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コンビニの店舗内に介護の相談窓口とサロンを併設するという、新しいモデルにチャレンジしたローソン。これは、「マチの健康ステーション」を目指す株式会社ローソンと、地域密着型で介護事業を中心に展開する株式会社ウイズネットとの提携から始まったもの。地域で増加する高齢者や家族のニーズ、そして不安や悩みをすくい上げる形で生まれたケアローソン。日本各地にあるコンビニが、もし介護拠点として機能しだしたら。そんな未来の広がりにも人々の期待が集まっています。
プロフィール紹介
1996年に三菱商事(株)に入社し、主にヘルスケア関連事業を担当。その後、2012年より(株)ローソン ヘルスケア本部 シニアビジネス企画部長などを歴任し、現職はケアローソンモデルを主管するライフケア推進部長を務めている。「超高齢社会のもと、地域の方々が末永く健康で、安心して生活できるインフラを構築したい」という思いで進めている

地域の健康ステーションを
目指して

“マチの健康ステーション”を標榜し、すでに病院内や調剤薬局と併設した店舗など、ヘルスケア分野にいち早く進出してきたローソン。そんなローソンが介護とコラボレートした新店舗は、ケアマネジャーが介護相談や生活支援アドバイスを行い、店内には高齢者・家族などのニーズに合った日配、生鮮、惣菜、菓子類などのほか、介護関連商品や介護食も置かれ、介護に関する情報もワンストップで入手できる場所となった。

そんな1号店の開発に携わった、ローソン ヘルスケア本部の林さんに話を聞いた。
「きっかけは介護事業者のウイズネットさんから、介護×コンビニの発想で幅広いシニア層とご家族に対してワンストップで商品・サービスが提供できないか?と声がかかったこと。これは当社と目指す方向が一緒だと、すぐに具体的な話に進みました。

しかし、コンビニと介護がコラボレートするという雛形はどこにもない。そのため、介護、シニアやご家族、さらには健康・生活支援をキーワードにどういったコンセプトで、どこまでの商品・サービスを提供するコンビニを作るべきか、試行錯誤のポイントは無数にありました」
▲埼玉県川口市にできた、ケアローソン1号店。ウイズネットと連携し、店内に居宅介護支援事業所を併設、介護の相談を受けられるようになった。また、高齢者やその家族が訪れるため、生活支援商品、介護食、介護関連商品も充実、販売商品もターゲット層の拡大に伴い、品揃えを拡充したという
▲コンビニ店舗内に設置された介護相談室。店舗との仕切りもなく誰もが自由に出入りできる。さらに、相談室の隣にあるサロンスペースでは、『元気な地域コミュニティを応援する場』として、地域情報を発信し、定期的にヘルスケア関連のイベントなども開催されている
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介護相談を行うコンビニは
地域の期待にどう応えるべきか

介護に関わるヒューマンタッチなサービスはウイズネットの知見、店内にある幅広い商品・サービスなどはローソンの仕組みやノウハウを活かすことができる。一方、限られたスペースの中で幅広いシニア・ご家族に喜んでもらうには、どのように店舗を進化させるのか、それが議論の焦点だったと林さんは続ける。

「既存のコンビニに介護相談のみを装着するだけでは地域の期待に応えきれないと思いました。そこでシニアやそのご家族の期待という原点に立ち返ることに。ウイズネットさんとの議論、アンケートや座談会を重ね、コンセプトに合うように品揃えやスペースの考え方を見直したのです」

 見えてきたのは「シニアの好み・多様性」と「コミュニティスペース」だった。
「例えば、“いつもの味”や“昔ながらの味”など慣れ親しんだ商品への愛着がある方々、要介護のご家族を抱えられ幅広い介護食のメニューを望まれる方々、小容量のものを好まれる方々など、一口にシニアといってもそのニーズは多様。調理の手間の少ないお総菜や缶詰のラインアップ、やわらかい食事や介護食、スーパーの人気商品をヒントにした昔ながらの菓子類などを増やし、通常店舗より約500~1,000アイテムほど多い、約4,000アイテムに及ぶ商品数に。

また、シニアの独居や夫婦のみの世帯が増える中、元気な地域コミュニティを応援する場というコンセプトのサロンも併設させました。ここに来ると、人と人とが触れ合え、地域活動やヘルスケア関連の情報が得られて安心できる。多世代が集まって元気がでてくる。そんな空間をつくりたかったんです」
▲ 介護用おむつ、経口補水液、とろみ調整食品などの介護関連商品が充実しており、高齢者とその家族が求める商品が揃った
▲“いつものお煎餅”をはじめ、“すあま”や“氷ざとう”など高齢者が慣れ親しんだお菓子。お惣菜やカット野菜、缶詰などの調理済み食品も充実。もちろん、売り上げも好調だ

高齢の両親への不安、自宅でのリハビリ方法
たくさんの相談を吸い上げて

こうして誕生したケアローソン1号店でケアマネジャーとして、地域の方のさまざまな相談に答える渡辺さんにも話を聞いた。

「コンビニに相談窓口を開いて感じたのは、本当にいろいろなレベルな相談が来ることでした。施設では、ある程度、悩みのレベルが重くなってからでないとサポートできませんが、コンビニは気軽にふらっと立ち寄れる分、ごく初期の段階の不安から吸い上げることができています」

相談内容も十人十色だと渡辺さんは言う。「例えば、20〜30代の方だと、『まだ両親は元気だが、一人息子なので先行きが不安』などと口にする方から、『脳梗塞で倒れた夫が、自宅でリハビリを行っているか、それがよいやり方なのか心配』といった声などさまざまです」

渡辺さんはこうした声に丁寧に応えている。「ご家族の高齢化が不安なケースではご自宅に伺うこともあります。脳梗塞の方のケースでは実際にお宅を訪れ、リハビリのやり方をアドバイスしたほか、介護保険で住宅改修もできることなどを伝え、手すりを付けるなどして改修のサポートもできました」

コンビニに介護相談窓口ができ、地域の方とのコミュニケーションも加速したという渡辺さん。“愚痴を聞く、人と話す”だけでも心の安定になるからと、やりがいを感じている。
▲ウイズネットがローソンのフランチャイズオーナーとなり、店舗を運営している。店長をはじめスタッフも全員ウイズネットの社員やアルバイトだ。高齢者に優しい店として、スタッフ全員に認知症サポーター講座の受講なども計画されている。右端がケアマネジャーの渡辺さん

健康関連イベントや認知症カフェなど
地域のコミュニティとして機能させていく

地域で機能し始めたケアローソンの今後について、林さんに聞いた。

「ケアローソンを始めてわかったのは、自治体に相談する前の不安や、相談の仕方がわからず悩む方も多いこと。また、買い物ついでに相談できるコンビニという形ができ、地域のハブとして機能し始めたことも発見でした。今後の展開のために、現在はよりブラッシュアップしたケアローソンのプロトタイプをつくろうと、コンテンツやハードの考え方をさらに精査しているところです。

デイサービスを併設するなど、可能性はいろいろある。全国に広げていくためにも、地域ごとにその地に根差した事業者さんと連携していく方針です。8月5日にオープンした2号店は“サロン”機能を強化しています。多くの世代が交流でき、ご自身の健康管理につながるような空間とコンテンツもご用意しました」

すでに1号店でも、骨密度測定や認知症カフェなどのイベントが催されているケアローソン。もし、全国に広がるコンビニのすべてに介護相談の窓口ができたとしたら。既存の仕組みを二つ掛け合わせることで、またひとつ超高齢社会の課題が解決されていくのではないだろうか。
▲サロンスペースの入り口には、自治体や介護・健康に関する案内や情報を常時設置。地域の人たちにとってのコミュニティスペースにもなっている
▲「マチの健康ステーション」を理念に掲げるローソンは、地域の健康ステーションとして機能し始めた。生活者の暮らしを多彩な形で支援しようとする姿勢から、次々と新しいものが生まれている
[
文: 戸部 二実
写真: 上石 了一
]
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