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2014.02.28 UP

誰にでも訪れる老後の世界を映像化老いた先に私たちが見るものとは?

今日の老人、明日の老人
すべての人に捧げられた作品

スペインの漫画家パコ・ロカが描いた『皺』(第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門「優秀賞」受賞)を原作にした長編アニメーション。

かつて銀行で支店長を務めていたエミリオは、認知症の症状が見られるようになり、養護老人施設へと預けられます。同室のミゲルは、お金にうるさく抜け目がありませんが、エミリオのことを「ロックフェラー」と呼ぶなどユーモアがある男性。施設には、他にも面会に来る孫のためにバターや紅茶をためている女性アントニアや、アルツハイマーの夫モデストの世話を焼く妻ドローレスなど、個性豊かな人々が入居しています。それぞれが家族と一緒に暮らせない寂しさや身体の不自由さを抱えながらも、共に時間を過ごし、平穏に暮らす日々。しかし、症状が重くなると、“ぼけ老人ばかり”と毛嫌いされる2階の部屋へ入れられるきまりになっています。そんなある日、エミリオは看護師のミスから自分もアルツハイマーだと気付いてしまいます。症状が進行していくエミリオは2階へ送られる日も遠くありません。そんなエミリオのことを思い、ついにミゲルはある行動に出て…。

★★HELPMAN Point!★★

この作品は、養護老人施設に暮らす人々にスポットを当て、「認知症」あるいは「老い」という重いテーマを描いています。主人公のエミリオは、息子たちに突き放されたかたちで養護老人施設に預けられた身。他のお年寄りも似たような境遇ですし、エミリオと同じように認知症を患った人もいます。そして、エミリオは同室のミゲルといさかいを起こすなど見ていてつらくなるような場面もあります。しかし、この二人のやりとりで印象的なのは、ミゲルはエミリオのことをばかにせず、いつも真正面から思っていることを言い合っている点です。それにより、二人の心にどういう変化が生まれるかが、この作品の見どころです。

また、アニメならではのファンタジックな手法で、認知症の人の内面を視覚的に表現しているところにも注目。例えば、いつも窓の外を見ている女性が登場しますが、彼女は、若き日の姿で煙草をふかして豪華列車に乗っているつもりなのです。こうした場面が手描きのぬくもりのある映像で描かれています。

老いは誰にでも訪れるものであり、認知症になることもめずらしいことではありません。この作品は、ひと足先に老後の世界を想像しやすくさせてくれるとともに、ミゲルのエミリオを尊重する態度は、私たちが普段、お年寄りに接するときのヒントになります。


★「しわ」
ブルーレイディスク:価格:4,935円(税込)
DVD :価格:3,990円(税込)
※画像はBlu-ray版のもの

【監督】イグナシオ・フェレーラス 【エグゼクティブプロデューサー】ダニ・マルチネス/マリア・アロケーナ/アンヘル・デ・ラ・クルス/トニ・マリン 【プロデューサー】マヌエル・クリストバル/エンリケ・アキレザバラ/オリオール・アイバーン 【原作】パコ・ロカ 『Arrugas』(西Astiberri社/仏Delcourt社刊) 【脚本】アンヘル・デ・ラ・クルス/イグナシオ・フェレーラス/パコ・ロカ/ロザンナ・チェッキーニ 【キャラクターデザイン】パコ・ロカ 【音楽】ナニ・ガルシア 【音響】カルロス・ガルシア/ディエゴ・ストウブ 【字幕翻訳】金関いな 【販売元】ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
(C)2011 Perro Verde Films – Cromosoma, S.A.

【文: 岡本のぞみ(verb)】

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