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2017.09.06 UP

一人暮らしの高齢者に商品を届け、見守る。 45年続くヤクルトレディの「愛の訪問活動」

お馴染みの乳酸菌飲料「ヤクルト」を提供する、株式会社ヤクルト本社。顧客宅を1軒1軒訪問する「ヤクルトレディ」は、一人暮らしの高齢者宅にヤクルトを届けながら安否確認や話し相手になる「愛の訪問活動」や、地域の見守りや安全・安心のお手伝いをする「地域の見守り・防犯協力活動」に取り組んでいる。そこで、同社広報室CSR推進室主事の吉田直之さん、同主任の上窪悠生さんに、活動内容や成果についてお話を伺った。

ヤクルトレディによる宅配システムは、
地域に深く浸透するための仕組み

株式会社ヤクルト本社は、乳酸菌飲料「ヤクルト」シリーズをはじめとする食品や、化粧品、医薬品の製造を手掛けるメーカーだ。食品や化粧品の販売は、全国103の販売会社が担っている。各販売会社には、合計で3万5,594名(2017年3月末現在)の「ヤクルトレディ」が在籍しており、ヤクルトなどの商品を届けている。街で商品をお届けしている彼女たちを見かけたことがある人は多いに違いない。そんなヤクルトレディに就いているのは各地域に住む主婦が中心だという。

「ヤクルトレディによる宅配システムは、地域をよく知る人がその地域の1軒1軒に商品をお届けする仕組みです。まさに地域に密着したシステムといえます。」と吉田さんは話す。このシステムを活用するかたちで行われているのが、「愛の訪問活動」と「地域の見守り・防犯協力活動」だ。

▲「ヤクルトレディによる強みは、地域の隅々にまで深く浸透していることです」と吉田直之さん

45年間、全国の販売会社で
展開されている「愛の訪問活動

「愛の訪問活動」とは、自治体の要請を受けた各販売会社が自治体と契約し、ヤクルトレディが一人暮らしの高齢者宅に決まった頻度で商品を宅配するとともに、安否確認を行い、話し相手となって、必要に応じて自治体に報告するという取り組みだ。高齢者が倒れているといった異常があれば、直ちに自治体や警察、救急などに緊急連絡を行う。2017年3月末現在、58の販社が133の自治体と契約し、3,090名のヤクルトレディが4万1,073名の高齢者に対して活動を行っている。国内だけでなく、韓国ヤクルト株式会社でも約2万7,000名の一人暮らしの高齢者の安否確認活動を行っている。

日本国内でこの活動が始まったのは、45年も前のことだという。

「1972年、福島県郡山市のあるヤクルトレディの行動がきっかけとなりました。担当地域で一人暮らしのお年寄りが孤独死をしたことを知り、何か自分にできることはないかと考え、担当地域の一人暮らしの高齢者宅に自費でヤクルトのお届けを始めたのです。この活動に民生委員や販売会社が共鳴し、さらに自治体を動かして『愛の訪問活動』に発展し、全国に活動の輪が広がっていきました。」(吉田さん)

「販売会社は地域密着で事業に取り組んでいます。愛の訪問活動は、私たちの掲げる企業理念(「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します。」)にも合致しています。だからこそ全国に広がり、45年もの間続いているのです。」(吉田さん)

また、2017年4月20日、栃木県小山市がヤクルトレディによる一人暮らしの高齢者を対象とした見守り活動を新たに「ふるさと納税」の返礼品に採用すると発表した。ふるさとを離れて暮らす人が家族の住む自治体に納税することで、ヤクルトレディが商品のお届けや安否の確認を行うという内容だ。小山市に続き、福島県須賀川市でも同様の取り組みが始まったという。社会の変化により、改めてヤクルトレディのお届けが注目されている事例といえる。

2005年9月からは、創業70周年記念事業の一環として行った「“敬老の日”お花プレゼント」も毎年実施している。「愛の訪問活動」として訪問している高齢者に、お花とメッセージカードを渡すというものだ。

▲「愛の訪問活動」の一環で、敬老の日にはメッセージカードを添えたカーネーションをプレゼント

“振り込め詐欺”も防いだ
「地域の見守り・防犯協力活動

愛の訪問活動と並行して取り組む「地域の見守り・防犯協力活動」では、販売会社が自治体や警察などと提携。ヤクルトレディが、高齢者に限らず、地域の子どもなど、地域全体を見守る役割を担っている。また、お届け車両に防犯ステッカーを貼るなどして事故や犯罪の抑止にも協力している。2017年3月末現在、ほぼ全ての販売会社が785の市町村や警察署等と提携し、2万5,338名のヤクルトレディがこの活動に取り組んでいる。

こうしたヤクルトレディの活動の成果は、ヤクルト本社に続々と報告されている。2016年には、長崎県松浦市で一人暮らしの高齢者が熱中症で倒れているところを発見。一命を取り留めることができ、自治体から感謝状を贈られたという。また同年、群馬県では“振り込め詐欺”を防いだ事例もある。高齢者宅に訪問した際、いつもと様子が違うので高齢者に確認すると、「電話がかかってきて銀行の口座番号を教えた」とのこと。その場に再度、振り込みを指示した犯人から電話があり、「これから銀行に行く」と話す高齢者に代わって、ヤクルトレディが対応。結果、被害を防いだという。

「日頃から顔を合わせているからこそ、いつもと様子が違うことに気付くことができたと思います。ヤクルトレディの強みが大いに発揮されたケースといえるでしょう」(吉田さん)

他にも、「訪問したところ、テレビの音は漏れ聞こえてくるものの返事がないので警察に通報し、倒れている高齢者を発見した」「徘徊している高齢者を保護した」といったケースは多々あるという。

▲全国各地で約2万5,000名のヤクルトレディが取り組む「地域の見守り・防犯協力活動」

「ヤクルトお客さま相談センターにも、高齢者の家族から直接『私が外出している間に主人が倒れたところを見つけてもらった。とても感謝している』といった声が寄せられています。一方、ヤクルトレディからは、『生きていてほしいと一生懸命動いた。一命を取り留めてよかった』といった声や、中には『高齢のお客さまがいつも笑顔を見せてくれるので、こちらのほうが元気をもらっている』といった声も届いています」(上窪さん)

▲広報室CSR推進室の上窪悠生さん

小学校での「出前授業」や
老人ホームなどでの「健康教室」も実施

ヤクルトグループでは、「愛の訪問活動」や「地域の見守り・防犯協力活動」以外にも、ヤクルト本社・販売会社の社員が小学校に出向いて、栄養分を吸収する腸の大切さや腸内細菌のはたらきについて楽しく伝える「出前授業」や、老人ホームや公民館などで同じく腸の大切さやプロバイオティクス*の知識を伝え、健康づくりの話や体操などを行う「健康教室」も行っている。

▲小学生に腸の大切さなどを教える「出前授業」

▲老人ホームや公共施設で体操をしたり、腸の話をする「健康教室」

ヤクルトレディによる「愛の訪問活動」と「地域の見守り・防犯協力活動」、そして地域の人々に健康の大切さを伝える「出前授業」や「健康教室」。高齢社会が進展する中、同社の「人々の健康で楽しい生活に貢献する」ための活動は、ますます地域に必要とされていくに違いない。

*プロバイオティクス:乳酸菌など、腸内細菌のバランスを改善することで人に有益な作用をもたらす微生物のこと。

【文: 髙橋光二 写真: 阪巻正志】

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