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2017.08.21 UP

もっと、胸を張っていい。すべての“ケアニン”たちにささぐ応援歌

映画制作のきっかけは
「介護の仕事の魅力を伝えたい」

例えば、友人の旦那さんから「介護の仕事をしている」と聞くと、「きつそうだ」「大変そうだ」という印象を持ってしまうことが多い。特に介護業界を知らない人にとって、介護の仕事は、“3K(きつい、汚い、危険)”のイメージが強いのだ。

そんな中、本作のエグゼクティブプロデューサーでもある、山国秀幸さんが立ち上がる。

「介護の人材不足が指摘される中、映画を観た人が、介護の仕事に興味を持てるような作品を作りたいと思い、映画製作を決意しました」(山国さん)

介護をテーマにした映画は多いが、そのほとんどが夫婦間や家族間での介護に関するストーリーだ。介護職の話であってもネガティブに描かれることが多く、「介護の仕事」そのものにスポットを当て、その魅力をしっかりと描いた作品は、本作が初といえるだろう。▲映画「ケアニン~あなたでよかった~」は、ある新人介護福祉士が挫折を繰り返しながらも本気で介護の仕事に向きあっていく物語だ

介護とは、人が人を想うこと
小さなきっかけは人生をも変える

本作は、一人の新人介護福祉士が、とある女性利用者との関わりを通じて、専門職として成長していく物語だ。介護という仕事に対する喜びや悩み、そしてこの仕事を続けるか否かという葛藤まで、実にリアルに描かれている。

主人公は、介護の専門学校を卒業したばかりの新人介護福祉士・大森圭。映画の冒頭では、小規模介護施設「みなさん」での研修期間中、認知症の高齢者たちとのコミュニケーションがうまくとれず、固まってしまう彼の姿が描かれる。「この先やっていけるのか」という不安を抱きつつ、介護福祉士のことを「なんか堅苦しいじゃん」という理由で “ケアニン”と呼ぶような施設長・工藤らの人柄にも惹かれ、「みなさん」で働くことを決意する。

ある日、街で道に迷っていた老婦人・星川敬子を助けた圭は、家族と引き合わせた際に「認知症かもしれない」と伝え、敬子は「みなさん」を利用し始める。圭は、初めてメインの担当を任され、試行錯誤しながらやりがいを見出し、敬子との関係性を深めていくのだが……。

本作は彼の成長物語だけに留まらない。30カ所に及ぶ、介護施設や専門学校、関連団体に取材して作り上げたシナリオは、セリフの一つひとつや、利用者や家族とのエピソード、施設内のレクリエーションに至るまで、実際の現場からすくい上げたリアルな介護の現実に基づくものだ。▲徹底した介護現場の取材をもとに、介護の仕事の大変さ、そしてやりがいや喜びもリアルに描かれている

観終わった後、きっと
気持ちの変化に驚くはず

原案も手掛がけたエグゼクティブプロデューサーの山国さんは、この作品を作る以前、「認知症になってしまったらもう終わり」「看取りは最悪な仕事」と考えていたという。「介護の仕事を映画で魅力的に伝えたい」とこの作品を企画した本人でさえ、先入観を持ち、大きな誤解をしていたのだ。しかし、介護施設などへの取材を続ける中で、介護へのイメージは大きく変化したという。

山国さん自身のこうした変化は作品にも生かされており、登場人物の「介護の仕事や認知症に対する先入観」が少しずつ変わっていく姿が描かれている。例えば、認知症である敬子が「みなさん」に通うようになって、それまで厄介者扱いをしていた家族の気持ちが次第に変化する。また介護の仕事に不安を感じていた圭も、「みなさん」で働くようになってから、本気で仕事に取り組むようになっていく。

この作品を観る人も、作品の登場人物の変化を通して、自分自身の先入観や、介護への認識が変わったことに気付くのではないだろうか。介護の仕事についてや、家族や自分が直面することになる介護について考える機会にもなるはずだ。▲主人公・圭と認知症である利用者とのやり取りを通じて、介護の仕事や認知症に対するイメージが変わっていくはずだ

2017年10月からは自主上映会も各地で開催

「ケアニン~あなたでよかった~」は現在、全国順次公開中。また、2017年10月からは、誰でも自主上映会の開催が可能になり、市民ホールや公民館、学校、会議室なども含め、時間をかけて全国の隅々まで「ケアニン」上映の輪を拡げていくことを目標としているという。

★★HELPMAN Point!★★

作品のクライマックスには、圭にとって大きな試練が訪れる。彼がこれからもケアニンとして生きていくか否かを選択する、とても重要な場面だ。利用者や先輩のケアニンたちとの交流を通じて、圭がどのように壁を乗り越えていくのか注目してほしい。

「いままでずっとつき合ってきた、おじいちゃんやおばあちゃんの最期の瞬間に一緒にいられないというのが、たぶん、われわれ介護職にとってはいちばん辛いこと。僕らの仕事は、最期の瞬間まで立ち会わせてもらう、もしくは家で亡くなったときに僕たちも呼ばれて、ご家族と一緒に、『おじいちゃんがんばったよね』という話をしたり、おじいちゃん自身も、それまでできるだけ楽しく過ごして、認知症であろうがなかろうが『オレの人生悪くなかったな』と最期に思っていただくようなことだと思っています」

このように語るのは、本作の介護施設のモデルとなった「おたがいさん」(神奈川県藤沢市)を運営する加藤忠相さんだ。介護職であるケアニンの理想の姿とは、ただ「介護する人」ではなく、利用者にとって“同じ空間で一緒に生きるもう一つの家族のような存在”ではないだろうか。実際に、自分の家族が認知症になり施設に預けるとなると、周りから「冷たい人」と思われるかもしれない、と不安を感じる人は多い。しかし、作品中の小規模介護施設「みなさん」のように、第二の家族として利用者に寄り添う施設なら、後ろめたさを感じずに大事な家族を託せるはずだ。

本作に込められた思いは、「自分は尊い仕事をしている」と胸を張るケアニンが一人でも増えること、そして、社会における介護へのイメージが少しでも前向きに変わるきっかけになることだ。それが、日本の介護の未来をよりよいものに変えていく原動力になるからである。


★「ケアニン~あなたでよかった~」
2017年6月17日(土)より全国順次公開中。
公式サイト:http:// www.care-movie.com

【監督】鈴木浩介 【出演】戸塚純貴 松本若菜 山崎 一/水野久美
【原案・エグゼクティブプロデューサー】山国秀幸
【特別協力】加藤忠相(あおいけあ)
【配給】ユナイテッド エンタテインメント
©2017「ケアニン」製作委員会

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