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ヘルプマン

2025.01.31 UP

「介護系インフルエンサー」として活躍する現役介護士に聞いた、「視聴者を惹きつける要素」とは /はたつんさん

14年のキャリアを持つ介護職であり、「介護系インフルエンサー」として活躍している「はたつん」さん。「介護業界でがんばる方々を応援したい、元気づけたい」という想いから、YouTubeやTikTok、Instagram、XなどさまざまなSNSで発信。TikTokフォロワー数は5.63万人(2024年11月現在)、YouTubeチャンネル「はたつん介護士」の登録者数は4.23万人(2024年11月現在)に達しています。
何が視聴者を惹きつけているのかを探るため、介護の仕事への想い、YouTube・SNSでの発信活動への想いや工夫などについてお聞きしました。

介護職は、誰かの人生をサポートするかっこいい仕事

―― はたつんさんが介護業界に入ったきっかけと、介護職としての経歴をお聞かせください。

音楽専門学校を卒業後、「チキンスープ」というバンドを結成し、ボーカルとして音楽活動を始めたんです。音楽を続けていくためには他の仕事で収入を得る必要があったので、シフトに融通が利く仕事を探したところ「デイサービス」が目に留まり、バンドメンバーと一緒に働き始めました。
当時、金髪から、緑、紫、ピンク……といろいろな髪色をしていたので、髪色が自由な施設を選びました。
デイサービスで12年勤務し、いまも介護職を続けています。インフルエンサー活動をしている都合上、勤務先の施設の形態や場所は内緒にしていますが。近年は、レクリエーション介護士の資格、その講師の資格も取得しました。

▲「チキンスープ」としてライブ活動も行うはたつんさん

―― 介護職に就いたころから現在までに、介護の仕事への捉え方・向き合い方は変わりましたか? 

介護職に就いたばかりのころは、どんな業界なのかよく分からず、入職後しばらくは日々の介護業務に追われ、楽しさを見いだせずにいましたね。
そこから変わった最初のきっかけは、勤務先の施設で「音楽をやっているんだよね。コンサートを開いてほしい」と言われたこと。
「青い山脈」や「リンゴの唄」など昔の曲を一生懸命覚えてコンサートを開いたら、寝ている方が起きて、普段は不機嫌で怒りっぽい方が笑顔になって。いつもは業務に追われている職員さんも笑顔で。自分がしたことで人が喜んだり元気になったりする姿を見て、やりがいを感じるようになったんです。

▲デイサービスでコンサートを開く様子

子どものころから、人を元気にすることが好きで、「バンドで売れてスーパースターになる」ってずっと言い続けていました。介護職も誰かの人生をサポートする、かっこいい仕事。スーパーヒーローっぽいと思っています。
また、最初は介護職に対して「高齢者の方のお世話」というイメージを持っていたのですが、やっていくうちに「違うな」って。
ご本人ができることは意思を尊重して自分でやっていただき、できない部分をサポートする仕事だと気付きました。80代・90代の方々が、時には友達のようであり、時には家族のようであり……関わりや絆が増えていく感覚です。

利用者さんと接する中では、その人のことを「大切に想う人がいる」ということを忘れず、理解者でありたいと思っています。笑顔を見せてくれていても、内側にはつらさやモヤモヤなど、いろんな気持ちがあると思うんですよね。それをちゃんと引き出せるように、相手の立場になって考えるように心がけています。

▲デイサービスで働いていたときのはたつんさん

―― いま、介護職としてやりがいを感じていること、モチベーションの源になっているものは何ですか。

やはり、私がしたことで喜んでいただけたり、必要とされていると感じることです。どんなに疲れていても「よし、この笑顔のためにまたがんばるぞ」と思えますね。
そして最近では、私の動画の視聴者さんの存在が、モチベーションの源になっています。体力的にも精神的にもつらいとき、ネットを通してたくさんの仲間がいることを感じられるから。夜勤中、空を見上げれば「いまも仲間がどこかで働いている。私もがんばろう」と思える。すごく心強い存在です。

「共感して笑える」から「悩みを共有できる」場へ

―― YouTube「はたつん介護士」チャンネルの登録者数は4.23万人、TikTokフォロワー数は5.63万人(2024年11月現在)に達しています。こうしたインフルエンサー活動を始めたきっかけとこれまでの経緯についてお聞かせください。

もともとはバンドの活動を広く知ってもらうために、音楽や美容のほか、激辛料理を食べたりドッキリを仕掛けたりといった動画をSNSで発信していました。そのひとつとして、介護についても発信しようと思い、3年前、TikTokに「介護の声かけあるある」を投稿したんです。「○○さん、ここにつかまって。さぁ、ニューヨーク(入浴)に行くよ」といった感じで。

すると「分かる!」とすごい反響があり、80万回ほど再生されました。当時、女性介護職で「あるある」を発信している人がいなくて珍しかったこと、共感を得られたことから注目していただけたのかなと思います。そこから視聴者さんが勤務先の介護施設や職員さんに広めてくださったんです。

TikTok立ち上げから2カ月でフォロワー数は1万人に。8カ月後にYouTubeでの発信も始めました。でも、フォロワー数アップにこだわっているわけではなく、応援してくださる皆さんへの恩返しのつもりで活動を続けています。
投稿のペースや回数のルールは特に決めていませんが、TikTok、YouTube、Instagram、X、Threadsなど、何かしらのSNSには毎日アップするようにしています。視聴者さんが笑顔になってくれたらうれしいので、特に大変とは感じないし、楽しんでいます。

―― 投稿するテーマやコンテンツは、どのように考えたり、ネタを集めたりしているのですか?

14年間この仕事をしてきているので、基本は私自身の経験が軸となっていますが、コメント欄に寄せられる視聴者さんの声も大切にしています。悩みに対して寄り添ったり、怒りを笑い飛ばせるようにしたり。
動画を作るときは、基本的に「誰かが主人公」の物語にしているんです。例えば、新人とベテランでは立場が異なるので、悩みも異なる。その人の立場で考え、その主人公に刺さる動画を作ることを意識しています。

また、最近では「介護をされる側」の視点に立った動画も発信しています。「オムツをはいて排泄してみる」という動画を出したこともありますよ。介護される側の気持ちを踏まえて、どういう声掛けをすればよいかなど、気付きを提供できればと思います。
あとは、介護ニュースにも目を通すようにしていて、いいニュースがあったら共有し、悲しいニュースがあれば一緒に考えます。介護用品の展示会などに足を運んで、最新のアイテムなどを紹介することもあります。

▲YouTube撮影時の様子

―― 発信内容が多様になっているのですね。視聴者さんの反響には、変化がありましたか? 

始めたばかりのころのコメント欄には「分かる」という共感の声が多かったんですが、徐々に「悩み」が増えていきました。そして、最初ははたつんに向けて書いていたコメントが、視聴者さん同士での「私も!」「そうだよね!」という会話に発展していきました。

私自身、発信活動を始めてからインタビューを受けるようになり、自分の想いを文章にすることってすごく大事だと実感したんです。だから、視聴者の皆さんも自分の想いや悩みを自分の中だけに閉じ込めず、文章にして私に届けてくれたり、他の視聴者さんにも読まれて共感を得られたりする場になればいいと思っています。

他にも、いろいろな場所で動画を活用していただいているようです。介護のやり方などについて「○○派 VS △△派」のように比較する動画をもとに、介護施設で「うちではどちらの方針でいくか」という会議に使ってくださったり、新人研修の教材にしていただいたり。高校で、介護の仕事を知る授業でも活用されています。

―― どのような想いを持って、どのようなことを心がけて発信しているのでしょうか。

介護業界は一般的にネガティブなイメージを持っている方も多いので、弾けた感じで、楽しく伝えることを大切にしています。見た目を派手にして、よく笑うことを心がけています。
始めて間もないころは、視聴者さんに共感してもらい、ちょっと笑って元気になってもらうことを意識していました。いまは少し変わっています。「一人じゃないよ」と伝えたいんです。介護って心を使う仕事だから、楽しいこともあるけれど、分かり合えなくて悲しかったり、自分自身に怒りを感じたり、気持ちの振り幅があるお仕事だと思うんですよ。

そんなとき、「自分だけじゃないんだ」って安心できたり、モヤモヤが晴れたりすればいいなと思います。私自身もそれによって心強くなるから。皆の心の居場所になれたら、と思って発信しています。
ただ、時には自分が意図していることと違うように捉えられることもあり、「人に伝えるって難しい」と感じることもあります。さまざまな視聴者さんの気持ちを考えることも大事ですね。
ただ、「伝わらない」はSNS上だけでなく介護現場でも起こり得ることなので、そんな経験も学びだと捉えています。

数字を追うのではなく、「自分たちならでは」の発信が大切

―― 介護施設運営者の方々からは、「YouTubeやSNSを活用して施設や仕事の魅力を発信したい」「SNSをすでに運用しているが効果があがらない」と悩む声もよく聞こえてきます。アドバイスがあればお願いします。

再生数やフォロワー数やコメント数など、数字を追うのはやめた方がいいと思います。「どうすれば見てもらえるか」「どうすればバズるか」を考えるほど、誰かの真似になってしまう傾向もあるように感じます。また、「介護現場あるある」として発信している内容が、その施設や仕事の魅力のアピールにつながっていないこともありますね。

大切なのは、その施設・その人ならではの言葉や行動を見せることだと思います。「介護の仕事が好きだけど、職場が合わずに辞めてしまった」という人がたくさんいます。だからこそSNS発信は「職場見学希望者への対応」だと捉えて、「こんな施設ですよ」「こんなふうに働いていますよ」という現場の姿や声を楽しく伝えていただけたら素敵だなと思います。
それが「この施設なら自分に合っている」という人との出会いにつながり、介護職の皆さんが笑顔で働けるようになることを願っています。

―― 今後の目標をお聞かせください。

バンド活動はいまも続けています。一つ夢がかなったことを挙げると、カラオケの音楽療養コンテンツのサポーターとして、自分が作った音楽が体操用コンテンツとして起用されました。
高齢者の方々と音楽レクリエーションをしているとき、歌手になる夢を話すと、「紅白歌合戦に出るまで長生きするからがんばって!」とすごく応援してくださるんです。たくさんの方と約束したから、果たさなければ。バンドメンバーの皆も介護福祉士なので、そんな私たちが武道館のステージに立ったらかっこいいんじゃないかと思っています。

私の場合は音楽ですが、介護職は自分が好きなものと一緒に生きられる職業です。実際、私の職場にも、美術家、俳優、ダンサー、教師、看護師など、いろいろな「卵」がいます。それぞれの「好き」を大切に育てれば、介護の仕事にも、SNSの活動にも生かせると思います。

【SNS一覧/はたつん】
YouTube
https://www.youtube.com/@hatatsun_0w0/featured

TikTok
https://www.tiktok.com/@hatatsun_0w0

Instagram
https://www.instagram.com/hatatsun_0w0

X
https://x.com/hatatsun_0w0

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