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2022.02.02 UP

「必ず笑わせる!楽しませる!」 よしもと芸人たちが提供する「お笑い」×「介護レクリエーション」の効果/よしもとお笑い介護ブ~オンライン~(吉本興業)

「あの人が笑っているのを初めて見た」「あの人があんなにお喋りするなんて」――介護施設スタッフから、そんな驚きの声が寄せられるのが、吉本興業所属の芸人・タレントが提供する介護レクリエーションプログラムです。

「笑い」と「介護レク」を融合させ、オンラインも活用して脳活・音楽レク・体操レクなどを展開中。
先駆けであるレギュラーのお二人と、2021年に発足した「よしもとお笑い介護ブ!」のメンバーの皆さんに、介護レクへの思いや手応えを語っていただきました。

<参加メンバー>
レギュラー/松本康太さん(上段左)・西川晃啓さん(上段右)
span!/水本健一さん(下段左)
もぐもぐピーナッツ/うっほ菅原さん(下段右)・ばっしーさん(中段左)
オスペンギン/でれすけさん(中段右/右側)・山中崇敬さん(中段右/左側)
上原チョーさん(中段真ん中)
サトウヒロコさん(上段真ん中)

「おじいちゃんおばあちゃんに笑ってもらえるのが楽しい!」芸人たちがブカツに集結

――最初に介護レクリエーションを始めたのは、「あるある探検隊」ネタでおなじみのレギュラー松本さん、西川さんなのですね。どんなきっかけで「介護」に注目されたのでしょう?

松本・西川(レギュラー) 僕らデビュー当時から、舞台を観に来てくれたり、営業に行ったときに盛り上がってくれたりするのは上の年代の方々だったんです。それで、「高齢者の皆さんにも失礼のないように勉強しよ」と、2014年に介護職員初任者研修修了の資格を取得して、活動を始めました。
介護施設の方から「介護には笑いが大切だけど、介護現場には『お笑い』がない。何かやってください」と言われたことも大きなきっかけでした。


――2021年にスタートした「よしもとお笑い介護ブ!」はどのようにして生まれたのでしょうか?

水本(span!) 僕が部長として立ち上げました。もともと、おじいちゃんおばあちゃんの前で漫才をするのがすごく楽しかったんです。前のマネジャーから「認知症予防などの知識をつけて漫才に取り入れたら」と提案を受けて、「レクリエーション介護士(以下、レク介護士)」資格の2級を取得しました。

これをどう生かしていこうか考えて、目をつけたのが、よしもと部活動プロジェクト「ブカツ!」です。これは、吉本所属の芸人・タレントが趣味や特技の部活動に参加し、その経験を芸に生かしていくもの。
このひとつとして「介護部」を提案し、「よしもとお笑い介護ブ!」の設立に至りました。
メンバーは現在30名ほどに達し、皆、介護レク資格2級を取得。YouTubeチャンネルでオリジナル介護レクリエーションの動画を発信したり、介護施設でレクを行ったりする活動をしています。
レギュラーのお二人には、「最高顧問」的な立ち位置で(笑)、相談に乗っていただいています。

――メンバーの皆さんは、どのような動機で参加されたのですか?

うっほ(もぐもぐピーナッツ) 僕は、おばあちゃん子なんです。92歳になる祖母が通うデイサービスの介護レクに興味を持ったのがきっかけ。お笑い芸人の立場で介護レクができるなら参加したい、いつか自分のおばあちゃんにもできるかな、と思いました。

ばっしー(もぐもぐピーナッツ) 僕ら「千葉県住みます芸人」として、千葉を盛り上げる活動をしていて。令和元年房総半島台風の被害地域にボランティアに行かせていただく中で、初めて高齢者施設も訪問しました。ライフラインが止まって、皆さん疲れていたり落ち込んでいたりしたけど、レクの時間はすごく楽しんでくれた。その雰囲気が忘れられなくて、介護ブ!に参加を決めました。

でれすけ・山中(オスペンギン) 知人に招かれて介護施設を訪問したとき、知識がないながらもコミュニケーションをとりながらレクをしたのが楽しかった。うまくいかない部分もあったのに、「皆すごく楽しんでくれた、ありがとう」と感謝してもらえて……求めていただけるなら、もっと専門知識を増やしていろいろなことができるようになりたいと思いました。

上原 僕は「栃木県住みます芸人」です。栃木の担当社員さんが元・介護職で、吉本のSDGs推進を受けて、栃木では「お笑い介護レク」に力を入れよう、と。「RUN伴(ランとも)」(認知症の人や家族・支援者・一般の人がリレーでゴールを目指すイベント)などにも参加するうちに、介護レクへの意識が高まりました。

サトウ 私の活動の軸はミュージシャンですが、もともと介護に興味があり、ホームヘルパー2級を取得。介護施設でアルバイトをしているとき、レクリエーションが長年進化していない現状を知り、音楽を取り入れたレクの提案をしたり、「笑いヨガリーダー」の資格を取得したりしていたんです。介護ブ!ができると聞き、参加しました。

 

お笑い芸人の得意技は、空気を和ませ、コミュニケーションを活性化させること

――お笑い芸人さんが、介護レクリエーションを行うメリットや効果とは?

松本(レギュラー) 介護レクって、失敗するのを嫌がって参加しない方が結構多いんです。「恥ずかしい思いをしたくない」と。でも、僕ら芸人は失敗や間違いを「笑い」に変えられる。まず自分たちが失敗して、それを面白おかしく処理することで楽しい雰囲気にできる。だから、気楽に参加してもらえるようになるんです。

西川(レギュラー) ゲームの中に、わざと失敗やボケを盛り込んでいけるんですよね。

うっほ・ばっしー(もぐもぐピーナッツ) 僕たちは草笛を演奏して、曲名を当ててもらうクイズをやってますが、草笛って難しくて、うまく吹けないこともある。その失敗を、二人のやりとりで笑いに変えてます。

松本(レギュラー) 失敗やボケも使いながら、「下の立場から」コミュニケーションをとって関係を築いていくのが、芸人は得意なんです。
一般的にレクをしようとすると、「皆さん、こうしてください」「次はこれをやります」といったように指示・指導をする形になり、「先生」のようになってしまう。やらされ感が生まれてしまう。これはよくないので、こちらが下の立場に立ってアプローチすることが大切やと思います。

だから、レクを始める前のあいさつで、「この辺りのお土産、何がおススメですか」などと質問して、皆さんに教えてもらうようにしています。おじいちゃんおばあちゃんが「先生」、僕らが「教え子」という関係を作った上でレクをスタートすると、積極的に参加してくださいます。

水本(span!) こちらが下の立場に立つことで関係を作りやすい……っていうの、分かります。
僕は「肩幅の広さ」をネタにしていて、相方を肩に乗せたりするんですが、おじいちゃんから「服脱いで見せて」とか言われる。オンラインレクでも、背後に筋トレマシンがあると、「筋トレやってみて」と。で、やって見せると「いーち、にーい……」と数えてくれて。
芸人には、あれこれ無茶も言いやすいし、いじりやすいから、コミュニケーションが活発化しやすいと思います。

上原 僕は持ちギャグの「トゥー」を活用してますよ。大声で「トゥー」と叫んだり、語尾が「と」「つ」で終わる言葉を「○○トゥー」と言い換えたり。このネタをレクの最初に皆さんに一緒にやってもらい、一体感を作ると、手遊びのレクへもスムーズに入っていけるんです。「トゥートゥー体操」というオリジナルレクもあります。
レクの終わりに「ありがトゥー!」とあいさつしたら、皆さん全員で、しかも100歳の方にまで「ありがトゥー!」と返してもらえたときはうれしかったですね。

その施設を半年後に再訪したら、僕が登場しただけで「トゥー!」と声が飛んで。覚えてくださってたんですね。もしかすると普段も「トゥー」を使ってくれているかも。僕自身、移動中に『ガスト』を見かけたら「ガストゥー!」と言ってみたり(笑)、常に「トゥー」への変換を意識してるんで、そんなふうに使ってもらえると脳の活性化にもなっていいんじゃないかな、と。

 

介護レクには、オンラインならではのメリットも多い

――介護レクをオンラインで行うメリットとは? また、オンラインだからこそ工夫していることは?

松本(レギュラー) 実は、オンラインならではのよさって結構あるんです。施設を訪問して介護レクをしていたころは、関東近辺が中心でしたが、オンラインなら全国の施設でできる。
そして、大阪の施設と北海道の施設など、複数施設で同時にもできる。すると「あっちのチームには負けない!」と、チームで競う面白さも生まれます。

あと、画面なら芸人の表情もよく伝わりますね。僕らには「西川君が気絶してもうたー!」って定番ネタがありますけど、西川君の「気絶顔」芸が、画面ならアップで見せられて分かりやすい。
西川君は初めて「可愛い」と言われましたからね、おじいちゃんおばあちゃんから。それで僕も初めて西川君の可愛さに気付いた(笑)。

▲気絶ネタを見せる西川さん(上段右)
サトウ 「画面芸」で、豊かな表情を見せられるのは、確かにオンラインのメリットですね。
半面、画面で表情がアップになっていると、気を抜いて真顔になったとき、怒っているような見え方になりますよね。だから常にニコニコして、楽しそうな表情を見せることを心がけています。驚く場面でも、びっくりした表情をオーバーにするとか。

西川(レギュラー) 画面の見え方を生かせるのは、オンラインならではですよね。そもそも、「画面から自分に話しかけてくる」というところが、利用者さんにとっては新鮮なんやないかな。

山中(オスペンギン) 画面だからこそ、参加していただけた……ってこともありましたよ。ある施設の方に聞いたんですけど、普段は介護レクに誘っても参加したがらず、一人でTVを観ている方が、レクをTV画面でやっているからこそ観てくださって、ニコニコしていたそうです。

でれすけ(オスペンギン) うれしかったですね。ただ、相手が一方的に「TVを観てる」って感覚になっちゃわないように、画面から頻繁に話しかけるようにしてますね。

山中(オスペンギン) ただ二人並んで喋るだけでなく、説明するときに画面の前へ乗り出すとか、「双方向のコミュニケーション」であることが伝わるように心がけています。

 

「あの人があんなに笑うなんて!」施設スタッフからも感謝の言葉が

――介護レクの喜び・手応え、どう感じていますか?

サトウ 私は「笑いヨガ」で正しい呼吸法を体験してもらうレクもしています。コロナ禍でマスクをしていると呼吸が浅くなりがちなんですが、「久しぶりにこんなに息吸ったよ」と言っていただけたのが、すごくうれしかったです。

でれすけ(オスペンギン) 介護レクをした後、その施設のSNSを見たら、僕らがやったゲームをその後も自分たちでやってくださっているようです。楽しんでいただけたんだな、って手応えを感じます。

松本(レギュラー) おそらく他の皆さんも、言われてると思うんですけど……終わった後、施設スタッフさんから「こんなに笑ってる姿、見たことなかった」ってよく言われるんです。「あの人があんなに笑うなんて」とか「あの人、普段はこんなに喋らないんです」とか。

西川(レギュラー) 僕は「介護レク」を特別なものとして意識してなくて、本業に近いことをやってるつもり。楽しく笑ってもらえれば、それでいいですね。
――これから挑戦したいことは?

水本(span!) よしもとには47都道府県に「住みます芸人」がいて、その地域を活性化させる活動をしています。各地域のよさを生かしながら介護レクを広げる役割を担っていきます。
今はオンライン中心ですが、コロナ禍が落ち着いたら、部員全員で全国ツアーをやりたいですね。

松本(レギュラー) 全国のいろいろな施設さんをつないでやりたい。地域ごとに特性があるから、各地の方とお喋りしながら情報を得ていきたいです。

西川(レギュラー) 介護には、「認知症」に関する深刻な問題などもありますよね。重いテーマでも、僕らが愛を持って向き合うことで、楽しい笑い話に変えていければいいな、と思ってます。

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●よしもとお笑い介護レク オンラインHP
https://recreation.everyplus.jp/

●よしもとお笑い介護ブ!YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCgOWge9wUFwWMCoKaH4bmdQ

●よしもとお笑い介護ブ Twitter
https://twitter.com/owarai_kaigobu

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【文: 青木 典子 写真: HELPMAN JAPAN】

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