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ひと昔前まで、どちらかというと話題にしづらいイメージのあった「遺影写真」。しかし、ここ数年の「終活」ブームと連動して、その意識が変わりつつあることをご存じですか? 「自分らしい写真」を家族へちゃんと残したいと、元気なうちに撮影をする人が増えているようです。

「お年寄りの街」巣鴨には、遺影写真、シニアの肖像写真をメインに活動する写真館「百歳王写真館 & 寿ギャラリー」があります。店主の小野庄一さんは、100歳以上の人々を撮り集めた「百歳王」シリーズで写真集も出版しているプロの写真家。最近では、遺影として使えるいま現在の姿と若いころの姿を共に飾る、「自分史額」の作成を提案しています。

ポートレート写真を飾る文化のない日本では、いまの姿を額に入れて飾ると、本人が生きていても「遺影」のように見えてしまいがちです。ところが、昔の写真とセットで飾ることを提案した途端、ポートレートを撮って飾ることへのハードルが下がるといいます。実際、家に飾っていた昔の写真が糸口になり、認知症の人が訪問介護のスタッフへ昔の楽しかった思い出を雄弁に語り出すなど、写真には介護の現場におけるよい効果もあるようです。

また、自ら「遺影写真家」と称して活動するのが、東京・中野区に写真館「素顔館」を構える能津喜代房さん。もともと広告写真を中心に活動していた能津さんは、ずっと応援してくれた義父の死に際し、遺影として使えるポートレートを一枚も撮っていなかったことを深く後悔したそう。自身のホームページで、遺影写真について、「残された家族の皆さんが心の絆として大切にする写真」と記し、普段着姿の笑顔の写真を元気なうちに撮影しておくことを提案しています。

自分はどんな姿を、どんな表情を家族に残すのか。いまや「遺影写真」も自己表現の時代なのかもしれません。プロのヘアメイクをつけてモデル気分で写る、あえて普段着姿のままシンプルに写る。遺影写真を楽しむシニアは、今後ますます増えていきそうな予感です。
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文: 高木沙織(verb)
イラスト: 株式会社コットンズ
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