facebook
twitter

最新トレンド

2021.03.24 UP

介護の仕事体験を通じて、「楽しい介護」を広めていく。「ケアサポートセンター」パビリオン

こども達が、さまざまな職業体験を通して、楽しみながら社会のしくみを学ぶことができる「キッザニア甲子園」。介護福祉士の仕事が体験できる「ケアサポートセンター」パビリオンが2020年7月にオープンした。介助リフトや車いすを使う体験では、こども達はもちろん、保護者からも大きな反響を得ているという。オフィシャルスポンサーとしてパビリオン出展に取り組む一般社団法人日の出医療福祉グループの代表理事・大西壯司さんと、プロジェクトの中心を担う代表補佐・搆忠宏さんに、介護業界のイメージを変革する新たなチャレンジについてお話を伺った。

創業120周年を迎え、地域と介護業界全体に貢献したいと考えた

一般社団法人日の出医療福祉グループは、医療・介護・保育サービスを提供し、地域社会に貢献することを目指す共同事業体。母体は、「日の出みりん」をはじめとする調味料・料理酒などの製造・販売を手掛けているキング醸造株式会社。創業90周年の際に、『これからの時代の地域への恩返し』として特別養護老人ホームを開設したことが、日の出医療福祉グループの始まりだった。


▲一般社団法人日の出医療福祉グループ、代表理事・大西壯司(おおにし・たけし)さん。「キッザニアで介護福祉士を体験したこども達の中から、将来、介護職に就く人がたくさん出てきてほしいですね」と話す。

「2020年に創業120周年を迎えるにあたり、私たちが取り組むべきことは何だろうか、と考えました。後期高齢者が大幅に増加する2025年問題では、250万人の介護人材が必要となりますが、現状では38万人不足する見込みとなっています。私たちはこれまでも介護人材の育成に注力してきましたが、介護業界は全般的に人材確保が難しい状況にあります。介護の仕事の魅力を発信していくことで、『ひとつの職業の選択肢』として介護職の認知を広めていこうと決めたのです」(大西さん)


▲パビリオンのオープニングセレモニーの様子。※演出の都合上、一時的にマスクを外しております。

パビリオン出展に至ったきっかけは、兵庫県の介護領域担当者からの「キッザニア甲子園に出展してみては」という助言だった。兵庫県には中学生を対象に職業体験の機会を提供する「トライやる・ウィーク」というものがあり、日の出医療福祉グループの施設でも生徒たちを受け入れてきた。しかし小学生以下のこども達には介護の仕事を体験してもらう機会がなかった。そこで、県を代表する福祉法人として、日の出医療福祉グループに期待の声が掛けられたのだ。

「介護の仕事の魅力を知ってもらうには、実際に体験してもらうことが一番だと考え、キッザニア甲子園への出展を決めました。3歳から15歳のこども達が、介護福祉士としての体験を通して介護や介助への理解を深めながら、『将来、なりたい職業』のひとつとして認識してもらうことを目指しています。」(大西さん)


▲キッザニア甲子園にオープンした「ケアサポートセンター」パビリオン外観

 

「楽しい介護」を切り口としたパビリオンを目指した

キッザニア甲子園に出展する際、プロジェクトの中心を担ったのは、同法人の代表補佐を務めている搆さんだ。2020年7月のオープンに向けて、どのようなプロセスを踏んだのだろうか。


▲一般社団法人日の出医療福祉グループ、代表補佐・搆忠宏(かまえ・ただひろ)さん。パビリオンのデザインや製作はキッザニアのスタッフが担当したが、機器の選定は介護の現場で活躍しているチームメンバーが行い、細かな部分まで何度も打ち合わせをしたという。

▲パビリオンのスタッフから介護の仕事の説明を受けるこども達。介助リフトや車いすの使い方だけでなく、安全に介助を行うための注意点や、声掛けをはじめとする相手に対する配慮の大切さなども伝えている
約35分間のアクティビティで、「楽しい介護」「優しい介護」「明るい介護」を体験しながら、介護の仕事への理解を深めてほしいという思いがあった。

「こども達に体験してほしいポイントを『高齢者や障がい者の姿勢を知る』『介助リフトを使って、ベッドから車いすへの移乗介助』『キッザニアの街に出て車いすによる介助』の3つに絞りました。最初に専用キットを使って高齢者や障がい者の姿勢を疑似体験し、介護される人の気持ちを理解したあと、最新の介助リフトを使った移乗介助を体験します。介護業界では、介護ロボットやITなどの導入が進みつつあるので、未来の介護がイメージできるようなワクワク感も体験できます。さらに、3歳から15歳まで幅広い年齢層を対象とすることを踏まえ、車いす体験では“乗る側”と“押す側”を交代しながら触れ合いを楽しみ、感謝される喜びを味わうことができます。車いすでキッザニアの街に出ることで周囲から注目を浴びるため、それもまた介護の仕事を誇らしく思える機会にもなるようです」


▲最新の介助リフトを使って、ベッドから車いすへの移乗介助を体験。


▲体験終了後、写真入りの「介護福祉士認定証」を持ち帰ることができる。

多くの反響に介護職の可能性を実感

日の出医療福祉グループが出展する「ケアサポートセンター」パビリオンには、2020年7月30日のオープン以降、これまでに多くの反響があった。

「予想以上の反響に、第一歩としては十分な手応えを実感しています。また、来場者の皆さんが、私たちが想定していたこととはまったく違う視点を持っていることに驚きました。例えば、5歳の男の子は、体験終了後に『いつでもパパとママをお家まで運べるよ。車いすは僕に任せてね』と笑顔で話していました。最初は緊張している様子でしたが、実際に仕事をしてみると『介護福祉士の仕事ってとても大切な仕事なんだ』と、達成感にあふれた表情をしていました。介護の仕事の魅力を広めていくことに可能性を感じましたね」(大西さん)

他にも「ここに来るまでは介護のイメージって難しいものだったけど、声を掛けることも介護や介助になると分かったから、これからはどんどん困っている人に声を掛けていきたい」(14歳/男子)など、さまざまな声があったという。


▲車いす体験風景。「この車いす、とてもかっこいい! 早く体験したい」(8歳/男子)など、こども達の想定外の視点にも驚いたという
保護者からも、「ユニフォームも部屋も明るくて、雰囲気がとても楽しいですね! 私もやってみたいです」(13歳/女子の保護者)などの声があった。

また、介護職に就いている保護者からは「介護福祉士として働いていますが、なかなか仕事を見せる機会がないので、絶対にこどもに体験してもらいたかった。少しでも自分の仕事を見てもらえたようでうれしいです」(5歳・6歳/男子の保護者)、「私の職場にも介助リフトを導入したいんです。(娘が仕事体験したときの)動画を撮ったので職場の仲間に見せます」(7歳/女子の保護者)などの声が。同法人で働く介護スタッフからも、「自分の仕事をこどもに知ってもらえることに喜びを感じた」という声があったという。

「キッザニアへのパビリオン出展を計画していく中、介護の仕事の魅力を伝える難しさを感じましたし、正直、私たちには『介護職はネガティブなイメージで捉えられがちだ』という固定観念があったと思います。しかし、出展してみた結果、こども達は非常にポジティブに楽しんでくれていることを実感できました。今後は反響を踏まえながら、よりワクワクできる内容へと変化させていきたいですね。また、介護世代となる保護者の方たちから見ても『楽しいね』『かっこいいね』と思えるような提案を目指すことが大事だと考えています。介護の未来のあり方を提示しながら、保護者とこどもの双方に『介護職は楽しく、やりがいがあり、イキイキ働ける仕事なのだ』と感じてもらえるよう、バージョンアップを続けていきたいと思います」(搆さん)


▲キッザニア甲子園には、ケアサポートセンターのほか、警察署、すし屋、銀行など約60パビリオンがあり、約100種類の仕事やサービスが体験できる。
キッザニア甲子園の「ケアサポートセンター」パビリオンを、将来的には、アクティビティ、導入機器も再検討し、現在、国が推進しているIT・ロボットなども最先端のものを導入していく予定だ。

最後に、大西さんに今後の展望を伺った。

「私たちは、“日の出プライド”として、『お客様のよろこび 社員のよろこび 地域のよろこび』という理念を掲げています。キッザニアへの出展は、地域公益活動であり、まさに『地域のよろこび』に貢献する活動と考えています。職員のこども達がキッザニアで介護福祉士の仕事を体験し、その仕事の大切さを理解してくれることは、『社員のよろこび』にもつながる。そして、キッザニアでの体験によって、こども達が介護の仕事はお客さまに感謝される仕事、つまり、『お客さまのよろこび』になる仕事であることを知り、『将来、なりたい仕事』のひとつとして意識してくれるようになることを目指していきます」

【文: 上野 真理子 写真: 一般社団法人日の出医療福祉グループ 提供】

一番上に戻る