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介護業界を目指す方へ

2024.02.29 UP

福祉業界で鍛えられた「丁寧な対応」、「踏み込む」力。異業種・異職種の仕事で活かすことで「クライアントにより喜んでいただける実感があります」②

介護・福祉の仕事を通じて得られる力を言語化する企画(https://helpmanjapan.com/article/12796)。本記事では、元福祉・介護職の方にインタビューし、介護・福祉の仕事で得たスキル・能力を異業種・異職種である現在の仕事でどう活かしているかをお伺いし、介護・福祉業界で得られる力の共通点を見つけます。第四回目では、株式会社リクルートで働く3名にインタビューをし、2部構成でお伝えします。

●目次

(1部)
・異業種、異職種として働く3名 が、過去に福祉業界で働くこととなったきっかけ
・児童分野で活躍していた金淵さんが考える「福祉のしごと」で身につく力とは?
・障がいのある子ども が楽しく過ごす「放課後等デイサービス」で働いていた佐藤さんにとって「福祉のしごと」で身につく力とは?

(2部)
・保健師として「行動変容」を促す仕事に取り組んでいた寺原さんが考える「福祉のしごと」で身につく力とは?
・「福祉のしごと」で得た力を現在のリクルートで活かせたエピソード
・福祉業界で働いていたからこそ の得意なこと、苦手なこと
・今後の目標と読者の方へのメッセージ

福祉業界で鍛えられた「丁寧な顧客折衝の力」「相手に踏み込む力」によって、顧客の満足度を高める結果に

―一部に続いて、寺原さんにとって福祉の業界で得られたと思う力についても教えてください!
寺原さん

私は「対象者の行動変容に伴走する力」が得られたと思います。
保健師は、 対象者 に行動変容を促す場が多い役割を求められる仕事だったこともあり、そのような力が身についたと思います。
例えば、健康診断の結果が悪くなってしまうと、就業制限がかかってしまうために数字を下げる必要がある対象者 がいた際、薬を飲むか自身の生活習慣を改めるかの選択が必要なことがあります。さらにその選択した行動を続けていく必要がありますが、それらの行動を促すことを行っていました。行動変容を促すためには、 対象者に理解を示し、コミュニケーションが重要だったこともあり、「対象者の問題解決力」の向上に寄与したかなと感じています。病気に関する知識をこちらから提供しても、本人の行動・習慣を変えるのはとても難しい。変わるためのきっかけづくりまで行うことが、看護職の仕事で面白いと思った部分でした。

一方で、地域福祉で関わる病気を抱えながらも地域で暮らし続ける方 に対しては少し異なっていて、「そもそも変わる必要があるのか?」を確認します。例えばご本人が高齢者だった場合、「死ぬまで酒を飲みたい 」というのであれば、 その方の価値観を尊重したうえで、どのように地域で暮らし続けられるか、という観点が加わってきます。 地域に出ると、どう 暮らすか やその人の感情・価値観の理解を通じた、正解がない支援が必要だなと感じていますね。


▲看護師の仕事をしていたころの寺原さん

――具体的なエピソードもお教えください!
当時、企業の健康診断を受けた50歳過ぎくらいの社員の方を保健師として担当して「今の生活を続けるか、健康的な生活を始めるか?」を考えていただきました。最初は私を面倒な 存在として嫌がっていましたが(笑)、このまま今の生活を続ければ会社から就業制限がかかる可能性があることを明示しながら、ネガティブ未来とポジティブ未来を提示し、どちらの選択をしたいかを本人に決めていただきました。定期的な面談やメールでのやりとりを通じて、その人らしい生活を取り入れていただきつつ改善を図りました。
その時に大事にしたことは、できそうなことから始めていただき、相手の方が「できるかも」と思えるような感情醸成をすること。ご本人は「50歳を過ぎて独身で、これまでの生活に満足していた。なのでこれでいいやって思っていた」と話していましたが、私に問題を指摘されて変化が必要だと感じたそうです。最終的には、ご本人から「さまざまな取り組みを通じて、20代の頑張っていた当時の自分を思い出して、自分が変われることを実感した。寺原さん に出会わなかったら今の自分にはなれなかった」と感謝していただいた時は感激しましたね。
人はいつでも変わることができる、と感じたと同時に、 でも自分だけではなかなか変化を起こせないので、第三者との出会いは非常に重要だなと思いましたね。そして、私は人の転機を支援することがやりたいんだと、仕事観もそこで整理することができましたね。

――苦手だったけど、福祉の仕事を通じて得られたスキルはありますか?
寺原さん

「アセスメントスキル (状態を分析・評価できるスキル)」ですね。アセスメントをする上での考え方の基本がありまして、まず人を全人的に捉えるために情報を網羅的に収集して、それを元に判断し、ケアの計画を立てるという流れで進んでいきます。この視点は、ケアを学んだからこそ得られたスキルだと思いますね。

佐藤さん

確かにアセスメントスキルは重要でしたね。学校や保護者、利用者など、様々なところから情報収集をする機会を作ることは大変でしたが、意識して取り組んでいましたね。

 


――福祉業界で学んだことや働いて得た力やスキルは、今の仕事にどう通じていますか?
寺原さん

私は入社 後、キャリアアドバイザーの業務に携わっていました。複数の求職者に寄り添いながら、それぞれのキャリア選択のきっかけづくりを支援 する仕事は、保健師の仕事と通じる部分があり、それを活かすことができていました。
現在の企画職でも同様のスキルを活かせていると思います。社内外の多くの関係者とのやり取りをしながら、決断して実行する中で、「チームとして情報を共有して推進していく」という点が共通しています。
企画職では一定の論理的思考が求められますが、メンバーや関係者と仕事を円滑に進めるためには、時には論理が崩れても情理を優先することもありますよね。関係者が多くても一人ひとりとコミュニケーションを取ることで、例えば相手の気持ちやテンションの変化など、人の気持ちの微妙な変化に気づくことができ、仕事の依頼の仕方にも工夫することができる。看護師として大切な力である「相手の変化を察する」という能力を活かすことができていると感じています。
一方で、いま私が関わっている仕事では情報を整理しつつ共通点を見つけながら、 みんなができるレベルに落とした仕組みづくり が求められます。看護師の仕事では個別のケースに合わせてアクションを起こすことや、異なるアウトプット方法を考えることが重要であったため、この点は入社当時ギャップを感じましたね。

金淵さん

わかります!私はリクルーティングアドバイザーの仕事を2年ほど担当していますが、成功の理由を考えて分析することがようやくできるようになってきたと思います。ただ、汎用性を考慮した進め方にはまだ難しさを感じていますね(苦笑)。一度型にはめることができれば、他の方の業務も、より楽になることは理解できるんですけどね。


――福祉業界だからこその得意な部分と苦手な部分が見えてきましたね。佐藤さんが現在の仕事に活きている力について教えていただけますか?
佐藤さん

些細な表情や言動の変化から相手の気持ちを汲み取ることが活きていると感じます。相手の表情や場の空気感から細かい気持ちの変化を感じ取ることで、先方のニーズや懸念点を引き出し、商談がスムーズに進むことがあります。例えば、相手が考え込んでいる様子や、相手の口から言葉が出るまでの間があるかどうか等で、相手の反応や表情から懸念点を引き出すことも。
チームメンバーとの対話でも同じです。不安そうな様子や気持ちの変化を感じた場合には、積極的にコミュニケーションを行うように気を付けていますね。

――金淵さんが現在の仕事で活かせている力について教えていただけますか?
金淵さん

2つあります。一つ目は「顧客志向」です。前職では、子どものために中長期的な視点を持ちながら、今できることを考えていましたが、現在も求職者と企業の双方が長く活躍できることを大切にしています。面談などをして、お互いに納得できる結果を導くことを重視していますね。

二つ目は「柔軟な対応力」です。今の仕事では、採用の状況や候補者の状況が日々変化する中で、細かい変化や要望に臨機応変に対応する必要があると思っています。
印象的なエピソードとしては、ある担当企業の採用活動においてお力になれたことです。 2名の方の面接があり、評価が両名とも高かったため、企業様側は1名だけを採用するか2名の方を採用するか迷われていました。企業にマッチしている方に出会えることはなかなかないことから、両名とも採用することの価値を企業にご提案し 、結果的に2名ともに内定。 臨機応変に対応することで納得のいく採用につながりましたね。前職の経験があったからこそだと思います。
さらに、よく「丁寧さ」を褒めていただけることがありますが、これも前職の経験が活かされているなと感じます。子どもたちもさまざまな面がある中で、丁寧に事前に起こりうることを予測して対応することが身についているため 、お客様との信頼関係を築いていくことができていると思っています。

寺原さん

お二人のお話を聞いて思ったのですが、お客様から担当を変更してほしいと要望されることないですよね?とても喜ばれていそうです。

佐藤さん

確かにないですね!

金淵さん

私もです!

寺原さん

子どもたちのために多くの経験を積んできたお2人ならではの強みがあり、それが信頼関係を築くのに役立つのかもしれませんね。詳細に踏み込んで話してくれることで、クライアントも安心して相談できるのではないかと感じました。

――「丁寧な対応」「踏み込める」という点も共通点ですね。加えて皆さん受容性の高さも感じました。
寺原さん

福祉の業界で行うカウンセリングでは、共感や貢献の気持ちが重要ですが、それが受容性の高さに現れているかもしれませんね。また、相手を受け入れることも大切にしつつ、赤の他人とは思わない姿勢や思考、そして踏み込める力も福祉の業界で磨かれるかもしれません。

 


――最後に、今後の目標や読者の方へのメッセージを教えてください!
金淵さん

みんながワクワク生き生きと暮らすことができ、苦しみや逃げ出したいと感じる状況をなくしたいという思いがあります。特に今の仕事で目指していることとしては、社会に出て仕事が辛いと感じる人々のミスマッチを減らせたらと思っています。
読者の方へのメッセージですが、今回のインタビューを通じて私自身たくさんの発見がありましたので、皆さんも自身の業務を言語化することで違った視点が生まれるかもしれませんので、ぜひ取り組んでみていただけたらと思いました。

佐藤さん

障がいに対する偏見をなくしたいと思っています。多くの人は、頭のどこかで「障がい」に対してネガティブに考えてしまうことがあるのかなと思うんです。その理由として、障がいのある方との関わりが少ないことが原因だと思っています。私自身もミュージカルスクールとのかかわりがなかったら、福祉業界で働くこともなかったかもしれません。子どもの頃から障がいのある方と関わりを持てる環境を構築していけたらと考えています。

寺原さん

人の転機に関われることを続けていきたいと思っています。今はどんな仕事でも誰かの役に立つことができるならば、やりたいという思いで働いています。
読者へのメッセージですが、もし転職を考えているならば、その業界のサービスの理念に共感し、自分なりの意味を見出すことができれば良いのかもしれません。私は大学院を出て、本来は看護師に戻る予定だったものの、リクルートを記念受験的に受けました(笑)。リクルートは「転機の支援」をするサービスを提供していましたので、「ゆりかごから墓場まで」という看護師の考えに共通する部分もあって共感を抱いたことが理由です。スキルはやれば身につくものであって、マインドに共感できるサービスや事業に進めると、良い機会が訪れるのではないかと思います。

――本記事を読んで福祉業界のマインドに共感できる人が新たな転機として興味をもっていただけたら嬉しいです。3名のみなさま、ありがとうございました!

【文: HELPMAN JAPAN 写真: 株式会社リクルート 金淵さん・佐藤さん・寺原さん】

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