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介護業界を目指す方へ

2023.12.14 UP

なんとなく行った就職フェアで人生が変わった!一人ひとりの「人」を大切にし、福祉の仕事の面白さを届けたい。福祉業界で磨かれた「調整力」とは?

介護・福祉の仕事を通じて得られる力を言語化する企画(https://helpmanjapan.com/article/12796)。本記事では、元福祉・介護職の方にインタビューし、介護・福祉の仕事で得たスキル・能力を現在の仕事でどう活かしているかをお伺いし、介護・福祉業界で得られる力の共通点を見つけます。第五回目では、障害者施設の支援員として働いた後、人事や企画を経験。現在は福祉への関心を高めるため学生・若者向けの就職フェアの開催や福祉教育を行う一般社団法人 FACE to FUKUSHIで活躍されている、荻原唯さんにお話を伺いました。

 

荻原さんのキャリア年表

目次

・福祉の仕事に出会うまで、きっかけ
・障害者支援員として働いた荻原さんが思う、福祉の仕事で身に付いた力とは
・人を大切にしようと感じたできごと
・読者へのメッセージと今後について

 

――福祉の仕事に興味を持ったきっかけがあれば教えてください。
高校生の時、同じ吹奏楽部で仲が良かった子がいました。ある日その子が「いなくなりたい」と言っていて、びっくりしてしまって。急いで先生たちに連絡し、そのことを伝えました。自分が直接的にその子に対して何かをやったわけじゃないんですが、私の行動によって先生もその子の家庭に介入してくれて、結果的に入院を経て、元気になった ということがあったんです。その時に精神的に疲れちゃった人や、つらくなった人のサポートをしたいなと思ったことがきっかけです。

――高校生のころからソーシャルワーカーのようなことをされていたんですね!大学時代の専攻では何を学ばれていましたか?
大学では精神保健福祉士の勉強をしました。ただ4年間勉強していく中で、福祉の仕事が面白いってあんまり思えなくて、福祉以外の方面で就職活動していました。第一志望が当時アルバイトをしていたカフェでしたが、そこに落ちてしまってかなり落ち込んでいたんです。ちょうどその時、大学の先生に「福祉の就職イベントがあるから荻原さん行ってみたら?」って言われて、最初は乗り気じゃなかったんですけど、参加者特典にひかれて友達と本当に軽い気持ちで行きました(笑)。実は今働いているFACE to FUKUSHIが主催していたフェアなんです!
そこで北海道の社会福祉法人に出会って魅力を感じ、家に帰ってすぐ「私、北海道に行くわ」って母に報告しました。東京生まれ東京育ちの私だったのですが(笑)

▲当時参加した際のフェアの様子。※この中に荻原さんも映っています。

――すごい決断ですね!そのあと福祉の仕事に飛び込んで、身に付いたスキルやエピソードがあれば教えてください!
新卒で入職した社会福祉法人では約6年働きました。障がい者分野の事業を複数展開している法人でして、支援員として働き始めました。4年目からは、採用担当など人事企画としてバックオフィスの業務も行っていました。働く中で一番磨かれたなと思うのは「調整力」です。
日常の仕事で言うと、利用者さんのサポートに関して多様な人と関わりながら進めていくこともあり、本人はもちろん、ご家族や一緒に支援するスタッフとの関係構築も重要でした。パートさんが多い職場だったので、あらゆる状況の調整も意識していましたね。
職員に関することに特化していうと、当時一緒に働いていたスタッフで、元気がない方がいたら声をかけていたのですが、私がその人の話を聞くだけというより、協力してくれそうな人も交えてみんなで一緒にご飯の場を開いたりしていました。そういう、人同士の調整とか人の心に寄り添う力は身に付いたと思います。


▲北海道の社会福祉法人で働いていた時の様子

――いろんな方々と接する中でより磨かれていったのですね。パートさんのお話について、エピソードも教えてください!
パートさんがたくさんいたこともあり、一人ひとりとご飯に行って、皆さんの思いを伺っていました。やっぱり一番最前線で働いている人の言葉がリアルな現状だと思うので、改善できるところはどんどんしていけるように周囲に伝える役割もしていました。ほんとちょっとした事も気になるとオープンに伝えてしまう性格なので、どうやったら良くなっていくか、感じたことは声に出していたように思います。互いに気持ちよく働くためのルール作りなど、ついつい思いついたことを言うと、「若いお局さんだね」とパートさんから褒め言葉として言われていました(笑)。

――どうしてそのような対応ができるようになったんでしょうか?
入職したての頃、数日前まで普通に笑顔で会話をしていた先輩が、ある日突然出勤しなくなったことがあり、個人的に衝撃でした。なので1年目の終わりごろ、上長に何をやりたいか聞かれたときに「利用者さんの支援はもちろんですけど、働く人をもっとサポートしたい、スタッフ自身がもっと働きやすくなるといいなって思っています」ってことを話していました。その頃から職員のサポートに関心があったんです。
福祉の仕事をしている人たちって、優しい人が多いなと思っていて、自らの事よりも「利用者さんのために」とか「後輩のために」動いている人が多いと思うんです。でもそんな志のある人が、順番に疲れていってしまうのって元も子もないよなって。疲れちゃう人がいるのは仕方ないとは思うんですけど、それが当たり前になるのは良くないかなと。利用者さんの安定した日常や笑顔を守るためには、やっぱり働くスタッフがイキイキと笑顔でいられることが大前提だと思っているので、利用者さんと同じぐらい、隣で働いているスタッフのことも大事にしていけるように、気づいたことは自分たちで働きやすくしていくことが、周りの人を大切にすることでもあるなって思ったのが大きな原動力になっていましたね。

――そのような捉え方ができる荻原さんに、他の先輩方は驚いたのではないでしょうか?
私からしたら意識をせずにやっていること なんですけど、上司からは「誰でもできるわけじゃない」って言われました。福祉とか介護の現場は特に、察する必要のある場面が多いのかもしれないです。言語以外のコミュニケーションを取る利用者さんに私も関わっていたので、相手の立場に立って考えるという機会は多かったと思います。スタッフに関しても、ロボットじゃないので日々気持ちの変化がある中で、お節介する先がいっぱいあった。それが、自分が好きでやっていることと、上手くはまったのかなと多分思いますね。そのような環境の中で、皆さんに育ててもらったと思います。

――調整力のその先には「人」のためという思いがあるんでしょうか。
今まで関わってきた人の顔が浮かぶ感じです。〇〇さん・・・のように。今働いているFACE to FUKUSHIの業務の一つに福祉教育があるのですが、ただ授業を実施するだけではなく、授業を受けた人の縁が広がって、あとあと福祉で働く人が増えたらとも思っています。そうすることで、昔関わっていた〇〇さん(利用者さん)のケアをする支援員やサポートする人が増えたらいいなとも思いますし、福祉業界で働いている〇〇さん(お世話になってきた方)たちにとっても、働く心強い仲間が増えたらとも思っています。
その先々のためにも、立ち止まらずに進んでいくという思いはあるかもしれないです。自分自身が福祉を面白いと思ったあの日のように、人の人生を変えるきっかけになりうるという責任を感じています。

▲社会福祉法人に勤めていた際に福祉教育授業をする様子

――未来を見えて、利用者さんや職員の方のサポートをしていらっしゃるんですね!「調整力」を今の仕事に活かせているエピソードはありますか?
今の仕事は関わる人が前職より多いんです。福祉法人さんや学生さん、大ベテランの方から新人の方まで、さまざまな層の方々が、それぞれ気持ちよく仕事してもらえるように察して動くことが必要です。そこで調整力が活きているなって思います。特に福祉法人さんに関しては、対企業としてのビジネスライクなお付き合いではなく、人と人としてのやり取りをしようということは、事務所でも大きな声で言い続けています(笑)。“福祉法人”や“学生”と大枠で捉えるのではなく、1人の人として関わることは前職時代に教えてもらいました。だからこそ、それぞれの顔が浮かぶのだと思います。
例えば、イベントのチラシをお送りする場合、送付数が多ければ多いほど、送付状はWord文書で作成し、印刷する事もあると思います。送る側からすると数百件になることも、受け取り側からすると、自分自身(自分の会社)に届いたと感じるはずだと思い、スタッフで分担して、送付状に一言ずつ手書きで添えるようにしました。「お体調子どうですか?」「今年はこういう風に盛り上げていきたいので、お願いします!」「この間はありがとうございました」とか、一言添えた上で、100以上の福祉法人さん宛に書くようにしています。ほかにも、メールの一文だけでもコミュニケーションが取れると思っていて、個別でのやり取りを大事にしています。信頼関係を作っていくにあたって、一手間をかけることは時間がかかることでもあります。それでも、心地よくご一緒できるように続けていきたいことの一つです。
ほんとちょっとしたことですが、やり取りを意識してから、福祉法人さんとの距離も近づいたと感じています。福祉法人さんとの関係を調整するという観点でも、まさに調整力が活かせているのかもしれません。

――一貫して「人」を大切にするってところが感じられるエピソードです! これまで福祉について学んでいなかったけど、福祉業界で働きたいと思う方へのメッセ―ジや、今後の目標についても教えてください。
「自分が主役じゃない」という点が、福祉の仕事の面白いところかなって思います。だから福祉に興味がなくても、サポートするのが得意な人とか、部活のマネージャー経験があるとか、誰かのために尽くしたことがある人は結構ハマるんじゃないかって思います。自分自身、就職フェアの参加者特典で人生が変わったので、まずは飛び込んで始めてみる。そういう人生もありだよってお勧めしたいです。自分の感情を大事にしているからこそ、人の感情も大事にしていけると思っているので、自分の感情を大事にできる人であれば福祉の仕事はできるんじゃないかなって思っています。
今後ですが、福祉の仕事の面白さが福祉のことを知らない人にも伝わっていけばいいなって強く思います。だからこそ、就活をしていた自分のように偶然の出会いからキャリアをスタートする機会作りにチャレンジしたいと思います。

――荻原さんのように思考が深い方や人生について考えるのが好きな方にも、福祉の仕事はハマりそうだと感じました。とても貴重なお話、ありがとうございました!

 

●一般社団法人FACE to FUKUSHI様のご紹介
「日本の”FUKUSHI”を、世界最高の”welfare”に 誰もが当たり前に生きることができる社会をつくる」をビジョンに掲げ、福祉の分野に特化した大学生向けの新卒の就職フェアの企画運営をはじめ、福祉や介護の仕事に興味がある人が増えるように、小中高向けの福祉教育や学生向けのセミナーを行う。
https://f2f.or.jp/

【文: HELPMAN JAPAN 写真: 一般社団法人 FACE to FUKUSHI 荻原さん】

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