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東急電鉄は少子高齢化が進む沿線の駅を中心に、それぞれのまちの暮らしやコミュニティにふさわしい「100駅100通りのまちづくり」を進めています。渋谷、二子玉川、たまプラーザではすでにモデルづくりが先行しており、中でもたまプラーザ駅周辺では、横浜市と連携したプロジェクト「次世代郊外まちづくり」や、住み替えを軸にまちを活性化する取り組みを展開。ソフト・ハードの両面から、高齢者が安心して住みやすく、若い世代にも魅力的な持続可能なまちとして再創造しようとしています。それぞれのプロジェクトを担当する土方健司さん、市川岳志さんにお話を伺いました。
プロフィール紹介
土方健司さん(写真・左)
1961年生まれ。慶應義塾大学大学院工学研究科卒業後、1986年に東京急行電鉄株式会社に入社。経営管理室、東急ライフィア株式会社出向などを経て、2012年より都市開発事業本部 住宅・ソリューション事業部 住みかえ事業推進部を担当。中小企業診断士。

市川岳志さん(写真・右)
1969年生まれ。株式会社東急アメニックスを経て、2007年に東京急行電鉄株式会社に入社。住み替え支援やリノーベーションを行う「ア・ラ・イエ」事業に従事した後、2013年より都市開発事業本部 都市戦略事業部 企画開発部で「次世代郊外まちづくり」を担当。一級建築士、宅地建物取引主任者、一級建築施工管理技士。

沿線のまちを魅力あるものに
東急電鉄の新しいまちづくり

写真/たまプラーザ駅前の様子
土方 東急グループは、「日本一住みたい沿線 東急沿線」「日本一訪れたい街 渋谷」「日本一働きたい街 二子玉川」の3つの日本一をめざし、東急沿線のそれぞれのまちを、魅力あるものにしていく取り組みを始めています。

テーマは「100駅100通りのまちづくり」。東急沿線には文字通り100の駅がありますから、その駅、その地域の特性に合ったまちづくりをしていこうということです。特にいま、たまプラーザのような大都市近郊の郊外住宅地は、住民の高齢化や建物の老朽化、若い世代の郊外離れなどにより、まちが活気を失い、衰退してしまうのではないかと危惧されています。

そこで、成熟化する沿線の変化に対応するため、郊外生活の魅力や価値を再創造するさまざまな取り組みを通じて、多世代の流入やまちの循環を図っているのです。
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横浜市と提携して進める
住民参加型のプロジェクト

写真/2013年9月21日にたまプラーザテラス プラーザホールで開催された「住民創発プロジェクト 第1回講評会」の様子
市川 たまプラーザ駅北側の約6,500世帯をモデル地区にして、横浜市と提携して進めているのが「次世代郊外まちづくり」プロジェクトです。

これは住民参加型のプロジェクトで、産・官・学・民の四者連携で、既存のまちの暮らしやコミュニティを生かしながら、新しい発想で再生を図ることが目的です。
現在はリーディングプロジェクトを8つ設け、具体的な活動をスタートしています。

中でも象徴的なのが「住民創発プロジェクト(シビックプライド・プロジェクト)」です。老若男女問わず、住民の皆さまが自分のまちに愛着や誇りを持てる企画を広く募集して、横浜市と弊社でその活動を支援しています。

子どもや高齢者が一緒になって、まちの中でオリジナルのパフォーマンスを行う「フラッシュモブ実行委員会」や子育て世帯と地域の人をつなぐ「美しが丘カフェ」など、ユニークな取り組みが進行中です。地域の中学校とも連携し、子どもたちに「まちづくり」を考えてもらう授業も実施しています。

他にも「家庭の節電プロジェクトとエコ診断」「地域包括ケアシステム『あおばモデル』パイロット・プロジェクト」など、これからの暮らしに欠かせないテーマにも取り組んでいます。私は昨年からこのプロジェクトに携わっていますが、住民の方と直接関わる経験は初めてでしたから、毎日が発見の連続です。

たまプラーザの地元自治会は非常に活発で、問題意識を持った方々が多い。今後もこの取り組みを推進し、コミュニティを活性化することで、持続可能な住宅地モデルを作り上げていきたいですね。

若い世代と高齢者世代が混じり合う
住み替えのサポート

土方 たまプラーザでは、住み替えをサポートすることで、若い世代が入ってきやすく、高齢者にとっても暮らしやすいまちとして再生を図る事業も並行して進めています。

駅に商業施設やコミュニティスペースを設け、さらに駅の近くに高齢者向けの住まいを用意することで、郊外の戸建住宅に住む高齢者は、利便性が高くにぎわいのある駅周辺の住宅へ。戸建住宅はリノベーションして、ファミリー世帯の住まいとして再生。こうして、さまざまな世帯が混じり合う活気のある住宅地として、たまプラーザの持続的な発展を図るのが目的です。

まちづくりにおいて、高齢者の介護ニーズにお応えすることも欠かせません。ですから、東急ではまちのインフラとして、介護・デイサービスなどのシニア事業も展開しています。

たまプラーザ駅前の商業施設「たまプラーザテラスリンクプラザ」には、「オハナたまプラーザ」というデイサービス施設を開業。同じ施設内にある地域ケアプラザやクリニック、保育園などと協力し、駅直結だからこそできるコミュニティスペースづくりや利便性、安心できる環境づくりを徹底しています。

実は、商業施設の中を歩いていると、この施設の中の様子がうかがえるように設計してあるんです。若い世代からすると、高齢者の姿は自分の未来。生き生きとした時間を過ごしている利用者の姿を垣間見ることで、「このまちで最後まで楽しく暮らしていける」ということを実感していただきたいですね。

たまプラーザは団塊の世代の方が多く住むシンボリックな郊外住宅地ですから、ここでよいまちづくりのモデルを作ることができればと思っています。

画像/「次世代郊外まちづくり」のグランドデザイン
写真/「オハナたまプラーザ」の内観

地域のコミュニティで
高齢者や子どもたちを支える

土方 たまプラーザ以外のシニア事業の取り組みでいうと、今年春には、渋谷駅近くの保育園をリノベーションした「オハナ渋谷桜丘」、中延駅直結の複合商業施設内に「オハナ中延」の開業を予定してします。オハナ中延では商業施設内に開業する保育園の子どもとふれ合う機会を設けるなどして、複合施設ならではのメリットを生かしていきたいと考えています。

また、大岡山や旗の台では、高齢者の住まいとして「ウェリナ」を展開しています。どちらも駅のすぐ近くにあり、「ウェリナ大岡山」は駅直結の東急病院と隣接する有料老人ホーム、「ウェリナ旗の台」は介護サービス付き高齢者向け住宅です。家族や友人が遊びにきやすいのはもちろん、まちの中心である駅の近くに暮らすことで、地域社会の一員としての暮らしが実現できると考えています。

さらに、シニア事業ではありませんが、シングルペアレントと単身者が同居することで、新しい子育てを応援する「“みんなで子育て”シェアハウス(仮称)」を今年3月に開業します。デイサービスもシェアハウスも、従来型の介護施設や保育園ではなかなかフォローできない、地域のコミュニティで高齢者や子どもを支えるという環境を作ることが目的です。

画像/今年3月に開業を予定する「“みんなで子育て”シェアハウス」のリビング&ダイニングルームイメージ

プラットフォームができれば
まちは自然と循環し続ける

市川 企業や行政が“箱”を与えるだけのプロジェクトはたくさんあります。しかし、地に足がついたものとして続けていかないと未来はありません。私たちの取り組みは、まちを活性化するスタートアップのお手伝いなんです。こうした取り組みを通して、住民の方々に自分のまちをもっとよくしたいという“プライド”を持っていただければうれしいです。

土方 “プラットフォーム”を整備できれば、まちは自然と循環し、魅力的なまちとして続いていきますから。今後の展開としては、私たちが手がける一つ一つの事業を、よいパートナーと一緒につなぎ合わせていく取り組みも必要になってくると考えています。
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文: 成田敏史(verb)
写真: 高橋定敬
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