介護業界人事部
2017.11.11 UP
学生と深く向き合う姿勢が重要! 家族を受け入れるかのような内定者フォローで辞退者”0”を実現/株式会社日本ケアリンク 総務人財部 人財開発グループ 主任 志村 由紀さん
とにかく接点を持つことを重視。自らもキャリアカウンセラーの資格を取得し、学生に寄り添う採用を実現
日本ケアリンク社の採用はとにかく学生との接点が多い。
多い学生だと会社説明会から入社まで20回以上の接点を持つというから驚きだ。
たとえば、通常の学生の入社までの動きを見てみよう。
まずは会社説明会。これは雑談形式で進めることが多いという。また、学生と接する密度を意識してあえて少人数での開催にしている。
学生一人ひとりの「知りたいこと、聞きたいこと」は異なるため、それを丁寧に拾うことが重要だという。そのために雑談形式×少人数というアットホームな雰囲気を意識した説明会になっている。そうすることで、説明会中に自らによる挙手はなくとも「あ、それって何?」と思った時に素直に言葉や気持ちを吐露してもらうことが狙いだ。
そこから施設見学を1~2回実施する。人事としても出来るだけ様々な施設と色々な介護サービスを見てほしいと2回以上の見学を薦めている。
通常であれば、会社説明会の後はすぐに採用面接に移行するのが多いパターンだが、日本ケアリンク社は採用面接の前には必ず、施設見学を実施する。
このことの利点は2点あるという。
1点目は、学生の会社への理解が深まること。2点目は、学生に対する前情報を取得できるため、法人側も採用面接時に一人一人の学生に合わせた話が出来るという点だ。
▲施設見学では”ありのまま”を見せることを意識しているという
そうすることで、採用面接時にお互いに深い話が出来るというわけだ。
ここからの採用面接の回数は何と1回。
スピードが重要だと言われている新卒学生の採用市場において、このタイミングで巻き返す。
既に施設見学を通じて学生と会社とで相互理解が進んでいるため、1回でも問題ないと人財部 人財開発グループの志村さんは言う。
内定が出た後も攻めの採用は続く。
10月1日の内定式まで多い時で5回以上の内定者懇親会を実施。目的は、会社と学生の更なる相互理解の促進だ。最近の学生は一度内定が出た後も就職活動を続けるケースも多い。
そんな学生の悩みも様々だ。お食事会やアートセラピーや就活における自己理解のためにカウンセリングなど、学生に合わせて様々な手法でアプローチを仕掛ける。ここで志村さんが人事の仕事に就く際に自ら取得したというキャリアカウンセラー(CDA:キャリア・デベロップメント・アドバイザー)の資格が活きてくる。「学生の側にとことん寄り添うことが重要!」
懇親会以外にも、施設の夏祭りなどにも参加してもらうという。
これは任意だが、70~80%の学生が参加するそうだ。
法人としては、学生が就活中に業界選び、職種選び、会社選びを意識して緊張した気持ちで行っていた施設見学とは違い、内定後のゆったりと安心した気持ちで施設を改めて見てもらい、色々なことを感じてもらうということが目的だ。そうすることで、学生が就活時代には気付かなかった発見が多々あるという。
こういった祭りの実行委員も2~3年目の若手職員に任せている姿を見てもらうことで、若手にも早くからチャンスがあることを学生に肌で感じてもらえるため、好評だ。
そして、迎える10月1日の内定式。
ここまででもとにかく学生との接点を持つことを意識していることが分かる。
▲内定式の時の学生の会社への理解の深さは、他社には負けない強みだ
配属前にも施設見学を実施。4月1日の入社まで更なる接点強化を図る
通常の介護事業者であれば、内定式から入社までは初任者研修の資格取得支援やメールでのフォローに入る会社も多い。
ただ、日本ケアリンク社はこれでは終わらない。
配属前施設見学を実施するのだ。これは内定式後の11月に実施をする。
人事としても多くの施設を見てほしいと1施設以上の見学を推奨する。
これは同年の12~1月に実施する「施設面談」で本当の意味で自分の行きたい施設を内定者自らに語らせるために実施するという。
介護業界では、家から近い施設での就業を希望する求職者も多い。
ただ、志村さんはあえて、「多くの施設を見て、その中で自分が行きたいと思った施設に配属される」ことを重要視しているという。
そうすることで、入社後のミスマッチを防ぐことが目的だ。
▲施設見学には志村さん自らが同行することも
1月に実施する社内での配属会議で、希望が叶うのは約半数。
どうしても100%希望を叶えることは難しいが、それでも同制度に関する内定者の満足度は高いという。
「学生の希望を聞いてくれたことで、寄り添ってもらったと感じた」内定者談
そのほか、初任者研修の資格取得支援や面談などを毎月繰り返し、とにかく会社と内定者とで接点を持ってもらうことを重要視する。
たとえば、日本ケアリンク社では、初任者研修の資格取得を本社と施設で実施することが可能なため、そこでも接点を複数回持つことが可能だという。
「メールでは伝わらないことも直接話をすれば、キャッチできる。講義の間などに髪の毛切ったね、などと話しかけます」と志村さんは話します。
会社規模が大きくなっても「とことんまで人に向き合う採用」を継続。本当にいい人材を採用することは結果的に会社にとってプラスになる
現在の日本ケアリンク社の会社規模は従業員数805名(2017年4月時点)。会社規模としてはややもすると、人財部は何十名という採用目標があってもおかしくない。
ただ、人財部としての数値目標はあえて設置しないという。
理由は、意欲が低い人を採用すると結局は現場にしわ寄せがくるからだ。
少人数の意欲が高い人の採用が実現でき、その方が辞めなければ、多くの人を採用する必要はないという理屈だ。
「もちろんたくさん人が採用できることに越したことはないですが(笑」志村さん
▲いい人材を見つけるためなら、どこでも飛び回るという志村さん
いい人材とは何か?
それはひとえに介護職への意識だという。
「本来は介護職に向いている学生が介護職を就職の選択肢に入れないのは本当にもったいない」と語る志村さん。
本来は介護職として活躍できる素地がある学生が周囲からの反対や業界への理解不足で辞退する現場を多数見てきたという。
そこで思いついたのが、今回の接点を多数持つことで学生に業界理解・会社理解を進めてもらう施策だ。
毎年10名前後の学生を採用するが、結果的にここ3年で内定後の辞退者0を実現できた。
「たとえば、もともとは体育教師志望だった学生に、施設見学を通じて介護職の魅力に気づいてもらう。体の仕組みや体の動かし方を学んでいたため、介護の現場でも活かせることも多いという。同じように、音大出身の学生が当社で音楽に関するレクリエーションを数多く開発・実施した事例もある。大好きな音楽が職場で活かせることに本人からもご利用者からも喜んでもらえるそうだ。考え方次第で、介護職は学生時代に学んだことが活かせる場面は想像以上に多いんです。このことに気づいていない学生はもったいない!私は学生一人一人にきちんと”寄り添う”ことで、1人でも多くの学生が介護職として活躍できる可能性に気付いてほしいと思っています。」志村さん談
法人の理念である「C’est la vie!=すばらしい人生を送ろう」は、ご利用者はもちろん、学生や自法人の従業員にも適応されているのだ。
【文: 繁内 優志 写真: 株式会社日本ケアリンク】