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特集記事

2023.01.27 UP

クリエイティブの力で“介護職員自身に誇りを”介護の魅力発信を行う「一般社団法人KAiGO PRiDE」

トヨタ・レクサスを始めとする国内大手企業のCM・映像制作を手がけるクリエイティブディレクターである、代表理事のマンジョット・ベディさん、(一社)熊本県介護福祉士会会長・(公社)日本介護福祉士会相談役であり、特別養護老人ホームの施設長を務める、石本淳也さん、日本ファンドレイジング協会認定の准認定ファンドレイザーであり、法人の実務運営を担当する小口貴幸さん、の3名の理事で2020年12月に一般社団法人KAiGO PRiDEを設立。クリエイティブの力により、介護の魅力発信を行うことに挑戦。一般社団法人KAiGO PRiDEでの取り組み内容や、取り組みを開始された背景について小口さんにお聞きしました。

誰もが自分らしく安心して暮らせる社会を実現する

――どのようなことに取り組まれていますか?

一般社団法人KAiGO PRiDEは、クリエイティブの力で、介護を中心とした社会福祉及びソーシャルサポートをブランディングし、誰もが自分らしく安心して暮らせる社会を実現することを目的とする非営利法人です。
社名にもなっている「KAiGO PRiDE」は、2019年に厚生労働省が主導する「介護施設等における生産性向上に資するパイロット事業」の一環で、熊本県の「介護の魅力発信」活動として実施されたプロジェクトが始まりです。そもそも介護業界の中、つまり介護職員自身が「介護の価値」や「世の中からの期待」に気づいていないと考え、介護職自身が誇りを持つことで「Self respectを社会からのRespectに」というKAiGO PRiDEのコンセプトが生まれました。

プロジェクトでは、介護職が持つマインドのカッコよさを見える形にすべく、熊本県内の50名の現役介護職員のポートレート写真と介護職員のインタビューを中心とした動画「My Story」を制作し、「介護の日inくまもと2019」で公開し、延べ2000人が来場されました。パイロット事業終了後もプロジェクトは継続し、山形県をはじめとして徐々に全国からの問い合わせが増える中で、運営主体の明確化と窓口の一元化を目的に法人化し現在も取組を広げるため活動を続けています。

介護業界におけるどんな問題に対峙されているのでしょうか?

私たちの活動目標の根本にあるのは介護人材不足の課題です。生産年齢人口が減少し続ける日本の福祉や経済の持続可能性のために、より幅広い世代の活躍が求められています。ですが、現状では介護を理由に仕事を退職せざるを得ない、仕事に就けないという事態が発生しており、このような問題を少しでも減らすことが求められています。しかし、日本の現状はそれに反し、増える高齢者(≒求められる介護人材)に対して介護職員数は横ばい傾向であり、このままでは2040年に約69万人の介護職員が不足すると言われています。

このような状況にあるにも関わらず、日本の社会には介護に対してネガティブなイメージがあり、その先入観で就職の選択肢にならないことや、入職しても自身の仕事に誇りを持てない場合があります。
一方で、一歩業界に入って話を聞くと介護に対するやりがいや魅力をたくさん聞くことができます。そして介護という仕事は非常にクリエイティブな仕事で、これからの時代になくてはならない価値のある仕事だと知ることができます。

――介護職が価値のある仕事であることをどのように広められているのでしょうか?

その真実を見える形にしていくことが、今、何よりも必要なことだと考えています。しかし、誰が語ってもいいかというと、そうではありません。介護職一人一人が介護に対して感じているパッションそのものを、そして彼らこそが知っている介護の魅力を、その人自身の言葉で発信してもらうことで初めて説得力が生まれます。PRは波紋だ、と言われます。物事を広げていきたいとき、それは中心からしか広がらないということを表したマーケティングの考え方。では、介護の魅力を広く社会に発信していこうとしたときに、介護の中心とは何なのか。それは、今この瞬間に最前線で働く介護職たち一人一人のマインドです。彼らの胸に宿る、介護という仕事への誇りです。

当法人の撮影や作品鑑賞を通して、「改めて介護の魅力に気づいた」「辞めようと思っていたが、辞めることを止めた」「辞めていった同僚にもう一度声をかけてみます」などの声をいただきます。社会福祉協議会やハローワークとの連携で作品展示を行なったところ、それまでずっと定員割れだった職業訓練が期日を待たずに定員に達したこともありました。そして何より、モデルとなった介護職達が作品を通して、自分たちで介護の魅力を発信するように変化しています。

――その他どのような活動をされているのか詳しく教えてください!

全国を対象に、コロナ禍で奮闘する介護職にエールを送るため「KAiGO PRiDEありがとうポスター」の無料配布や、介護業界に持たれがちなネガティブなイメージの払拭のために、各地域での取り組み事例の共有を行う、「KAiGOの魅力発信全国シンポジウム」を開催しています。26都府県から介護行政担当者などが参加いただいております。また、各自治体との取り組みとして、各エリアの介護職員の方のポートレート展示を行うことや、市長や県知事の方を招いてのトークセッションなどを行っております。

中でも富山県では2022年5月8日に「KAiGO PRiDE@TOYAMA 母の日イベント」を実施。親子ポートレートを富山駅構内に展示し、富⼭県内を中⼼に介護施設等で⾳楽活動をされている「シンガー英樹 様」による⺟の⽇や介護にちなんだミニライブを⾏うなど、駅を⾏き交う多くの⽅に新たな切り⼝での介護の魅⼒発信を⾏いました。観覧者は述べ 2051 名(KAiGO PRiDE 調べ)となり、イベント実施日は GW 最終⽇ということもあり、多くの⽅に作品を⾒ていただくことができました。⾼齢者の⽅から親⼦連れまで、幅広い世代にご覧いただき、中には涙を流しながら⾒られている⽅もいらっしゃいました。

今後の構想について、教えてください!

令和4年度、KAiGO PRiDE関連で取り組みを行う自治体(都道府県ベース)は、予定・検討中も含み以下の通りで、今後はKAiGO PRiDEの行う取り組みを全国各地に広げていきたいと考えています。

北海道、秋田県、岩手県、山形県、福島県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、富山県、福井県、広島県、岡山県、高知県、長崎県、熊本県(順不同)

▼KAiGO PRiDEの取組に興味がある自治体の方は公式HPのお問い合わせフォームからhttps://kaigopride.jp/

介護人材不足の課題は、日本全体の課題です。業界内外が連携し、地域や団体の壁を越え、All japanがOne teamにならないと「社会のマインドを変える」という大きなことは為し得ません。当方人では全国の介護職の声と想いを届けるプラットフォームとして、「KAiGO PRiDE」というOne message/One conceptで発信を行い、社会の認識を変えていきます。そして、年と取らない人は誰もいない中で、誰もが自分らしく暮らせる社会につなげていきます。

今回ご紹介した法人
◆一般社団法人KAiGO PRiDE
HP(https://kaigopride.jp/
SNS(https://kaigopride.jp/sns/

 

【文: 一般社団法人KAiGO PRiDE,HELPMAN JAPAN  写真: 一般社団法人KAiGO PRiDE 提供】

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