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介護業界人事部

2021.06.02 UP

入居者様が“楽しく生ききる”ための人員配置と 介護未経験者の採用・育成による笑いの絶えない職場

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未経験から介護・福祉の仕事を始めて活躍する方をインタビューする『ひとりひとりの「はたらく」ストーリー』。実際に介護・福祉の現場で活躍されている方からお話をお聞きすると、「職場の環境」・「社内の人事制度」・「フォロー体制」など、活躍のためのヒントが様々にありそうです。今回は代表取締役の中川さんに詳しくお聞きしました!

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入居者の方に『長生きしていただくこと』が目的ではなく、一日一日『楽しいこと』が目的

――職員インタビューでは、『人間関係の良さ』についてお聞きしたのですが、その点を中川さんから見てどう捉えているか、教えてください!
大学研究者の方が以前見学に来てくださったのですが、他の施設に比べて異常に明るく、みんなゲラゲラ笑っていると(笑)これができている背景として、一般的な介護施設よりも職員の人員が倍になっているんですね。この人員配置は介護保険の人員配置という机上の数字から考えたものではなく、実際に現場を見て、これくらい居ないと無理だよな、と思う人員配置にしています。気づいたら一般的な介護施設の2倍の人員配置になっていました。また、私たちは「待つ介護」をしています。介護の仕方が違うんですよね。

――「待つ介護」、もう少し詳しく聞きたいです。
新人研修で職員に伝えるときには、「料理教室のトレーナー」をイメージをしていただいてますね。プロの料理人が、料理教室で生徒の代わりに作ってあげていたら意味がない。それと同じように、入居者様が自分でできるようにサポートしています。実は全て介助するよりも、出来ないところだけをサポートする方が難しいし時間もかかるんです。なので、少ない人数でできる介護ではないんですね。また、マニュアルは最小限で、一人一人のヘルパーが「入居者様が、その方らしく、最期まで楽しく生ききる」という理念に則って自分の頭で考えて、現場のアドリブ力をベースにした自立支援を行います。これを「創造的自立支援」と呼んでいます。

――理念である「楽しく生ききる」支援。この理念を目指すに至った経緯を教えていただけますか?
十数年前、ホームの事務所で残業していると、毎晩「死にたい」と事務所まで話をしに来ていた入居者がいらっしゃったんです。ただ、その方が唯一、夏のお祭りの日だけは「死にたい」と話されなかった。そこで気づいたんです。僕らは入居者の方に「長生きしていただくこと」が目的ではなく、一日一日「楽しいこと」が目的なのではないかと。排泄・入浴・食事介助は目標ではなく、楽しくいい最期を迎えるための手段であると。例えるなら結婚式のウェディングプランナーのように、エンディングプランナーだと思っていますね。ちなみに看取りに関しては、ご家族に「看取ってくれてありがとう」と言われないように心掛けています。入居者のために家族の方が好きなものを持ってきたり、最期のお洋服を持ってきたりしていただく、つまりご家族に“自分たちが”看取ったと実感していただけるように、コーディネートしています。そうした方が、入居者様ご本人にとっても嬉しいですしね。やっぱりご家族の力にはかないません。

――職員が一丸となってそのゴールを目指しているように見受けるのですが、どのように浸透させているんですか?
3つあります。まずは、この考え方を体現できている方を施設長にしています。かいごデザインに長く勤めていて、法人の考え方を理解し、腹落ちした方をホーム長にしているんです。
2つ目は、新人研修やオリエンテーションの時に、施設長がこの話をしたり、定期的なミーティングでも話すようにしています。つまり現場で考え方を増幅させているんですね。ちなみに施設長に対しては、毎月研修を兼ねてミーティングをしています。ミーティングでは、何か問題が起こった場合にその問題自体や問題の改善策から話すのではなく、なぜ問題が起きるのか?その背景について話すようにして、1人1人が想像力・創造性を育てています。
最後に、名札の裏に法人の理念を書いたクレドを記載していて、今はコロナ禍で難しいのですが、それを朝礼で読み上げてもらったりしています。


▲法人の理念を書いたクレド

――職員インタビューをお聞きし、職種の垣根がないことも珍しいなと感じました。
野球の話で例えると、それぞれの選手は試合で勝つことを目的にポジションを置いていますが、勝つためにはライトがレフトをサポートしてもいいんです。私たちの老人ホームは楽しく過ごしてもらうことをゴールと置いているので、厨房が大変だったら、ホーム長が調理を手伝ったりもします。つまり厨房の業務が目的ではなく、手段であると捉えています。他にも、献立は管理栄養士が作ることが一般的ですが、ここでは調理パートさんたちが自分たちで考えているんです。例えば、「今日は暑いからラーメンじゃなくて冷やし中華にしよう」、「ソバが安かったからソバにしたよ」というような形で。そこから会話が生まれますし、入居者さんにとってもおいしく楽しく食べることができる。献立作りを労働だと考えるのではなく、楽しく過ごしてもらうための手段だと捉えているんですね。それが職員にとってのやりがいとなり、金銭ではないプラスの報酬になるんです。そうすると、いつのまにか調理パートさんがお休みの日に料理教室で勉強したり、飯田のように育休中に資格を取ったり、自発的に勉強するようになっていきました。昔は勉強しましょうと言っていた時期があったのですが、すっかり言わなくなりました(笑)


▲2020年の敬老の日に、入居者様にアンケートを採った結果、「中川さんの握るお寿司が食べたい」とのことで開催した『社長寿司』の写真。「カウンターでお寿司を食べたのは初めてよ!」と大好評だった

――未経験者を受け入れている理由は?
経験者の場合は、その方の経験にこだわり過ぎて、法人のケアの考え方を受け入れられないということがあります。あくまで入浴介助・食事介助・排せつ介助は目的ではなく手段だと捉えていて、ちょっとした日常の楽しさを感じてもらうために、入居者さんと話す時間も大切にしています。入居者さんがお話されたいようだったら、通常の業務をほっといてもいいとも伝えているのですが、業務を優先してきた経験者の方からするとそのやり方をまずは止めることから始めなければならず、苦労されるようです。また、未経験だけど入職したいと言ってくださる方は、飯田含めてとても優秀な方が多いです。実際に今ホーム長として働いている方も、活躍されている方も、未経験の方が多いですね。

――未経験の方の採用基準についても教えて頂きたいです。
職員が一緒に働きたいという方を採用しています。また、面接の際、入居者さんにも参加してもらうこともあります(笑)直感も大事にしているので。
仕事を覚えるのが遅い、不器用だから採用しない、ということはありません。そういう方々も3年くらい経つとできるようになります。通常、仕事に慣れず、できない人から辞めてしまいがちです。そうすると、今度は辞めなくていい人までも辞めてしまうようになる。そこで、施設長がそのような慣れない方々を守るようにしているんですね。飯田が言っていたように、施設長や役職者の資格や経験についていくのではなく、人間的な魅力や考え方に
職員はついていってるんだと思います。なので、施設長達の職員への対応もよく見ています。それは入居者との関係でも同様、役職者と入居者ではなく、対人として接しているかどうかを見ています。みんな本当に良くやってくれています。

――活躍される方の共通点はありますか?
素直さ、頭の柔らかさ、優しさが共通点ですかね。この業界は、法律が変わったり、今回の感染症が拡大するような状況となったりと、ずっと同じやり方だとうまくいかない。頭の柔らかさが大切です。また素直さも、その人が成長をするためには必要。あとは、優しさ。この優しさがないと、後輩や部下が付いていかないように思います。仕事ができなくても、優しさや入居者さんに対する熱い想いをリーダーとしての資質があるとも捉えています。あとは、入居者さんのことを興味持っていて、よく知っているという観点では、物まねが上手い方が多いですね!(笑)。

 

【株式会社かいごデザイン】
千葉県市川市にある株式会社かいごデザインは、1996年に高齢者施設の入居相談からスタートし、現在、住宅型有料老人ホームを4施設運営。(https://happynew.jp/)。「楽しく生ききる」の理念のもと、入居者の方ができる限り“自分のことは自分で出来る”ような自立支援のお手伝いをするケアを実践している。未経験で活躍されている方のインタビューはコチラ

【文: HELPMAN JAPAN 写真: 株式会社かいごデザイン】

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