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2014.07.22 UP

気になる臭いもシャットアウト!世界が注目する在宅介護用トイレ

建築資材のレンタル事業を主に行う日本セイフティー株式会社。同社は、水を使わず、簡単な操作で排泄物を特殊フィルムに包装する自動ラップ式トイレ「ラップポン」を開発・販売しています。同社会長の強い想いと、開発チームの熱意から生まれたこの製品は、従来のポータブルトイレとは異なり、臭いの問題や後処理の手間もないことから、排泄を取り巻くトラブルやストレスを解決できるこれまでにないトイレとして、在宅介護の現場をはじめ、災害の被災地や病院などからも熱い支持を得ているといいます。

ボタンひとつで排泄物を個包装
処理も簡単な自動ラップ式トイレ

動画/在宅介護用に開発された「ラップポン・エブリ」の紹介動画。排泄の前に凝固剤を入れ、排泄の後はリモコン操作ひとつで、排泄物が自動的に個包装される「ラップポン」とは、自動ラップ機構を搭載した、水を一切使わないポータブルトイレです。ボタン操作ひとつで排泄物を特殊フィルムにラッピングし、臭いや菌を閉じ込めることができます。さらに、排泄物は毎回、個別の包装にして切り離すため、紙おむつと同様に、燃やせるごみとして簡単に処理することが可能です(※)。

現在販売しているのは、在宅介護用の「ラップポン・エブリ」、高齢者施設や病院向けの「ラップポン・キュート」、組み立てタイプで、車のシガーソケットなどからも電源を確保できる「ラップポン・トレッカー2」の3タイプ。

在宅介護でトイレの悩みを抱えている個人のお客さまをはじめ、自治体や企業の災害備蓄用、さらに病院の感染症対策としても導入していただいています。

※ 自治体の判断によって処理方法が異なるため、各自治体の指導に従い処理することが必要

会長の実体験とスタッフの熱意が
製品開発の原動力に

画像/排泄物が個包装された状態。病院や災害現場での使用を想定した特殊フィルムは5層構造で、1カ月間は臭いや菌が漏れないという日本セイフティーは、建設資材のレンタル事業を主に行っている企業です。そんな私たちがなぜ、介護や災害現場向けのポータブルトイレを開発したのかというと、タワークレーンやトンネル工事など、特殊な建築現場でのニーズがあったこと。そして、弊社の西田弘会長の身内に介護が必要な方がいて、従来のポータブルトイレの臭いの問題や後処理の手間を解消し、介護する側もされる側にもストレスのないトイレが必要だという想いがマッチングしたからです。

過去にも海外製の自動ラップ式トイレはあったのですが、後処理や衛生面での課題がありました。そこで、私たちが独自に考案したのが、フィルムの熱圧着と切り離しを同時に行う「自動ラップ機構」です。一回ごとに排泄物がしっかりと個包装されるため、臭いの問題もありませんし、その都度、簡単に処分ができます。

熱圧着するヒーターの形状や特殊フィルムの選定、コストの問題など、開発はなかなか一筋縄ではいかず、途方に暮れることもありましたが、「人に反対されようがなんだろうが、絶対に世の中に出す」という会長の強い意思があり、開発メンバーも関連メーカーのスタッフも、皆熱い想いを胸に抱きながら仕事に取り組んでいましたね。

能登半島地震での評判が
商品が大きく展開するきっかけに

画像/2011年4月、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県東松島市の避難所で、「ラップポン」の使い方を説明する日本セイフティーのボランティアスタッフ2005年に初めての商品「ラップポン・オリジン」を発売して以降、建築現場や在宅介護の場で徐々に浸透していましたが、商品が大きく展開したきっかけは、2007年に起きた能登半島地震でした。

仮設トイレの環境の悪さに苦労されていた方々から、多くの評判をいただいたことで、軽量化や電源の融通が利く「ラップポン・トレッカー」の開発につなげることができたのです。

「ラップポン・トレッカー」は災害備蓄用として多くの自治体や企業に導入していただき、東日本大震災の避難所の方々にもとても喜んでいただけました。私たちが避難所に商品を設置していると、「本当にいいものを作ってくれた」と、あるおばあちゃんから会長が“神さま扱い”されたこともありました。

こうした経験をもとに、2013年の秋から販売を開始したのが、自宅に設置しても違和感のない木目調のいすのようなデザインで、価格も抑えた在宅介護用の「ラップポン・エブリ」なのです。

排泄介護の負担が減り
「母の性格が変わった」という声も

画像/在宅介護用の「ラップポン・エブリ」の導入イメージ。温かみのある木目調のデザインで、安心して室内に設置できる「ラップポン・エブリ」の利用者の方からは、「安心して排泄できる」「介護の負担が減った」などの声をよくいただきます。

なかには「母の性格が変わりました」という声もありました。一般的なポータブルトイレだと、部屋に臭いがこもったり、後処理を家族にしてもらわないといけませんから、恥ずかしくてなかなかトイレができず、気持ちが沈んでいたそうです。

しかし「ラップポン」なら自力でトイレの処理もできますし、精神的にゆとりが生まれて、昔のように元気で明るい性格に戻った、と。「排泄のことでけんかをしなくなった」という声もいただいたりして、改めてこの製品が、介護する人、される人の双方にメリットのあるものだと実感しました。

排泄以外の分野でも
介護の世界で役立つ製品を作る

いま、「『ラップポン』を扱いたい」と、アメリカ、中国、インドネシアなどからも問い合わせをいただいているのですが、まずは日本国内の“土台づくり”が先決だと私たちは考えています。

トイレは日常生活に欠かせない非常に重要な設備ですから、万が一、故障などのトラブルが起きたとき、迅速に対応できるシステムの構築が欠かせないのです。現在、各都道府県にある代理店で勉強会を開くなど教育を強化し、よりよいサービスを提供できるように力を入れているところです。

「ウォシュレットにしたい」「便座にヒーターをつけられないか」など、さまざまな要望もいただきます。すべてを一度に応えることは難しいですが、少しずつでもお客さまのニーズを反映していきたいですね。

排泄以外の分野でも、介護の世界で役に立てる製品を開発するため、今年(2014年)の夏にはR&Dセンターを立ち上げ、基礎研究を強化していきます。困っている人を笑顔にする、快適な生活を支えるという意識を常に持ち、今後も個々のお客さまのニーズに合った製品づくりに取り組んでいきたいです。

【文: 成田敏史(verb) 写真: 芹澤裕介】

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