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福祉をおしゃれに提案するフリーペーパー「wel-bee」。発行しているのは上智大生を中心とした大学生たちです。発起人である森近恵梨子さんは、創刊のきっかけを福祉に対するみんなのイメージギャップだったと言います。いま一番興味があるのは高齢者介護という森近さん。大学生たちが見て、聞いて、感じた介護の魅力を聞きました。 (※この記事は2012年以前のもので、個人の所属・仕事内容などは現在と異なる場合があります)

福祉に対するギャップを埋めたい

(森近)「wel-bee」は、私自身が福祉について感じたギャップを埋めたいと思ったことからスタートしました。福祉というと、恵まれない人に何かをしてあげるというイメージを持っている人も多いと思います。私も入学前はそうでした。でも、大学で学ぶうちにそれは違うということが良く分かりました。

福祉は、恵まれない人のためだけのものではなくて、みんなが今より、より良い状態になっていくために社会基盤を創るもの。授業では、社会保障や制度など幅広い分野を学んでいます。でも、友達に福祉を勉強しているというと、「おむつ替えしているの?えらいね」と偏ったイメージを持たれていたり、ボランティアに参加してもぜんぜん若い人がいなかったり。福祉は、“みんなのためのもの”のはずなのに、現実は違う。この溝を埋めるために自分に何かできることがないだろうか。と思うようになったのが大学2年生になった頃。最初は、ブログで情報発信しようと考えましたがインパクトが薄い。

そこで、フリーペーパーを思いつき友達に話をしたら、「一緒にやろうよ。今からやろうよ」と背中を押してくれたんです。
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福祉をおしゃれに提案したい

(森近)こうして2010年の4月ごろから、手さぐりで準備を始めました。とにかく、地味なものを作ってもきっと誰も手にとってくれない、一見何かわからないおしゃれなフリーペーパーにして、興味を持ってもらおうと考えました。まず、学生でフリーペーパーを作っている人に話を聞き、企画・編集・取材・構成・入稿、協賛企業の見つけ方まで、イロハを教えてもらいました。同時にメンバー集めを開始。友達や知り合いの1年生に声をかけ、社会福祉学科を中心に15人が集まってくれました。記事は、メンバーがそれぞれ興味のあるテーマで、企画を立て、取材をすることに。

創刊準備号では、大学生に福祉の意識調査を行ったり、認知症の予防法として注目されている回想法の取材に行ったり。デザインはプロの方にお願いしたのですが、雑誌とは何か、誌面をどう見せるかを教わりましたね。時には「そんなのつまんないよ」と、過激なアドバイスもくださって。最初は大学のレポートみたいだった原稿が、楽しいものに仕上がっていき、わくわくしました。

学生発!フリーペーパー創刊、そして広がる反響

(森近)誌名である、wel-beeは、福祉をあわらす「wel-being」が由来。みんなでより良い生活を送れるようにする、そんな意味が込められている言葉です。記念すべき第一号(創刊準備号)は、2010年12月に完成しましたが、ネットを見た新潟の大学生からゼミでとりあげたいと連絡をもらうなど、思いもよらない反響もありました。2011年4月の創刊号では、大学生ボランティアや障害者アート、話題のイクメンを取り上げるなど、より多彩な切り口から福祉を紹介しています。

(高山)僕が、wel-beeに参加して驚いたのは、介護業界の方たちからの反響がとても大きかったこと。僕たちが、「こういうことをしたい」と訪ねていくと、「僕らも若い人に伝えたい。けれどやり方が分からなかった。うちらもがんばらなきゃ。嬉しいよ」って、さらに、知り合い、知り合いと紹介してくださって。去年の春休みは、毎日誰かとお会いしていましたね。介護業界を変えたいという方は多くて、「今の現実はこうだけど、こんなふうに変えていきたい」というお話を聞くことで、自分たちの考えも成長していきました。

ソーシャルビジネスのヒントがここに?

(高山)若者の反応という意味では、僕は、成人式で友達に「wel-bee」を見せたのですが、「今度ソーシャルビジネスの話をしようよ」と、そんな話になったりしましたね。今、学生の間では、ソーシャルアントレプレナーの人気が高くて、将来の仕事についても、経済やビジネスオンリーじゃなく、公共や社会貢献に興味を持つ人が多い。そこで、「今、介護業界が伸びているんだよ」と言うと、「どういうこと?」って興味を持たれます。

僕自身、高校生の時、グラミン銀行(※)を知って以来、仕事をしながら日本を豊かにするソーシャルビジネスに注目しています。お金を稼ぐだけの仕事じゃなく、社会を変えていく働き方。wel-beeには、そのヒントがあると思います。
wel-beeとしては、昨年は、フリーペーパーの発行以外にも、施設との協働でイベントを運営したり、メディアとのタイアップで記事を載せていただいたり、様々なかたちで情報発信を行うことができて、活動の幅が広がりました。3年目の今年は、基盤をより強固に、フリーぺーパーも年4回発行を目指していきたいですね。
※バングラデシュでムハマド・ユヌス氏により設立された銀行。貧困層を対象に、自立支援のため無担保で融資を行っている。2006年、ノーベル平和賞受賞。

介護のアルバイトで
お腹が痛くなるくらい笑ってます

(森近)私が一番興味があるのは、高齢者介護なんです。1年生のときにいろんなボランティアに参加しましたが、高齢者の方と関わるのが楽しくて。自分とは違った価値観に出会って驚いたし、とても面白いと感じたんです。例えば、戦争の話。TVで見ていてもぴんとこないけれど、自分が体験したリアルな話を聞くというのは、臨場感や感情が伝わってきて心が揺さぶられます。それに、「お肌は今のうちに大切にお手入れしなさいよ」とか、「運動はしときなさい、足は一番大事よ」とか、人生の先輩なので、どんな雑誌を読むよりアドバイスになる。日々勉強できるんです。

私も、ボランティアをする前は、「暗そう、地味かも」ってイメージがあったけれど、行ってみて変わりました。
今は週に2回、小規模多機能型居宅介護施設でアルバイトをしていますが、一緒にかけっこをしたり、バドミントンをしたり、毎日お腹がいたくなるくらい笑って過ごしています。そして何より、多くの「介護の現場を変えていきたい」という方に出会い、みなさんそれぞれがほんとうに魅力的で、私も一緒に変えて行きたいという思いが強くなったのです。

若者の力で介護現場は変えられる!

(森近)現場で感じたのは、絶対的な人材不足です。日々の生活介助で労力を使い果たしてしまい、コミュニケーションをする時間もない。利用者の中にはTVの前でぼーっとしてるだけの方もいらっしゃって、何とかできないだろうかと感じました。以前、女子高校生がグループホームで高齢者にネイルアートを行うところを取材したのですが、こんなふうに特技を活かして利用者さんを喜ばせることもできるのだから、若者が特別な資格がなくてもできること、お話したり、特技を披露したりしたらどうだろう。もっと、若者の力で現場を変えていくことができればいいのにと、思いました。

先日、美容師さんに介護のアルバイトの話をしたら、はじめは「超大変そうじゃない?」という反応でしたが、「一緒に買い物行ったり、散歩行ったりして、お給料もらってるんです」と話したら、「超楽しそうじゃん。それに、お年寄りに優しい男子とかいたら超かっこいい」と言ってくれて(笑)。ファッショナブルなギャルにも魅力的に感じてもらえるんだなと、若者と介護を繋げていける可能性を感じました。

将来は、介護版wel-beeを事業化したい

(森近)将来は、wel-beeの介護版を作って事業化していきたいと考えています。いい介護を実践している事業所はいっぱいあるし、素敵な方もいっぱいいる。それをもっと若者とつなげていきたいんです。フリーペーパーを発行するだけでなく、ボランティアのコーディネートをしたり、施設と協働して若者向けイベントを企画したり。まずは、どこかエリアを絞って、そのエリアの介護事業者と若者をつなぐ拠点として、人や情報が集まってくるような場所を創りたいですね。すでに、各地の社会福祉協議会に聞き取り調査を行うなどして、ビジネスプランを練っているところ。きちんと、フリーペーパーやイベントの効果が測れる形にしたいと思っています。「みんなの夢アワード2012」(※)最終選考で中野サンプラザにて2200名の前でこの夢を語りました。受賞は逃しましたが、「絶対に実現する!」という決意が固まりました。これから、後戻りはせず常に前進していきたいと思います。

※みんなの夢アワード
NPO法人みんなの夢をかなえる会が主催する、「みんなをワクワクさせ、みんなが夢をもちたくなるすてきな夢に贈られるアワード」。受賞者には夢を実現するための賞金が贈られる。
[
文: 鹿庭 由紀子
写真: 山田 彰一
]
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