が、そのご家族に「施設に入居させない・させらない」という選択をさせる一つの要因となっているように見受けています。結果的に、離職をしなければならなかったり、痛ましい事件につながる要因になってしまうのではないかと感じています。
つまり、在宅介護を支えるソリューションとして、現状の介護保険制度という選択肢だけでは賄いきれないとも感じています。行政のサービスだけに留まらず、頼れる選択肢を沢山もっていることで、自分たちだけで介護をしなければならない状況を変えることができ、介護を理由とした離職や事件を防ぐことができる可能性があると考えています。
(3)介護士の不足
今後30万人以上の介護士が不足すると言われる中で、介護保険制度が提供する働き方だけでは、介護士の将来性の観点で課題を感じています。現状の介護保険制度自体には、ひとりひとりの介護士がサービスの質を上げる工夫をしても、その結果に見合った評価ができる仕組みがない。そのため、所属する法人側にその評価が委ねられてしまい、より質の高い介護をしようという意識の高い介護士も、所属する施設によっては報われない仕組みとなってしまっていると感じています。
というのも、20歳で一緒に介護を始めた志高い同期が、金銭的な理由により介護業界で働き続けることができなかったこともあり、介護保険制度や介護士の働き方に強い課題意識を持ち、創業をするきっかけにも繋がりました。
――どのようにそれらの問題を解決しているのでしょうか?
私たちが提供するオーダーメイド介護サービス「イチロウ」は、公的介護保険では⽀援が受けられない在宅介護ニーズに対して、オンライン上で介護⼠をマッチングし派遣するサービスです。一般的な訪問介護とは異なり、以下のような機能を兼ね備えています。
(1)最短5分でマッチングし2時間で派遣できるスピード
(2)介護士の技量や性格を定量的に評価し、介護依頼者の要望に
対して独自のアルゴリズムに基づいて技術・相性のミスマッチを防ぎ、最適な介護士をマッチングできるマッチング機能
(3)サービス終了後に送られるレポートで、離れて暮らす介護依頼者
もサービスの様子をリアルタイムに把握することができるレポート機能
このようなツールを使っていただくことで、以下のような効果が生まれています。
・(1)(2)要介護者や家族に向けた課題解決
介護保険だけでは賄えない部分をサポートすることで、要介護者の方は在宅で過ごすことができ、かつご家族は仕事を続けつつ、介護も両立できるようになる事例が生まれました。
例えば、不規則な仕事で、依頼日を固定できないため、従来の訪問介護ではサービスを依頼できない方も、電話で予約をするだけで依頼したい日時にサービスを利用することができ、仕事と介護の両立ができているという声をいただいています。
また、これまで自費サービスは単価が高く、一部の富裕層のためのサービスでしたが、ICTの活用により運営コストを下げることで、気軽に自費サービスを利用することできるようになり、在宅介護の選択肢が増えていると実感しているとの感想もいただいています。
これらのことから、在宅介護を続けつつご家族の負担も軽減できることで、仕事を辞めずにご利用者の想いに沿った生活が可能になっています。
・(3)介護士に向けた課題解決
ひとりひとりのお客様に寄り添うことができる介護ができることにより、生きがいややりがいを感じているという言葉をもらうことが多く、業界にとってもプラスに働いていると認識しています。
加えて介護士の賃金も改善しています。介護士の時給を業界平均と比較し1.6倍に引き上げ、改善することができました。
このように、ご本人主体のケアができることや賃金の改善によって、採用に苦戦する介護施設が多い中で、月に100名の方が登録されるなど、人材の確保にもつながっています。結果として、求人広告などに使う介護士の獲得コストの低下も可能にしています。
今よりもっと良い施設運営を目指す方へ
今後ますます高齢化が進む中、これまでの介護保険に基づいたケアだけではなく、求めている方に保険外の新たな介護を届ける選択肢を広げることも、今後ますます必要になるのではないかと考えられます。また、生産人口が減る中で、他業界に広がるワークシェアや副業、フリーランスという働き方が、介護業界にも求められていくのではないかと思われますし、私たちとしても、求職者にとって雇用形態の一つの選択肢として、このような働き方が介護業界に広がればと考えています。
そのためにも、ICTの活用によるコスト効率化なども視野に入れながら、新たなチャレンジを業界全体で進めていければと思います。私たちは、そのような世界を介護業界の当たり前にし、高齢社会を支える礎を作っていきたいと考えています。
今回ご紹介した企業
◆株式会社LINK(https://ichirou.co.jp/)
介護が必要な両親を抱える家族からの要望に応え、オンライン上で介護士を派遣するサービスオーダーメイド介護サービス「イチロウ」を運営。介護現場で10年以上経験した代表取締役⽔野が2017年に創業。「年間10万⼈の介護離職の課題」「介護⼠の低所得・⼈材不⾜の課題」など、介護の社会問題をインターネットの⼒を活⽤したデジタル視点で解決することを⽬指し、介護業界のDXに取り組んでいる。
出展:
*1 厚生労働省「平成29年度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書」(末期がんで、食事や呼吸が不自由である
が、痛みはなく、意識や判断力は健康なときと同様の場合) https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/saisyuiryo_a_h29.pdf
*2 厚生労働省「厚生統計要覧(令和2年度)死亡数・構成割合,死亡場所×年次別」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_1_2.html
*3 総務省「平成29年度就業構造基本調査」
https://www.stat.go.jp/data/shugyou/2017/pdf/kgaiyou.pdf
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【文: 株式会社LINK,HELPMAN JAPAN 写真: 株式会社LINK 提供】