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2014.12.22 UP

かこちゃんが後ろで笑ってるそれならネタにしようと思ったんです

宮崎に住む96歳の母親を東京に呼び寄せ、密着介護する日々を漫画で綴った『めざせ100歳! ミツみっちゃん介護日記』。家族で明るく介護するブログが話題になり、書籍化された本作ですが、自宅介護を始めたころは、不満がたまることもあったそう。しかし、そんな毎日も漫画にすることで、笑えるエピソードになり、自分自身もラクになったと河野さんはいいます。今回は、そんな河野さんと奥様のかこちゃんに、明るい自宅介護の秘訣を伺いました。

「東京に連れてくれば?」の妻の一言で
決まった100歳介護への道

▲河野さんのお母さんのミツみっちゃん。孫のオーパくんにかけてもらったサングラスとニット帽でかっこよくラップポーズ!河野:母親(ミツみっちゃん)を東京に呼んで介護することになったのは、娘(ユニコロ)が20歳の記念に家族写真を撮ろうという日の半月くらい前。父親が亡くなったあと、宮崎で一人暮らしをしていた母親の具合が突然悪くなって、どうしようと言っていたら、「連れてくれば?」と、かこちゃんが軽く言ったんです。

かこ:そもそも、夫と結婚した当初から、母ちゃんは70歳過ぎ。なるべく家族の時間をつくりたくて、夏休みや冬休みは2~3週間、宮崎に帰って掃除したり農作業したりという生活でした。夫も普段から月に1週間くらい母ちゃんのところへ通う生活を何年もやっていたので、今のこの時間は、その延長。言ってみれば、オマケの時間なんです。

河野:でも、一緒に暮らし始めたら結構、大変。はじめは、便秘が続いたり、風邪をひいたりのちょっとした体調の変化にも、いちいち慌てていました。

かこ:そうね、ほんとに笑っちゃうくらい。私は小学校の保健の先生をしていることもあって、「それくらい大丈夫」というのがわかるんですが、夫は慌てる。それを見て、「あ、マジなんだ」と思ったりしていました(笑)。

河野:僕一人で、「ほんとに大変」となっているのを見て、かこちゃんは笑ってる。絶対に寄り添わないんです。「昼間働いてるから、看れなくてごめんね」というのはまったくない。それどころか、むしろ上から見てる!

かこ:ハハハ(笑)。

視点を変えれば介護はネタになる
重くならないのが自宅介護の秘訣

▲介護が実践されている自宅で著者の河野やしさん(写真左)と奥様のかこちゃん(写真右)に話を聞きました!河野:「今日、僕は母ちゃんにこうしてあげたのに、母ちゃんは逆にこんなことして!」と怒ってるのを見て、笑うんです。そのうち、そんなに笑えるんだったら、漫画にしていけばいいなって思ったんです。

かこ:視点が変わったみたいです。

河野:今日はここをネタにしようって思えるようになって、気持ちがラクになりました。やっぱり、家族の中で、違う視点で見てくれる人がいるっていうのが大事。それで気持ちが中和されて、高ぶっていた感情も治まって、また介護できるんです。二人とも気が重くなっていたら、自宅介護はできなかったかもしれません。

かこ:娘も息子も含めて、うちらは介護に巻き込まれていません(笑)。子どもたちは、幼いころから母ちゃんとよく会ってたから、今も自然に暮らしています。息子は一人暮らしをしていますが、帰ってきたときは、いつも母ちゃんの隣にいます。この前も、帽子とサングラスをかぶせて、「ラップみっちゃん」だと言ってました。母ちゃんは、ちょっと天然なところがあって、そこも面白いんです。年をとってボケてるわけじゃない。

河野:あと、僕は家で仕事してますけど、介護をやるとなると、セーブしなきゃいけない部分も出てくる。そうやって減らした分は、かこちゃんにがんばってもらわないと。かこちゃんには経済的にも支えてもらってるから、息抜きも結構かなと思ってます。

かこ:私は非常事態のときのピンポイント介護。あとは、母ちゃんがおしゃれにこだわりがあるので、洋服を作ったりね。

父親を看取れなかった思いが
母ちゃんの自宅介護につながった

▲河野さんの書斎兼ミツみっちゃんの寝室。24時間の密着介護の現場でもある河野:僕が自宅介護をしてるのは、父親のときの苦い経験があるからなんです。88歳のときに、突然、肺炎で入院して、そのあと動脈瘤の手術をして、次はぜんそく。人工呼吸器をつけて、どんどん弱っていくのを見て、最後は昏睡状態になって、呼び出されたときにはもう亡くなってた。最後まで看取れなかったんですよ。

かこ:母ちゃんも入院が嫌いだしね。先日、デイサービス中に母ちゃんが吐血してしまって、そのまま救急車で運ばれて、入院することになったんです。本人も病院は嫌いだし、目標が自宅介護だから、退院できなかったら、どうしよう。いつもは自宅で歩かせたりして、いい状態を保ってるのに、1週間でも寝たきりになると、どうしても悪くなる。困ったな、と。

河野:早く病院を退院できるように、作戦会議をしました(笑)。

かこ:幸い状態がよくて、1日で退院できた。もう「やったー」って、みんなで拍手でした。

河野:結局、僕は自宅介護することにしたけど、母親が「入院してもいいよ」って言ってたら、そうしてたと思うんです。介護する人が何を思っているかというと、自分が面倒を見たいっていうことだけじゃないですか。だから、そこは精一杯やりたいと思ってるんです。

かこ:よく言うのは、「いくら亡くなってから墓参りしても、何の意味もないよね」と。生きてるときに一緒にいてなんぼだろうっていうのがあって。

目標をつくることで
介護のモチベーションを維持

▲お気に入りのぬいぐるみを持ってハイ・チーズ。写真のときは、なぜかおすまし顔になるミツみっちゃん河野:僕は毎日を笑いにはしてるけど、介護は面白いわけじゃない。でも、母親がそばに来てくれるとなったときに、愛おしかったんです。僕は、長男だけど末っ子で可愛がられて育って、母親とは気持ちがべったりだったので。

かこ:半年後、母ちゃんが元気かどうか、わかんないもんね。

河野:今の目標は、2月の100歳のお祝いです。介護ってなかなか見通しがきかない。いつまで続くんだろう、となります。でも、目標を置いておくといいかもしれませんね。今は、「100歳までは何としても生かすぞ」って思ってます。

かこ:「100歳を越えたら、次の目標は何にする?」って、もう考えてますけど(笑)。

河野:いや~、きついきつい(笑)。

かこ:まあ、病気がよくなるとかそういう状態ではないですからね。だんだん弱っていくのが当たり前なので、どうやってモチベーションを下げないで楽しくやっていくか。悪くなるときは一気に悪くなることも考えていますし。いい最期だったら、それこそ「やったー」って思えます。

河野:これから寒くなるから、がんばって乗りきってもらわないと!

かこ:「四国や九州からお姉さんたちが来るよ」って言ったら大丈夫。エサをブラ下げたらきっと乗りきれるよ!

――やしさん、かこちゃん、どうもありがとうございました!


★『めざせ100歳! ミツみっちゃん介護日記-母ちゃんが“サナギ”になる日まで』
価格:1,000円+税
【著者】河野やし 【発行】自由国民社

(内容紹介)
96歳の母親を介護することになったイラストレーター河野やしさんの介護奮闘記。

宮崎に住む母が突然倒れたのを機に、東京に住む息子・河野さんが自宅で介護することに。自宅で仕事をしていた河野さんは、同じ部屋で介護をしながら働き、夜が来れば、その部屋で共に寝る。家族のピンポイント介護にも支えられながら、密着介護の日々が始まり…。▲『ミツみっちゃん介護日記』の1ページ。写真と見比べると3人ともそっくり!

【文: 岡本のぞみ(verb) 写真: 成田敏史(verb)】

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