業界最新トレンド
ヤマハ発動機は、既存の手動車いすを簡単に電動化できる「車いす用電動ユニット」を開発・製造・販売しています。中でも、電動アシスト自転車「ヤマハパス」の技術を応用し、車いすを漕ぐ力をアシストしてくれる「電動アシストユニット」は、電動車いすの普及率が少ない日本においても徐々に販売台数を伸ばしているのだそう。最近では、利用者の身体の状態に合わせてアシスト力の調節ができる新機能を搭載したモデルも登場。従来の車いすにはないデザイン性の高さも話題になっています。人が車いすに無理をして合わせるのではなく、車いすを人に近づけるという想いで、高齢者や障がい者の移動、そして生活そのものをアシストしているのです。
プロフィール紹介
米光正典さん(写真・右)
1967年生まれ。1989年ヤマハ発動機株式会社入社。IM事業部にて産業用ロボットの一種であるサーフェスマウンター(表面実装機)の制御開発グループリーダーや、電動パーツフィーダーの開発プロジェクトリーダーを務める。2011年よりJW技術のグループリーダーとして電動車いすの開発を推進し、2012年JWビジネス部長。2014年からはJW営業のグループリーダーも兼務し、販売普及活動に従事している。電動車いす安全普及協会副会長も務める。

水谷浩幸さん(写真・左)
1979年生まれ。2005年ヤマハ発動機株式会社入社。同年JW技術グループへ配属。「JWアクティブ」「タウニィジョイX」の開発に従事した後、2011年より「JWX-2」、2013年より「JWスウィング」開発のプロジェクトチーフを担当。

電動車いすの可能性を広げた
ヤマハの車いす用電動ユニット

動画/「JW Smart Tune」を搭載した最新の車いす用電動アシストユニット「JWX-2」と、完成車「JWスウィング」の紹介動画
米光 ヤマハ発動機は1995年から「車いす用電動ユニット」を販売しています。これは、既存の手動車いすの車輪を電動ユニット付きの車輪に交換して、車いすを電動化するもので、電動車いすの快適さと、手動車いすの軽さや小回りのよさを生かした製品です。

私たちが初めて製品を発売した約20年前は、電動車いすの市場は大きく分けて、障がいをもたれた方が主に使う、ジョイスティックで操作する「ジョイスティック(普通)型」と、高齢者の方が主に使う、4輪のようなハンドルを操作する「ハンドル型」の2種類だけでした。

どちらも移動は楽であるものの、ハンドリムを使い車輪を手で漕いで進む手動車いすと比べて、車体が大きく重量があり、自動車に積むことは困難です。また、狭い道路や家の中では操作が難しく、スーパーの店内や、電車、バスなどに乗り入れできないという短所があります。そのため、私たちの電動ユニットは、「簡易型電動車いす」と呼ばれる新しい電動車いすの市場を生み出すことになったのです。
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パワーアシストが
移動できる喜びを生み出す

米光 当社では、製品づくりを通して感動と豊かな生活を提供することを企業目的として、健康・福祉分野への貢献や高齢社会への対応の一環で、独自の制御技術や駆動技術を応用し、手動車いすを電動化する製品開発に取り組んできました。

”人間感覚を重視した制御技術”を生かしながら、利用者の生活の質の向上や、行動範囲を広げる一助となるように、車いす利用者の移動ニーズに応えることはもちろん、介助者の快適性や利便性も追求した、安心・快適・扱いやすい製品の開発と、販売・サービスの提供に取り組んでいます。

「電動ユニット」も年々進化しています。例えば、車輪を漕ぐ力をモーターがアシストする「電動アシストユニット」です。これは、世界初の電動アシスト自転車「ヤマハパス」の「パワー・アシスト・システム」(自転車のペダルを踏む力をモーターが補助する機能)を応用しています。

手動車いすは、わずかな傾斜があるだけでも操作にとても苦労しますよね? それが原因で、外出する意欲をなくしてしまう方もいる。しかし、車いすを漕ぐ力を電動でアシストできれば、腕や手の力が弱い高齢者の方でも介助者のサポートなしで移動することが可能となり、自力で移動する喜びや、「外出したい」から「外出しよう」という前向きな気持ちを持っていただくことにもつなげられるのです。
画像/パワーアシストシステムを応用した、電動アシストユニット「JWX-2」。車輪中央のハブ部分にモーター、減速ギア、制御基板、センサーなどを装備している。車輪の重量は約7kg(片輪)。簡単に取り外すことができるため、自動車にも積み込みやすい

使う人の身体能力や使用する環境に合わせ
最適なパラメータ設定ができる

米光 いままでの車いすは「人が車いすに合わせていく」ことしかできませんでしたが、私たちの製品は「車いすを人に近づける」というコンセプト。

2013年には、電動アシストユニットのアシストの強弱などを、利用者の身体の状態に合わせて調整できる「JW Smart Tune」という新機能を搭載した電動アシストユニット「JWX-2」も登場しています。パソコンの専用ソフトと電動ユニットをつなげることで、左右のバランスやアシスト力、応答性、直進性・旋回性を細かく設定できるほか、腕や手に適度な負荷を与えるように設定することもできます。

2014年6月には、自社で開発した車いすのフレームに、この「JWX-2」を搭載した完成車「JWスウィング」も発売しました。

高齢者もカッコいいものに乗りたいはず
アクティブな見た目にこだわったデザイン

水谷 開発の上でもっとも苦労したのは軽量化です。また、車いすのフレームはオーダーメイドが多く、形状やデザインがさまざま。そこで、電動アシストユニットの「JWX-2」は、どんな車いすにでも簡単に装着できる構造を採用。フラットタイプのACサーボモーターを導入し、減速ギア、制御基板、センサーなどを車輪のハブ部分にすべて収め、コンパクト化にも成功したのです。

電動アシストユニットの認知度を上げるため、見た目のインパクトにもこだわっています。いままでの手動車いすは「いかにも福祉機器」といった見た目で、銀色のフレームでタイヤはグレー、といったものがほとんどでした。でも、車いすだってカッコいいものに乗りたいし、おしゃれをしたいですよね?

「JWX-2」も、完成車の「JWスウィング」も、ヤマハのデザイン本部と協力して、配色を従来の車いすとは異なるものにしたり、ホイールキャップもシルバーベース、黒ベースなどを選べるほか、ドイツ製のスポーティーな黒色タイヤを採用して、アクティブ感を演出しています。
画像/電動アシストユニットを搭載した完成車「JWスウィング」。車いすとしては珍しく、フレームにパールホワイトの塗装を施してあり、モーターサイクルでおなじみのヤマハのエンブレムを採用するなど、スポーティなデザインが特徴
画像/タイヤはドイツ製のスポーティタイヤ(黒)でハンドリムコーティングがあるものと、標準タイヤ(グレー)でハンドリムコーティングがないものから選べる。スポークカバーもカーボンとクリアを用意するなど、好みや目的に合わせて仕様を選択できる

電動なのに折り畳める!
精密な制御でさまざまな機能を搭載

水谷 完成車の「JWスウィング」は、バッテリーの収納位置を工夫することで、すっきりと折り畳んで自動車にも積み込みやすいようにしました。

姿勢を維持して快適に漕ぎ出せるよう、背もたれの部分に骨盤をサポートする機能を設けたほか、いすのクッションに段差をつけて、しっかり着座できるように設計しています。

米光 安全性の面での配慮もあります。電動車いすの開発を行うIM事業部では、緻密な制御が求められる産業用ロボットも開発しています。そうしたものづくりのノウハウを生かして、左右の車輪を絶えず通信させて、左右の動きのバランスが異常だったり、万が一どちらかが故障しても、すぐに自動制御で停止させることができる機能を取り入れているのです。
画像/「JWスウィング」の後方部。背もたれの後ろにバッテリーが収納されており、特殊なヒンジで、折り畳み時の全幅を33cmまでコンパクトにした。電動アシストユニットの重量は約7kg(片輪)で、簡単に取り外すこともできる

自力で車いすを漕げる人を
幅広くカバーする

米光 これまでは、手動車いすから電動車いすへ乗り換えるハードルが高く、車いすを自力で漕げなくなったら、電動車いすを使うしか選択肢はありませんでした。しかし、私たちの電動アシストユニットによって、まだ腕で漕ぐことができる人の選択肢を増やすことができたと自負しています。

ただし、いくら便利な製品を揃えても、インフラを含めた環境や人の心の持ちようなど、社会全体で弱者をサポートできる仕組みが整備できないことには、それらは生きてきません。

いま、ヤマハ発動機では、浜松市やほかのメーカーさんとも協力して、高齢者や障がい者の方がもっと住みやすい世界を実現するための展示会やシンポジウムを地域ぐるみで行っています。2050年には、65歳以上の高齢者が人口の4割を占めるといわれている中で、私たちは高齢者の方の自立を支援し続けたいと考えています。
画像/ヤマハ発動機の電動アシストユニットは、自力で車いすを漕げる人を幅広くカバーすることができる(図版提供:ヤマハ発動機)
[
文: 成田敏史(verb)
写真: 高橋定敬
]
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