ヘルプマン
地元宮城県で気の合う仲間たちと一緒に、デイサービスを立ち上げたのが渡邊晃さんです。もっといい介護がしたい、もっと地域をよくしたいという思いから、介護・福祉の仲間と「夜考虫。」という活動も立ち上げました。東日本大震災で被災し、地域の絆、ネットワークの重要性を痛感したという渡邊さん。介護や地域への想いを聞きました。
プロフィール紹介
1975年生まれ。37歳。介護福祉士、看護師。一般の病院、介護老人保健施設を経て、より家族的できめ細かなサービスを目指して「なべさん家」を立ち上げる。現在は宮城県多賀城市内と北東部の美里町にデイサービスを2拠点展開中。東日本大震災の時には施設がセーフティネットとなり、利用者の自宅に水や食料を配って回った。

あなたらしく、わたしらしく、
今を共に生きる

私の祖父は要介護状態になって療養型の施設に入ったのですが、その際にちょっと納得できない対応のされ方をして、尊敬していた祖父だっただけに悔しい思いをしました。その悔しさが介護業界を選んだ一つのきっかけです。

だから、来てくださる方には最期まで楽しく、ここに来てよかったなと思っていただける介護を目指しています。

2008年に仲間2人と妻とでNPOを立ち上げ、大規模な施設では難しい個人の生活リズムに沿った個別的なサービスの実現を目指しています。

コンセプトは「あなたらしく、わたしらしく、今を共に生きる」。ご利用者さんの行動を「待つ」ことやゆっくりと語り合ったりすることを大切に、家族的な運営を心掛けています。
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職員もご利用者さんも
自然体でくつろげる場をつくる

自分は基本プレイングマネジャーで、数字の管理や施設長との方針の擦り合わせなどのほか、ご利用者さんの送迎なども手伝います。

スタッフは20代の若手が中心で、あらかじめご利用者さんの身体の状況などは伝えますが、あとはできるだけ先入観は持たず自然に接することを大切にしています。

ご利用者さんにとってスタッフは孫のような世代なので、お互い個性を出し合って、ワイワイ親戚の集まりのような雰囲気でやっています。
例えばレクリエーションでは、戦時中の「敵性語(英語など)」を日本語で何と言っていたかを答えるゲームなどで盛り上がります。

パーマは「電髪」、ピアノは「洋琴」といった言い換えでスタッフが知らないことをご利用者さんがパッと答えると、みんな感心したり、ご利用者さんも記憶が甦ったりして幸福な時間が過ごせます。

多賀城「月の市」に参加、
地域復興の旗振り役に

震災前に3拠点目のデイサービスを計画していたのですが、震災後は市内の不動産が急騰し、しばらく新設は困難な状況です。

そんな中、事業とは別な形で地域へ貢献できることはないかと医療、飲食、建築、食品、流通、美容室など他業界の方々が集まる多賀城「月の市」という団体に参加。

「多賀城を元気にしよう!」と、地元や全国各地のB級グルメを集めた5000人規模の大会や、青森のねぶたを招へいした地元での夏祭りを盛り上げました。

いまは雪祭りの開催に向けた準備を進めているところです。震災で知った人々との絆・ネットワークの大切さ。それを忘れずに日頃からいろいろな場所へ積極的に顔を出すようにしています。

「自分を育てる大学」で
地域で介護する魅力をアピール

これまで業界の横のつながりを通じて情報交換しながら、草の根的に業界を変えていこうといろいろやってきましたが、それだけでなくやはり地域で介護することがいかに魅力的かをもっと外に伝えていく必要があると思っています。

手始めに会員制の「自分を育てる大学(仮称)」を業界横断でインターネット上に立ち上げて、その講師の一人として介護の魅力を伝えていこうと考えています。

介護や福祉の仲間で悩みや夢を夜な夜な語る「夜考虫。」という活動では、震災復興のあり方を考えるイベントを継続しながら、さらに幅広い層にも業界をアピールする方法がないか、みんなでアイデアを出し合っているところです。
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文: 高山 淳
写真: 中村泰助、山田彰一
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