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2018.03.08 UP

「あるある探検隊」でおなじみのお笑いコンビ 介護資格を取得し、地域と介護の橋渡し役に

「あるある探検隊」のネタで、10年以上前に大ブレイクしたお笑い芸人、レギュラー。2014年にコンビで介護職員初任者研修の資格を取得した後、介護業界を盛り上げる活動を開始した。介護イベントや地域の祭りなどの場で講演活動を行い、持ちネタを活用したレクリエーションなども紹介している。芸歴20年、お笑いを生業とする二人が、なぜ介護の世界に関心を持つようになったのか、実際に現場を見てどう思い、これからどんなことをしていくのか。松本康太(写真左)さんと西川晃啓さん(写真右)にそれぞれの思いを伺った。

介護を学ぶきっかけになった
介護施設でのボランティア

最初に介護業界に関心を持ったのは、松本さんだ。さかのぼること10年、まさにレギュラーがブレイクしていた時期だった。

「実家では、祖母が骨折して認知症になり、母が仕事を辞めて介護することになったんです。その後、父もがんになって、母が1人で2人を見ていたんですよ。けれど、自分は忙しくて芸能界を探検している最中で、実家にほとんど帰れなかった。大変やっただろうなと思います。その後、仕事が落ち着いたんで、何か勉強でもしようかと考えていたところ、『そういえば、介護のことを何も知らんかったな』と思い出しまして」(松本さん)

そんな中、松本さんは吉本興業の先輩、次長課長の河本準一さんの声掛けで、岡山県の施設を慰問するボランティア活動に参加したという。

「あるある探検隊のネタをやったらおじいちゃん、おばあちゃんがみんな手拍子してくれて。みんなから『まっちゃん、めっちゃ年配にウケるね』と言われました。物腰が柔らかいから好かれるだろうし、持ちネタを使えば手の運動もできるから本格的にやってみたらというんで、じゃあ勉強してみようと」(松本さん)

「レギュラーの2人は年配の人たちにも愛されるという意味で色が似てるし、コンビ芸の方が見やすいはず」と周囲から言われ、一緒に介護を勉強することになったという。

「番組の企画で1年間、宮古島に暮らした後、道で年配の方から『西川くん!』と、よく声をかけられるようになっていたんです。漫才で老人ホームのネタもやってましたし、向いているのかなと思いましたね。ちゃんと知識を得ることから始めて、お笑いと介護でコラボできたら面白いことができるんじゃないかと考えました」(西川さん)

まずは介護職員初任者研修の資格を取得しようと決めたが、折しも夏休み期間であり、芸人にとっては営業活動の繁忙期。その上、松本さんの知人が紹介してくれた介護の専門学校は千葉県にあるため、仕事をしながら2カ月間通い続けることは難しかった。

「当時のマネジャーに相談したんですよ。『申し訳ないですけど2カ月空けてもいいでしょうか』とお伺いを立てたら、『仕事1件も入ってないから大丈夫』って。おかげで、フルで通うことができました(笑)」(松本さん)

「でも、『これから介護はどんどん必要になるから、学んでもらえるなら吉本にとっての財産になります』って言ってくれはったんですよ。ありがたい話ですよね」(西川さん)

▲行進するように大きく腕を振る持ちネタ、「あるある探検隊」を介護レクリエーションに活用していると話す2人

資格取得の学校に行って初めて知った
「介護は自立を支援する仕事」

130時間に及ぶ介護職員初任者研修の講義を受ける中、松本さんは、「自分たちより上の世代の受講者が多く、若い人は数人しかいなかったのが意外だった」と話す。

「ただ、僕らも講義の最初のころ、『介護は手助けじゃなく、自立支援』と言われて、『えっ?』と驚きました。だって、介護って『歩けないお年寄りを助けてあげるもの』っていう認識だったんです。そしたら、サポートしていくものだと分かった。何も知らん人からすれば、『足が痛いおばあちゃんに歩けなんて、介護業界はひどい』って思うかもしれません。だから、介護って、本人が歩けるようになったり、食べられるようになったり、自立できるように支援するためのものなんやってことを、僕らがちょっとでも分かりやすく伝えられたらなって思いましたね。若い人にも、ポップなお笑いでなら伝えることができるんじゃないかなと」(松本さん)

一方、西川さんは、介護業界に暗いイメージを抱いていたが、実際にはまったく違うと感じたという。

「講義内容自体が、面白かったですね。暗いニュースばかり流すから暗いイメージを持ってしまうわけで、みんな実態を知らんだけやと思うんです。実際、みんな暗くない。先生と介護福祉士さんの話では、仕事で大変な思いをすることもあるけど、ご利用者さんからの『ありがとう、助かったよ』という一言で苦労も全部なかったことになる。それ聞いて、やっぱりそういう喜びは大事やなと。認知症の方もちゃんと『この人、自分のためにやってくれてはる』って分かってくださっているんですよね」(西川さん)

しかし、研修を終えるまでの間に、自分たちはやはり芸人であり、施設に行ってケアすることはさすがに難しいと感じたという。

「勉強したことでそれに気付いたし、僕らの本業も、やりたいことも、やっぱりお笑いですから」(松本さん)

▲2017年10月9日にサンメッセ香川にて行われた地域イベント「かがわ介護フェア」に出演。トークショーで会場を盛り上げた

介護施設のレクリエーションを見学
斬新な企画やツール活用にイメージが一変

2人は、これまでに5〜6人の小規模デイサービスでネタを披露したり、病院の見学をしてきたが、ここでも想像していたようなイメージとはまるで違うことに驚いたという。

「デイサービスの施設を実際に訪問するまで、『レクリエーションの時間は、めんこやベーゴマなどの昔の遊びをやっているのかな』と思ってました。ところがそれも全然違っていて、節分に訪問した施設では、豆まきを今風にアレンジしていました。ラジコンに『進撃の巨人』のお面を着けた筒を立てて、チーム対抗でそこにボールをぶつけるゲームで、アニメの主題歌を流しながら、『巨人を倒せ!』って盛り上がっていたんです。いまの世代の若者が企画を作って、お年寄りも一緒に夢中になって、皆さんすごく楽しそうなんです。介護施設のイメージがガラリと変わりましたね」(松本さん)

また、西川さんは今時のデジタル・ツールを上手に取り入れている施設にも衝撃を受けたと話す。

「ご年配の方がスカイプを使って、系列の幼稚園の子どもたちと会話している姿にも驚きました。1人につき2人のお子さんを受け持つ仕組みのようで、定期的にスカイプを通して会話しながら、1年間、その成長を見届けているんです。ツールまで使いこなして、えらい今風やなと感心してしまいました」(西川さん)

介護の現場に踏み込んでみれば、それまで自分たちが抱いていたアナログなイメージとはまったく違う世界があったのだ。

「僕らも実際に行ってみて初めて知ったことです。介護をよく知らない人たちに、本当の姿がちゃんと伝わったなら、『介護は面白いことができる仕事』っていう興味を持ってもらえるはず。若い人も楽しみながらいろんなことができるって分かると思うんですよね」(松本さん)

▲医療手袋の会社が主催した看護学校の学生に向けたセミナーイベントにも出演。「教える立場ではないから、『介護あるある』をみんなで考えてもらって、発表してもらいました」と話す松本さん

ご利用者さんに楽しんでもらうためには
その場全体を盛り上げていくことが大事

松本さんは、初めて河本さんとボランティアで介護施設を訪問したときに、歌やリズムに対する可能性を感じたという。

「ネタに全然反応してもらえなくても、歌には反応されるんですよ。河本さんが『愛燦燦』を歌ったら、皆さん口ずさんでいたので、歌の力ってすごいなと感じました」(松本さん)

そして、介護職員初任者研修終了後、レギュラーの2人で小規模デイサービスを訪問。当初は、ネタを披露してもあまり盛り上がらなかったという。

「施設を数回訪問するうちに気付いたんですが、レクリエーションって空気づくりがすごく大切なんです。介護スタッフの方も含め、その場全体が盛り上がると、ご利用者さんも積極的に参加して、コミュニケーションを楽しめるようになるんですね。だから、ご利用者さんだけでなく、その場にいるみんなが楽しめる内容にしようと心掛けています」(松本さん)

▲幕張で行ったモーニング寄席にも出演。高齢者のお客さまが多いこともあり、話のテンポを若干落とした。「キャラで許されるところはあるものの、年配の方へのツッコミはどこまでやっていいものか判断が難しいですね」と西川さん

介護の世界と地域社会の
橋渡しとして活動していきたい

今、2人が目指しているのは、介護イベントや地域の祭りなどを通じて、多くの人に介護の世界を知ってもらうことだ。

「資格取得の勉強をしている時期、偶然、老人ホームのお祭りに出演する機会をいただきました。そこにはおじいちゃんもおばあちゃんもそのご家族もお子さんもいて、みんな漫才で笑う和やかな空気感のおかげで、ご利用者さんも一緒に盛り上がり、『あるある探検隊体操』も踊ってくれました。イベント終了後も、おじいちゃんとお子さんが触れ合っていたり、みんなが話題にしていて、これが一番の理想形やなと思いました」(松本さん)

現在の活動内容は、主に介護イベントや自治体のイベント、地域の祭りへの出演だ。2〜3カ月に一度は、そうした場でネタを披露し、介護に関心のある人、また一般の人向けに、認知症のことや症状による対応方法など、自分たちが学んだことを伝えている。また、介護は楽しみながらできると思ってもらうため、「あるある探検隊体操」や「ハイ、ハイ、ハイハイハイ!」のリズムに合わせて右手と左手の動きを変えるなど、独自のレクリエーションも紹介している。

「地域の人たちに、健康寿命を延ばすことの大切さも伝えていきたいですね。若者からお年寄り、要介護の方や介護に疲れてしまった方も、明るく楽しいムードで巻き込んでいけたらと思います。レクリエーションを介護予防に役立てたり、在宅介護のコミュニケーションで試したりしてもらえたらと。あるいは、家族で介護について会話するきっかけになったり、お孫さんやお子さんがおじいちゃん、おばあちゃんに会いに行く口実になったらいいなって思うんです。自分らにもやる場があって、携わる人にもプラスαになる場を作っていきたいです」(松本さん)

「僕らが出演するからイベントに足を運んでくれる方もいるので、ネタや介護レクリエーションを通じて、これまで介護の世界を知らなかった人たちにも興味を持ってもらえればと思っています。それと、親しみやすさを生かしながら年配の方にも普通に突っ込める空気が作れたらと。介護される側とする側で線を引かず、自然に一緒にいられる未来につながるといいですね」(西川さん)

現場で働くスタッフのような体験はできないし、講演を行うほど造詣が深いわけでもない。しかし、介護を深く知らない人と同じ視点を持つ一方、資格取得で学んだ介護知識もある。そして、世の中を明るくしていきたい思いと、人を楽しませるネタを持っている。レギュラーのお2人には、これからも介護業界の関係者とはまた違うお笑い芸人ならではのスタンスで、介護の間口を広げていくことを期待したい。

▲2017年11月5日に新潟県長岡市で行われた「福祉・介護・健康フェア2017 in 長岡」に出演した時の様子。福祉・介護・健康にまつわるイベントで、毎年実施されている

【文: 上野真理子 写真: 四宮義博】

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