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ヘルプマン

2013.09.28 UP

最上の時間を過ごしていただくために

大学では総合正政策学科で、社会保障論などを学んでいた大川 朝美さん。偶然、施設見学に訪れた老人ホームで、ホテルのような内装や地域に開かれたフレンチレストランに驚かされました。経営陣の「地域コミュニティの場をつくりたい」という考え方に興味を覚え介護業界へ。プロのサービス提供者として本当に良いものを届けたいと試行錯誤中です。 (※この記事は2012年以前のもので、個人の所属・仕事内容などは現在と異なる場合があります)

いい意味で裏切られた施設見学

学生時代は、まさか自分が社会福祉法人で働いているなんて、少しも想像できませんでした。大学では総合政策学科に属し、社会保障論などを勉強していました。人材教育に興味があったので、コミュニケーション能力を高めるための有料の講座に通ったり、社会人の研修に参加したりもしていました。そのまま行けば、塾の講師や職員に進路を決めるところだったのですが、就職サイトでたまたま見つけた、伸こう福祉会の「前例がない、だからやる」「世界に通用する介護サービスへの挑戦」という姿勢になんとなく心惹かれてエントリーをしたのがきっかけで、私の進路は大きく変わりました。

「それだけ大きなことをいうならば、一度見てみよう」と、半信半疑で「クロスハート栄・横浜」に施設見学で訪れた際には、今まで抱いていた老人施設のイメージとは真逆の、ホテルのような内装・調度品の数々、地域に開かれたフレンチレストランがあることに驚かされました。さらに、経営陣と話をする機会があった中で、当時の本部長が話していた「いつか介護施設と保育園を融合させた地域コミュニティとしての場所を実現したい」という志に大きく心を動かされ、いつの間にか、伸こう福祉会のスタッフとして、4月を迎えていました。

事業の全体像を学んだ1年目

入職後は事業全体を理解するため、ローテーション人事で各部門を経験しました。最初は横浜市の委託事業である「地域ケアプラザ」で、地域に開放している貸室の管理やイベントの手配などの運営事務を行う地域サブコーディネーターを3ヵ月担当し、次にISO9001(品質マネジメントシステムの国際規格、福祉施設の認証取得は伸こう福祉会が日本初)の責任者のアシスタントとなり、よりよいサービスを提供するための仕組みづくりに取り組みました。

例えば、ご利用者様が施設内で転倒するといった事故が発生した場合に、各事業所のスタッフがその再発防止に向けて、介護の見直しや設備の改善にどう取り組み、実際にどういう成果を上げたかといった報告書をまとめたり、各事業所共通の安全管理マニュアルを整備し、全社での運用の徹底を図ったりなど、サービスの品質管理全般について見直すことで、その重要性について学ぶことができました。

言葉ではなく心で会話する

2年目からはいよいよ現場に配属、特別養護老人ホーム「クロスハート野七里(のしちり)・栄」のショートステイ(短期入所)のチームの一員として、ご利用者様と直接接する仕事に就きました。初めての経験で、あせったり、戸惑ったりすることが多い毎日の中、特に印象に残っていることは、ある40代のALS(筋萎縮性側索硬化症・筋肉が萎縮し首から下が動かなくなる難病)の男性との出会いです。ご高齢の方が多い施設のため、どうしても他のご利用者様と話が合わず、初めのうちはほとんど声を聞いたことがありませんでした。発音が困難な状態だったことも、理由の一つだったと思います。

ご家族様からは楽しいことが好きだと伺っていたので、「何とかして、この施設でも楽しんでいただきたい」と、相手の表情や口の動きから伝えてくださっている内容を読み取り、興味をお持ちのプロ野球の話題を挙げるなどして、少しずつコミュニケーションの量を増やしていきました。心がほどけてくると、「自宅ではストローでビールを飲んでいるんだよ」「子どもがかわいくてね」とご利用者様のほうから話を聞かせてくれるようになりました。病気の進行が進み、ほとんど会話ができないようになってしまってからも、視線の動きなどから、望んでいることを読み取ることに努めました。この方からは、相手の望んでいることを言葉だけではなく、仕草や表情で理解することの大切さを教えていただきました。

親しさとなれなれしさは別物

ご利用者様と接する時に気を付けていることは、あたり前のことですが、自分たちがプロのサービス提供者であることを忘れないことです。ご利用者様と日々接していると、「もっと親しくなりたい」という気持ちが強くなり、親しみを込めた表現のつもりで丁寧な言葉使いを忘れてしまいがちです。

しかし、いくら親しさは感じていたとしてもご利用者様はお客様であり、人生の大先輩でもあります。知らぬ間にご利用者様の気持ちを踏みにじらないようにするため、尊敬の心を込め、敬語で接することを心がけています。また、移乗の際の力加減や痛みのない介助など、安心して体を預けていただける技術・体力を目指し、法人内外の研修プログラムを通して勉強しています。

「介護オタク」になるな

仕事の経験を積むうちに、ついつい私たちは、いかにスピーディに業務をこなすかといったことに躍起になったり、逆に特定の個人に入り込み過ぎて思い悩んでしまったりといった「介護オタク」に陥りがちです。すべてが悪いことだとは思いませんが、それでは、本当に良いものを多くの方々に提供することはできません。

「介護もひとつのビジネス」であることを忘れずに、常に顧客満足を目指します。当面は、相談員へのステップアップを目指して、ご利用者様やそのご家族様の要望をどんどんお聞きして、現場に取り入れていく役割を担っていきたいと考えています。

将来は介護と保育を融合した、より裾野の広い、かつ地域に開かれた施設をつくることが私の夢。
地域の人が気軽に立ち寄り、ご利用者様や園児と一緒にイベントを楽しんで仲良くなれるような、そんな施設が私の理想です。

大川さんからのメッセージ

「身近で介護をした経験がない」「専門的なことはわからない」といった理由で、介護の世界に進むことに二の足を踏んでいる方がいるかもしれません。でも、そんな心配は無用です。むしろ、フレッシュな視点で介護を捉え直して、新しいことに一緒に取り組んでもらいたいと思います。

私は大学でゴスペルをかじっていたこともあり、デイサービスのアクティビティで「アメイジング・グレイス」や好きな70年代の洋楽を歌ったりしています。そんな些細なことからでも、施設の運営に新風を吹き込むことができるはずです。

【文: 高山 淳 写真: 山田 彰一】

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