ヘルプマン
「変わる自分にワクワクしながら実践します」。これは、日の出ホームの行動指針をまとめたサンライズクレドのフレーズのひとつ。介護保険導入をきっかけに大胆な経営改革を行った日の出ホーム。スタッフが率先して変化を楽しむ姿勢が、ご利用者さん一人ひとりの思いをカタチにするケアにつながっているそうです。革新を進める神田明啓さんの想いを伺いました。 (※この記事は2012年以前のもので、個人の所属・仕事内容などは現在と異なる場合があります)

毎日がカルチャーショック

「どうしてできないのですか?」「法律でそう決まっているのです!」——。
私が芳洋会に入った20年前は、こんなやりとりばかり。

大学を卒業し、メーカーから大手百貨店を経て、芳洋会に就職したのが28歳のとき。当時の社会福祉事業は行政の影響力がかなり強く、民間のサービス現場を経験している私には、毎日がカルチャーショックの連続でした。働いている人の価値観も、「どの施設か」という点に重きがあり、「どこの法人か」は関係ない。事業という視点が薄かったように思えます。

しかし2000年の介護保険制度で、その環境が大きく変わった。社会福祉法人でも、それぞれ独自色が打ち出せるようになった。うちではこんな介護がしたい、こんなホームになりたい。私たちが新制度へ向けて、経営改革を検討し始めたのは、制度移行の2 年前のことでした。
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人を磨けば事業が変わる

私は改革メンバーの一人として、企業経営の最新手法やツールも、いいと思ったものは積極的に試してみました。とにかく“お役所的”な雰囲気を打破したかった。

職員がそれぞれ、創意工夫する組織。介護ニーズにすばやく応えられる体制をつくりたかった。そのため経営コンサルタントも活用しました。外部のマネジメント研修も、積極的に導入。何が足りないのか、何が必要なのか、考えさせるクセをつけるようにしました。すると次第にマネジャーやスタッフの顔つきが変わってきたのです。

皆、前向きになり、介護現場が生き生きとしてきた。ご利用者が何を求めているか常に意識するようになり、介護サービスの質も高まった。いくら立派な事業プランをつくっても、職員の意識がそろっていないと、絵に描いた餅です。「安心と充実の人生をご一緒に。」こうして法人としての理念と体制が確立していったのです。

ご入居者の思いをカタチに

現在、中心となる事業基盤は、特別養護老人ホーム「日の出ホーム」と在宅サービスセンター「ひので理想郷の園」。このほか、短期入所生活介護事業(ショートステイ)や居宅介護支援事業など、介護事業をトータルに展開しています。2005年の「日の出ホーム」の全面リニューアル以降、「施設らしくない施設」として、見学に訪れる福祉関係者が増えましたね。

今年は海外から韓国のNPO団体や民間企業、さらに中国のテレビ局も取材に訪れました。皆さん「介護施設のイメージが一変した」といいます。こんな新しい事に挑戦できるのも、組織や職員が、変化をこわがらないから。老人ホームというと、どうしても高齢者を一括りでとらえがちです。

しかし一人ひとり、生い立ちも、入居理由も、ご家族の状況も違います。ご入居者一人ひとりと正面から向きあうことで、隠れたニーズを掘り起こす。ご利用者の願いや思いをカタチにしていく。チャレンジと試行錯誤の中から、理想とするケアを実現していくのです。

イノベーションを担う若手職員

介護技術のイノベーションは、今や日進月歩。昔のやり方を、オールドカルチャーと呼ぶ人さえいます。

介護用品は、次々に新製品が開発される。また介護の方法自体も日々見直され、進歩する。そんな激変する環境のなかで、変化の担い手となっているのが、若い職員たちです。とくに2002年から始めた新卒定期採用の人たちの存在が大きい。介護の仕事には、専門性が不可欠です。介護リフトの操作や、車椅子への移乗技術など。実はケアの場面ごとに、細かな知識やスキルが潜んでいる。定期採用に切り変え、介護技術の研修や勉強会などを続けていくなかで、次第に先駆的な取り組みも増えてきています。例えば米国由来の、問題解決へのアプローチ法とか。介護技術を活用しながら、一から十まですべてケアするのではなく、あくまで「利用者の自立支援を進めていく」のが、私たちの考え方。

従来のイメージで介護の仕事を捉えていると、きっと驚かれると思いますよ。

スペシャリストも、マネジメントも

新卒採用については、「人材の育成・定着の取り組み」をテーマに、厚生労働省でスピーチした経験があります。また2009年末の全国老人福祉施設研究会議では、採用関連で優秀賞もいただきました。やはり事業は人です。以前は、施設拡大や欠員が出るたびに、職員の補充を随時行っていました。

しかし長続きしない人も多く、人材がなかなか育たなかった。そこで2002年から新卒採用に転換。ともに成長していける新卒者の採用・育成にエネルギーを注ぐようになったのです。まずしっかり応募者と目線を合わせて、ミスマッチを防ぐ。重視するのは、前向きな姿勢です。私たちは、福祉専門の大学や専門学校以外の方々も、幅広く採用しています。

介護の専門家としてだけではなく、多面的に自分の個性を十分に発揮していただきたい。スペシャリストであれ、マネジメント職であれ、自分の可能性に挑戦する積極性こそが、何よりも大事だと思うからです。

変わり続ける研修メニュー

当法人では、入社後の研修計画が毎年変化します。新しい人材が入ってくるたびに、常にバージョンアップする。各マネジャーとの話し合いの中で、毎年問題点を抽出。問題解決のために、どういう研修をやるか。内外の環境要因の変化にあわせ、徹底的に議論するのです。もちろん導入研修からフォローアップまでの1年間、さらに階層別の人材育成プログラムなど、かっちりとしたフレームワークはあります。

しかし、盛り込むコンテンツは毎回変えていく。テーマ別研修や委員会方式などの方法論を含め、今後必要と思われる知識やスキルを自分たちで考えて、それをメニュー化していくのです。ちなみに今年のテーマは「プロフェッショナルの自立」や「CS(顧客満足度)価値観の共有」など。また国内外の外部研修やセミナーにも、職員をどんどん派遣します。

こうした取り組みの結果、離職率が8%にまで改善しました。新人も目を見張るほど成長していきますね。

利用者視点で地域ニーズに対応

「公益性」と「安定性」を併せもつ社会福祉法人は、地域における重要な社会資源です。

今後、地域社会の新たな介護ニーズにどう応えていくか。例えば「訪問」「通い」「泊まり」が一体化した、柔軟なサービスもその一つ。先頃開設した「サンライズ鉄心坊」では、そうした声に応え、ご利用者に安心の施設となっています。また地元の大型ショッピングモールの中にある、デイサービスセンター「サンライズ平井っ原」も1階入口のすぐ横にあり「オープンで利用しやすい」と、評判です。

私たちの施設がある日の出町(東京都西多摩郡)は、「日本一の福祉のまちづくり」を掲げ、高齢者介護にも非常に熱心。連携しながら困った人の相談を受けたり、私たちが解決できない問題は、病院や保健施設と協力し、対応しています。

シナジー効果で、皆が成長

新たな介護ニーズに応えるという点では、2012年8月に開設予定の新型特別養護老人ホーム「サンライズ大泉」(東京都練馬区)も、私たちにとって大きなチャレンジですね。練馬区は先進的な介護施設が多いエリア。プライバシーと生活スタイルを重視した全個室型の新型特養で、いかに一流の介護のプロがもつ高い専門性と、きめ細かなサービスを実現していくか。この10年間進めてきた、新卒者の採用活動や人材育成のための研修制度など、様々な取り組みの試金石になると思います。規模が拡大していくと、施設運営や経営マネジメントへの道も広がっていきます。

すでに練馬区の新事業に続く一手も、準備中。経営基盤が万全で、教育研修制度がしっかりあり、職員の気持ちが前向きなら、そのシナジー効果で、人も組織も必ず成長していくものです。

ワクワクしながら実践します

老人介護分野には、まだまだやるべき事がたくさんあります。新たな介護サービスも次々に誕生しています。「変わる自分にワクワクしながら実践します」。これは、法人としての信条や行動指針をまとめた三つ折りのカード「サンライズクレド」にあるフレーズですが、私自身が率先して変化を楽しんでいる。

「困ったな」という場面が、面白くてしょうがない。新たな課題をどう解決していくか、そのチャレンジの過程が楽しい。

その結果、首尾よくご利用者に喜んでいただけると、思わず「やった!」と(笑)。その繰り返しです。自信がなくてもいいんです。夢や思いをしっかりもっていれば、道は必ず拓けていく。最近、若い職員との話題は「これからこんな事をやろう」「これやったらうけるかも」という将来の話ばかり。成長途上の組織なので、意見はスッと通ります。たとえ結果がでなくてもいい。できるために次はどうしたらいいか、というのが私たちのやり方。さあ皆さん一緒に、チャレンジを楽しみましょう!
[
写真: 山田 彰一
]
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