人事ヘルプマン

毎月70名の新入介護職員が全国の介護施設へ配属前に研修センターにて研修を受ける

SOMPOケアネクスト株式会社は、2016年4月に研修センター「SOMPOケア Next Step Center」 をオープンさせた。
なんと驚くべきことに、このセンターでは、全国の新入介護職員が毎月、各施設へ配属前に2週間ほどかけて研修を受けている。
関西で採用された人は、関西から東京の研修センターに来るのだ。
もちろん宿泊費や交通費は、会社が負担する。
新卒採用において、研修を充実させている会社はよく聞くが、中途採用においてもここまで力を入れて研修を行っている会社は珍しいのではないだろうか。

カリキュラムは主に2部構成。
前半の5日間は、全職員に共通のプログラム。会社の理念や方針、介護に関する基本的な知識を学ぶ。介護職だけでなく、看護師や栄養士、理学療法士などあらゆる職種が対象となる。
後半の5日間は、介護職のみのプログラムだ。入浴介助、排泄介助、食事介助など、介護の実技を学ぶ。
◀介護技術を教える講師は全部で5名。常に研修センターに常駐し、日々、全国の介護職員に技術を教えている。各専門分野に特化した講師が自分たちでテキスト・マニュアルを作成する。
まず研修センターに入って驚くのは、そのスケール感だ。
浴室、ダイニング、居室などが通常の介護施設と全く同じ大きさに作られているという。
ナースコールに関する機器などは、実際にボタンを押すとPHSが鳴るなど、出来るだけ施設の環境に近づける努力が随所になされている。
そうすることで、研修センターで学び、各施設に配属をされた後、新入介護職員が不安なく、実務に入ることが出来るという。
▲廊下の幅や、手すりの高さに至るまで、細部も施設と同じ造りに設計してある。
▲ベッドや入浴機器、PHSに至るまで、全て実際に使える機器を導入している。
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研修センターをつくった背景とつくった後の社員の声

SOMPOケアネクスト株式会社は、「社員教育」に力を入れる方針を明らかにしている。
同社の遠藤社長が全国の「社員の声」を聞く中で、「もっと勉強をしたい。スキルアップしたい」という意見が多くあったことがきっかけだ。
1月に研修センターをつくることが決まり、4月には同センターが完成したというから、驚くべきスピード感だ。
それだけ、SOMPOケアネクスト社が「社員教育」にかける思いが本気であるからだろう。
実際に社員からも「こんなに早く綺麗な研修センターが出来るのか。研修や教育にここまで投資してくれるこの会社にもっと期待したい」「本部がここまでしてくれるなら、現場も本気で変わらなければいけない」と驚きと期待の声が上がった。
会社の方針を有言実行することで、現場職員の教育への温度感も変化しているのだ。

毎月上旬は、新入介護職員に向けた研修を、中旬から下旬にかけては、会社の一般職員やリーダー職、ホーム長の人に向けて研修センターを稼働させる。

ホーム長からも「新入介護職員に技術力がつくのはもちろんありがたいが、何より自分自身がまだ学べる環境があるのも本当にありがたい」という声が上がる。

リーダー職も好意的だ。新入介護職員が施設に入るとまずはリーダー職が面倒を見ることが多いが、これまでは教えるリーダー職によって、ケアの質がバラバラという課題があった。また、リーダー職自身もシフトに入っているため、なかなかじっくりと新入介護職員を教えることが出来ない。それが研修センターを導入することで、ある一定水準のケアの質を担保できるのと、リーダー職自身も研修センターで研修を受けることで、人に何かを教えるノウハウや技術をしっかり学べ、ケアの質を水平展開することが可能とのこと。中には 「新入介護職員だけでなく、一般職員も意外とみんなで集まる機会がない。同じ会社の中で顔なじみの人が出来て、とてもありがたい。横の連携もしやすい」という声も。

研修センターをつくってからの同センターを利用した社員の声はほとんど全員が好意的で、実際に同社に入ってからすぐに辞めるという職員も減ってきているという。
▲SOMPOケアネクスト社では、「社員の教育・研修に力を入れる」方針を明らかにしている。
▲備品の一つひとつを施設と同じものにするなど、随所にこだわりがある。

新入介護職員にとって、研修センターがあることの『意味』

それでは、研修センターは実際に新入介護職員にとって、どのような意味を持つのか。
同社の人財開発部 採用・教育課 課長の片岡さんによると、二つの意味があるという。
一つが、施設へ配属される前の「安心感」だ。
通常、未経験・無資格の人が介護業界に入る前は非常に不安なことが多い。
技術がない自分にはたしてこの仕事が務まるのか、ご入居者さまに急に何か分からないことを聞かれたらどうしようか、など。
それを2週間しっかりと研修を行うことで、ある程度の不安を取り除くことが可能になるのだ。
しかも、研修センターでは、架空のご入居者さまを設定し、それぞれのケアプランまで用意をしている。最終日には、試験があり、新入介護職員が架空のご入居者さまへきちんとケアが出来るかを講師がテストするのだ。
このように、同研修センターでは、万全の状態で新入介護職員を各地へ配属させる準備を整えている。

また、もう一つの意味は「同期意識の養成」だ。
これまでは、各地でバラバラに研修を行っていたり、入社後3日間だけ研修を実施していた。そうすると、同じ時期に入社をした新入介護職員であったとしても、なかなか同期として仲良くなることが難しかった。
ところが、研修センターが稼働してからは、同じ時期に入社をした新入介護職員が2週間ずっと同じ研修を受け続ける。
最終日には、全国に配属をされる前に「皆で介護業界で頑張ろう!」と自然と連携が深まっている。
これは、新入介護職員のモチベーションアップや離職防止観点で非常に有効だとのこと。
▲取材をした当日も広島県や兵庫県からリーダー職の方々が研修に参加をしていた。研修センターが出来てからは、全国の職員が集まる機会が生まれた。
▲実際の施設と同じテーブル、ベッド、お風呂で研修を行うため、施設へ配属された後に新入介護職員は安心して実務に入ることができる。

研修センターのもう一つの顔

研修センターは、従業員への研修という目的以外にさらに二つの役割があるという。
一つが、施設へのICT導入にあたっての「実験を行う施設」という立ち位置だ。
これまでも「眠りスキャン」や「パワースーツ」などが、同施設で実験的に運用された。
今後も新しいICTが施設に導入される前に、実験を行っていく方針だという。
そうすることで、ケアのサービス品質を高めていくことが狙いだ。

二つ目の顔が、「採用活動における学生への支援」だ。
実際にこの研修センターを使った会社説明会や、内定後のフォローとして、学生に研修センターでの研修を見学しにきてもらう、など採用活動にも使っている。
おおむね学生の評判も上々だ。
今後も様々な企画を検討中だという。
▲研修センターで導入されている介護記録を入力するためのiPad

研修センターの今後について

▲研修センターについて話をしてくれた人財開発部 採用・教育課 課長の片岡さん
最後に、研修センターの今後について片岡さんに話を伺った。
現在は、「トライ&エラーを繰り返しながら研修プログラムをつくっている最中。
未経験の方でも専門知識やスキルを習得できるよう研修内容をさらに良くしていきたい。また、ICT機器の導入を早めサービス品質を高めていくことにこだわりたい」とのこと。
今後はグループ会社や外部への公開なども検討している。

講師の仕事を自社の従業員へのキャリアアップの一つにするという考えもある。
実際に今回の研修センターの講師は、自分たちで講師になりたいと手を上げた人たちだ。
今回講師に抜擢された人以外の従業員や新入介護職員からも「いつかは研修講師にチャレンジしたい」という声もあがってきているという。

「この研修センターをきっかけに会社がよくなり、介護業界そのものの魅力を高め、もっともっと介護の仕事をしたいという人が増えていくようにしていきたい(片岡さん)」
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文: 繁内 優志
写真: 繁内 優志
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