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介護業界を目指す方へ

2023.08.23 UP

海外生活や島暮らしにもチャレンジする元介護士の佐藤さん。「判断力」と「関係構築力」を活かし、より多くの人を支える仕事をする今。

介護・福祉の仕事を通じて得られる力を言語化する企画(https://helpmanjapan.com/article/12796)。本記事では、元福祉・介護職の方にインタビューし、介護・福祉の仕事で得たスキル・能力を現在の仕事でどう活かしているかをお伺いし、介護・福祉業界で得られる力の共通点を見つけます。第一回目のインタビューでは、福祉系の専門学校を卒業後、特別養護老人ホームで介護福祉士として約5年間活躍。2年間の海外生活を経て、日本国内での留学支援企業にて企画職を経験。現在、ケアコラボ株式会社でマーケティングからセールスまでを担当する佐藤ありささんにお話を伺いました。

●佐藤さんのキャリア年表

●目次

・現在の仕事と海外生活に至るまで
・介護の仕事で得られたスキルや能力とそのエピソード
・海外生活から島暮らしまで、様々なことにチャレンジできている理由

 

特養のおじいちゃん・おばあちゃんから教えたもらったこと。海外生活から島暮らしまで、様々なことにチャレンジできている理由。


――現在の仕事の前に、新規事業開発の経験もされているんですよね。

海外の語学学校と海外に留学したい日本人を繋ぐ留学サポート会社の新規事業開発部で働いてました。海外の語学学校との新規提携など、法人営業に近い業務でしたね。
その後、現在のケアコラボ株式会社で2022年から働き始めました。今のポジションでは、主にマーケティングからセールスまでを担っています。具体的には、ケアコラボ(*1)のことを知らない人たちに、システムを知ってもらうところから、導入相談や契約後のフォローまでをやっています。

(*1)ケアコラボ株式会社が提供する、生活の様子や望む暮らしなどの情報をご利用者中心に集めて、すべてのスタッフとご家族に共有できる記録システム。

――介護の仕事を選んだきっかけを、詳しく教えてください!

社会福祉法人が運営する特別養護老人ホームと短期入所で計約5年、介護福祉士として働いていました。中学生ぐらいの時からずっと介護士になりたいな、と思っていた記憶があります。もっと小さいころには漠然と人の役に立ちたいとも思っていました。それは、あるエピソードがきっかけです。小さいときに母親と一緒に歩いていた時、目が見えない方が杖をついて歩いたんです。そこに若い男性がぶつかって、目の見えない方が倒れてしまった姿を目の当たりにしたんです。周りにいた人たちは、誰も手を差し伸べなかったですし、私自身も何もできなかったんですね。その時に、すごく無力だなと感じたのと、将来はそういうような方に手を差し伸べられる存在になりたいと思い、だんだんと介護福祉士になりたいと思うようになったのではと振り返ります。

――海外生活の経験もあられるんですよね。

ワーキングホリデーでオーストラリアに行きました。きっかけは以前働いていた社会福祉法人でのスウェーデン研修ですね。その時に、おじいちゃんやおばあちゃんと英語でコミュニケーションが取れなかったことが、すごく心残りだったんです。そこで、英語の勉強をしたいと思い海外に行きました。ただ当時、介護の現場から海外に行く人はほとんどいなかったですし、周囲に反対もされました。
せっかく海外に行くからにはと、自分の中で決めていたことがありました。絶対に介護士として働くことです。そのために当時、自分の介護福祉士の国家資格証明書をコピーし英訳を付記して、それを持ってオーストラリアに行ったんです。レジュメと一緒に配って、「ここで介護士として働かせてください!」って直談判したんですが、就労ビザの都合や英語力の不足が理由で叶いませんでした。

▲スウェーデン研修の時の様子

――現在では規定のコースを修了することで働くことができるようですが、強い想いがあったのにも関わらず、当時は働くことが叶わなかったのですね。様々な経験をされてきた佐藤さん。キャリアのスタート地点である介護の仕事で得たと思うスキルや能力を教えてください!

2つあります。「情報を収集し、とっさに判断する力」と「ご利用者やご家族を含め、信頼関係を構築する力」です。

――社会情動的スキルでいうと、『学びに向かう力』や『他者と協働する力』に近しいですね。介護の仕事で上記スキル・能力を身に着けたと思う、具体的なエピソードを教えてください!

まず「情報を収集し、とっさに判断する力」について紹介したいと思います。介護士として働いていた当時、合計40名ほどのご利用者を職員2人で対応する夜勤体制でした。とある日の夜、ご利用者の中でセンサーマットを使う方がいらっしゃいました。職員の1人が仮眠休憩に入ると、もう1人のみで対応する体制になるんですが、ちょうど私の一人体制になったタイミングで、センサーが反応したんです。バーッと走って行ったんですけど、扉を開けた時にはすでに遅く、ご利用者はその場で転んでしまっていました。しかも、ちょうど向かいにあったタンスの角に頭をぶつけて、なんと血を流している状態だったんです。
そこで私はとっさの冷静な判断をして、バスタオルを持って止血しながらその場を離れず、ピッチ(PHS)でもう一人の職員を呼び、宿直も呼んで救急搬送してもらい、無事にそのご利用者の命を守ることができたんです。
介護施設は命を預かっている現場ということもあり、問題の大小はあれども同じようなアクシデントの場面に直面することって結構あると思うんです。実際に、日勤帯で職員がたくさんいるときに、小さなアクシデントにはいくつも遭遇していました。ただ、その場では、リーダー職が判断して私が動くという体制でしたね。そのようなアクシデントの場面への遭遇と対応を積み重ねすることによって知識をつけ、落ち着いて対応できるようになったのではないかと振り返ります。つまり、大きな問題が起きても、自分が慌てずに今できる最善のことは何かを冷静に考える能力が、福祉の現場で身についたなと感じます。

▲介護現場で働いていた時の佐藤さん

――情報を収集してとっさに判断する力は、様々な場面で活かせそうですね。実際に、介護業界以外の仕事で活かせたと思うエピソードも教えていただけますか?

2社目に働いた留学サポート会社で起きたことです。新型コロナウイルスの感染拡大がちょうど広がり始めた時期に働いていたのですが、やはり留学業界には大きな影響がありました。渡航先の国がバタバタとロックダウンし、海外渡航できなくなったんです。来週から留学に行く予定だった人もいる緊急事態の中で、とっさの判断が求められる時がありました。そこで冷静な判断を行い「今何をすべきか?」「何が最善か」を考えて行動を起こすことができましたね。具体的には、語学学校に連絡をして状況を聞くほか、渡航予定の人をリストアップして、延期する人や返金する人を分けて冷静に素早く対処することができ、大きな問題にならずに済みました。

――福祉現場で身に着けた力を、まさか起きると想定できない緊急事態下で活かすことができたんですね。二つ目の「信頼関係を構築する力」に関するエピソードも教えてください!

介護士をしていた当時、私が大切にしていたケアのスタンスは、目の前にいらっしゃるご利用者だけでなく、その先にいるご家族まで想像してケアをすることでした。ご利用者の生活を整えるにあたって、ご家族の存在は大きなものだからです。ただ、面会の時だけ建前的にご家族と接点を持つだけでは、信頼を得ることはできないと思ったんです。そこで、目の前のご利用者に対して嘘偽りなく素直に真摯に向き合うことで、その先のご家族との信頼関係が構築できるんじゃないかなと心がけるようにしていました。
実際、あるご利用者が亡くなられてしまった時に、私がケアの担当でよかったとおっしゃってくださったんです。ご利用者を通じて、ご家族と信頼関係が構築されたことが強く感じられたエピソードですね。

――真摯に向き合うことが信頼関係構築につながるという素敵なエピソードですね。現在の仕事に活かされていると思うことはありますか?

現在働いているケアコラボ株式会社ですが、顧客とのコミュニケーションスタイルは「隣に座って一緒に考える」。その顧客の課題を知り、解決を一緒に探る。私たちの商品であるケアコラボというツールを導入することも選択肢の一つだけれど、本当にその顧客に必要なものを一緒に考え、強要や押し売りをしないんです。
私がご家族との信頼関係性構築において大切にしていた、真摯に素直に向き合うというスタンスが、ケアコラボのセールスにもすごく活かせているように感じています。そういう風にきちんと真摯に向き合っていることが伝わり、信頼関係の構築ができて、短い関係で終わらず長期的な関係性を作ることができていますね。

――営業は顧客の観察をして、その方に合わせたコミュニケーションをすることが大切ですが、まさに介護業界で身に着けた力が生かされたエピソードですね。そのほかに、介護の仕事を経験できてよかったと思うことはありますか?

介護の現場で働いたことで、自分の生き方や今の人生の選択の広がりに繋がってるように感じています。自分の何倍も長い人生を過ごされてきた方が多くいらっしゃる特別養護老人ホームで、様々な人生を聞かせていただいたんです。そこで私が感じたことは、今は昔と比べて選択肢が多くなってるということ。昔は行きたい学校にも行けない、やりたい仕事ができない、好きな人と結婚できないというように多くのことが制限されていた。そう考えると、すごく自分は恵まれている環境にいるんだっていうのを、福祉の現場で感じたんです。
なので、海外にも行きましたし、介護業界ではない違う仕事にチャレンジしました。さらにリモートでできる仕事なので、最近島暮らしを始めました。このようなチャレンジができたのも、福祉の現場である特養のおじいちゃん、おばあちゃんに教えてもらったからこそだと感じています。

▲ケアコラボ株式会社で働く様子

――たくさんのチャレンジをされているモチベーションの源泉は、特養のご利用者から教わったんですね。今伝えたいことについて教えてください!

福祉の現場にはずっと関わっていきたいと感じています。福祉の現場で働いているときは、目の前のご利用者がいい人生の最期を迎えるためにどうするかを1対1のケアという関係性の中で考えていました。
今は、目の前の介護事業所の方との1対1の関係性だけでなく、その先にいる職員さんやご利用者、ご家族まで広がり、対100や対1000にもなっています。そのぐらいの規模でご縁ができて、人の幸せを支えることができて、とても喜びを感じていますね。
そして「福祉の仕事って本当にめっちゃ素敵な仕事だよ」と伝えたいですね。福祉現場で働く方は、真摯に向き合うような方々がたくさんいらっしゃり、自分の視野を広げさせてくださる人に多く出会えます。また、たくさんの人の幸せを支えられて、自分自身も支えられる仕事です。これからも関わり続けたい職場ですね。

▲今回、オンラインでのインタビューをさせていただきました。

――佐藤さん、ありがとうございました!最後に、佐藤さんが現在働いているケアコラボ株式会社の紹介です。

◆ケアコラボ株式会社:https://page.carecollabo.jp/
「人と人が立場を越えて尊重し、助け合える社会に」をビジョンに掲げるケアコラボ株式会社。生活の様子や望む暮らしなどの情報をご利用者中心に集めて、すべてのスタッフとご家族に共有できる記録システム「ケアコラボ」を用いて、ノウハウのシェアにとどまらず、人と人の関係性を深化させる貢献をしています。

【文: HELPMAN JAPAN 写真: ケアコラボ株式会社】

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