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プロ野球・北海道日本ハムファイターズの投手、谷元圭介選手が、今シーズンの本拠地・札幌ドームの主催試合に、道内の介護福祉士を招待する「アナたにもんシート」を設置している。谷元選手の祖父が、実家のある三重県でデイサービスや訪問介護を利用していることもあり、「自分に関係のあることで社会貢献をしたい」という思いから実現に至ったという。そこで、谷元選手や球団の広報部、同企画に協力する一般社団法人北海道介護福祉士会にお話を伺った。

「介護に携わる人に貢献したい」と
今シーズン35試合に介護福祉士を招待

プロ野球・北海道日本ハムファイターズの投手・谷元選手が、札幌ドームで行われるファイターズの公式戦35試合に、介護福祉士を招待する「アナたにもんシート」を2017年6月からスタートさせた。この活動に賛同した、北海道介護福祉士会に登録する介護福祉士が対象となっており、同法人を通じて観戦の応募・抽選が行われる。

最初の実施となった6月6日の広島東洋カープ戦では、谷元選手の背番号「22」にちなんで22組44名の介護福祉士が観戦し、記念撮影も行われた。その後の公式戦では、1組2名が招待される。「アナたにもんシート」の「たにもん」とは、谷元選手のチーム内での呼称だ。

谷元選手といえば、2016年、日本ハムの4年ぶりのパ・リーク優勝や10年ぶりの日本一に貢献した立役者のひとりで、「中継ぎの要」として知られる投手だ。2017年7月に行われるオールスターゲームに選出されたスター選手でもある。この活動を始めた背景について、谷元選手ご本人にお話を伺った。

「実家がある三重県で、母が近くに暮らす祖父の介護をしています。祖父は、デイサービスや訪問介護を利用しており、介護福祉士の方に大変お世話になっていると聞いています。また、介護業界においては、高齢化が進み、介護に携わる方が不足しているという状況を知り、『多くの人に、介護の仕事に目を向けてもらえるようなことができないか』と考えました。そこで球団に相談したところ、賛同が得られたのでこの企画が実現したのです」

谷元選手は、同企画を立案しただけでなく、シーズンを通しての観戦チケット費用や、招待した介護福祉士にプレゼントする限定リストバンドの制作費用も負担するという。

「介護の仕事は、体力も必要ですし、とても忙しい毎日だと思います。介護福祉士の皆さんさんに、広い球場での野球観戦でリフレッシュしていただき、明日への活力にしてもらえたらと考えました。また、今シーズンだけでなく、オフの時期には道内の介護施設を訪問するなど、支援活動を続けていきたいですね」
▲「介護のイメージアップのためにも貢献したい」という谷元選手
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谷元選手の意向を受け
広報部が実現をサポート

北海道日本ハムファイターズは、本拠地を北海道に移して15年が経つが、選手・球団職員ともに「地域への感謝・貢献」への意識が高いという。球団には、SC(Sports Community)委員会という部門があり、その目的は、「地元・北海道を中心に、野球をはじめとするスポーツ振興や社会的課題の解決を通じて、地域の未来に貢献する」というものだ。

SC委員会活動の一環として、球団主催で道内の各地域を回るイベントや、地域の人も参加するウォーキングクラブなどが開催されている。選手による社会貢献活動もさかんで、田中賢介選手がヒットを打つごとにマンモグラフィーの検診料を寄付する「ピンクリボンプロジェクト」や、中田翔選手がひとり親家庭の親子を試合に招待する「絆シート」なども実施している。SC委員会の象徴であるSCO(Sports Community Officer)は、選手として活躍し、2014年に現役を引退した稲葉篤紀氏が務めている。

「アナたにもんシート」の設置も、SC委員会活動のひとつだが、その実現に向けてサポートした広報部の高山通史さんにお話を伺った。

「谷元選手の『介護福祉士を支援したい』との意向を受けて、効果的な方法を検討したり、協力いただく団体を探したりという形でサポートしました。例えば、札幌など一部の地域だけでなく、道内全域にいらっしゃる介護福祉士の方々に貢献するためにはどうすべきかなども考えながら動きました。道内全域の介護福祉士が入会する法人である北海道介護福祉士会にご協力を依頼したのも、そのためです。

『アナたにもんシート』は、北海道介護福祉士会のご協力があって実現しました。観戦された介護福祉士の方からは、球団にお礼のメッセージが届いています。介護に携わる方々を支援する取り組みは、球団としても継続していきたいと考えています」(高山さん)
▲初回となる6月6日の試合では、札幌、旭川、函館などから来場した介護福祉士が観戦。谷元選手との記念撮影も行われた©北海道日本ハムファイターズ

社会課題でもある介護を
世の中に発信する機会になった

続いて、観戦の応募窓口となっている北海道介護福祉士会の事務局長、羽山政弘さんにお話を伺った。

「お話を頂いたときは、正直驚きましたが、北海道日本ハムファイターズさんが、介護業界に目を向けてくれたことはとてもうれしかったですね。介護についてネガティブなニュースばかりが取り上げられ、人材不足も深刻である昨今、発信力のある谷元選手に介護福祉士について語っていただくだけでも、世の中に私たちの仕事を知ってもらえる機会になりますから」

同法人には、道内の幅広い地域から観戦応募が届いているという。

「札幌ドームでの試合は月に5~7試合程度ありますが、札幌に限らず、函館、釧路、北見など道内全域から多数の応募がありますね。皆さんの関心も高いようです」

北海道介護福祉士会には、観戦した介護福祉士から次のような感想が寄せられている。

「私は幸運にも6月6日の記念撮影に当選し、間近で谷元選手を見ることができました。テレビで、マウンドでの雄姿は拝見しておりましたが、会場に登場されたときのオーラはさすがスーパースター。介護福祉士の仕事に関心を持っていただき、その上、行動を起こしていただいたことに、北海道の介護福祉士会員はもちろんですが、全国の介護福祉士、また介護に携わる職員たちがどれだけ元気を頂き、励みになったか計り知れません。介護の現場は確かに厳しい状況です。しかし、介護職を全うしようとする仲間がこれから増えていくこと、希望を持ち続けられる仕事であること、介護も夢を語れる職業になることを目指していきたいと思います」

「利用者の方が招待されるということは聞いたことがありますが、介護従事者が招待されるというのは初めて聞きました。初めてのドーム観戦で、一緒に行った息子も大喜びでした。本当にありがたい話です。今後、違う形であっても続いていってほしいです」

羽山さん自身も、「谷元選手には感謝の気持ちでいっぱいです。野球選手である以上、今後、移籍などもあるかもしれません。それでも、介護・福祉業界を支援していただけるとうれしいですね」と語ってくれた。
▲6月6日の観戦の様子©北海道介護福祉士会

介護は社会になくてはならない仕事
これからも支援を続けたい

最後に、谷元選手からHELPMAN JAPANの読者に向けてメッセージを頂いた。

「私は、観てくださる方に夢を与えることができるプロ野球選手になることができました。介護は、『生』と向き合うわけですから責任も大きく、社会になくてはならない仕事であり、人と直接触れ合いながら『ありがとう』と言ってもらえる、やりがいある仕事だと思います。私はこれからも、介護を志す人たちが増えるような支援活動を続けていくつもりです。お互いに、がんばっていきたいですね」
▲谷元選手は2017年6月23日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦にて、通算100ホールドを記録。2005年に新しく規定された現制度ではプロ野球史上25人目だという©北海道日本ハムファイターズ
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文: 池内由里
写真: 刑部友康
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