業界最新トレンド
「煮込みハンバーグ」「すき焼き」「えびと野菜のコンソメ ゼリー寄せ」・・・。見た目も華やかでおいしそうなこれらの商品は、すべてキユーピーが販売している介護食です。ヘビーユーザーも多いという人気の秘密は、何より「食事としてのおいしさ」を追求していること。食の好みの変化に応じてメニューも変わりますから、団塊世代に介護が必要となってくる今後は「100歳をすぎてもハンバーガーやコーラを楽しめる」という時代が来るかもしれません。
プロフィール紹介
中束美幸さん(左)/商品開発本部 家庭用開発部 加工食品ヘルスケアチーム。施設用介護食の営業などを経て「やさしい献立」シリーズの開発担当に。主にマーケティングなどの見地から、おいしい食事としての介護食を追求する。

伊藤裕子さん(右)/研究開発本部 商品開発研究所 加工食品開発部。管理栄養士。介護食事業の立ち上げ時から開発等に長く携わる。介護食はお客さまから感謝されることの多い分野。そうした声を励みに介護食の進化と共に歩む。

何より「食べておいしい」
メニューをお届けしたい

介護食というと、かなり特殊なメニューというイメージかもしれません。でもキユーピーが家庭用介護食「やさしい献立」シリーズの開発でずっと大切にしてきたのは、まず「食べておいしい」こと。おいしいもの、食べ慣れたものをたくさん召し上がって心も身体も元気になっていただきたい、という思いで取り組んでいます。

また、介護をする方の手助けとなるよう、根菜など家庭での調理に手間がかかるような素材を多く取り入れていることも特徴です。お肉も以前はミンチにして食べやすくしていましたが、お肉を軟らかく調理するなどの技術開発をしてメニューの幅を広げてきました。

「やさしい献立」シリーズは、定番のごはんものや和洋さまざまなおかず類、デザート類まで、現在60品目をラインナップし、自由に組み合わせて食事を楽しんでいただけます。
近年では売り上げも毎年平均20%ほど伸びており、認知が広がってきた確かな手応えを感じています。
もっと読む

食べたいという気持ちを
呼び起こさせる商品を

介護食では「栄養不足」や「食べやすさ」も大きなテーマですから、私たちもその点に配慮してメニュー開発をしてきました。ところがキユーピーの最近の調査では、在宅介護における食の困りごととして、「食欲低下」がもうひとつの大きな問題としてクローズアップされていました。そこで、これまで以上に「食べたい」と思っていただけるメニューの開発が、キユーピーの新しいテーマとなりました。

そして誕生したのが果物を使ったデザート類、さらに「えびと野菜のコンソメ」などゼリー寄せの新シリーズです。社内では「ワインにも合いそう」という声が上がるほど、見た目にも楽しくおいしいメニューができました。

ゼリーにしたのは「食べやすさ」のためでもあり、あわせてすくったときにスプーンから滑り落ちにくいように仕上げています。食事は「ご自分で召し上がること」が大きな喜びであり元気のもとでもありますから、その可能性を広げられた商品でもあります。

業界をあげて取り組む
ユニバーサルデザインフード

1999年、キユーピーが「やさしい献立」シリーズを発売した当時は、まだ他に家庭用の介護食は市販されていませんでした。そこで業界が足並みをそろえて発展していこうと、キユーピーを含む食品メーカーが中心となって2002年に「日本介護食品協議会」を設立。「ユニバーサルデザインフード(以下UDF)」の規格や、「容易にかめる」から「かまなくてよい」まで、商品を選ぶ基準となる4つの区分を設定しました。

UDFとは、日常の食事から介護食まで幅広くお使いいただける、食べやすさに配慮した食品のことです。介護食と聞くと抵抗を感じられるかもしれませんが、一般の方からも、例えば「カゼをひいたときに役立った」といった多くの声をいただいています。介護という垣根を越えて、より多くの方に役立てていただけるようUDFの裾野を広げていく活動にも、これから一層力を入れていきたいと考えています。

メーカーが違う商品でも
一目でわかりやすく

日本介護食品協議会には、食品メーカーのほか、容器などの資材メーカーや原料メーカーなど50社以上が参加しています。商品の使われ方を調査してみると、意外に召し上がる方ご本人が開封されることが多いことがわかりました。

そこで開け口のわかりやすい表示や、UDFのロゴマークやどの区分の商品かが一目でわかるマークの記載、さらに各社がその印刷位置の統一を図るといった取り組みを進めてきました。メニューの開発はもちろんですが、パッケージのデザインや使い勝手を含めて全社が連携し、よりお使いいただきやすい環境づくりを進めています。

そうした中、キユーピーも加盟企業に対して開発した特許の使用を許諾するなど、協議会設立以来の会長企業として業界全体の発展に努めています。協議会はライバル企業が集う場でもありますが、問題意識を同じくする仲間同士でもあります。「UDFをより社会にとって役立つものにしたい」という共通の思いで、さまざまな課題解決に取り組んでいます。

おいしい食事を通じて
日本を元気にしていきたい

食の好みの変化などに対応できるよう、「やさしい献立」シリーズは毎年春と秋に内容を見直しています。新商品の追加はもちろんですが、定番商品もお客さまの声を聞きながらリニューアルし、よりよい商品づくりを続けています。

またこれまでも三度の値下げを行ってきましたが、「もっと安価に」「もっと買いやすく」といった取り組みもさらに続けていきます。身近なスーパーやコンビニの店頭にも並んでいて気軽にお買い求めいただけ、若い方にも広く知っていただける。そんな環境を整えていきたいと考えています。

お客さまからは「この商品があってよかった」という声をいただくことも多く、励みになるとともに食に関わる責任の大きさを感じます。開発、製造、販売などこの商品に関わるすべての社員が、誇りを胸に取り組んでいます。これからもお客さまの声に耳を傾けながら、「おいしい食事」としてのUDFの進化と普及に向けて、キユーピーは歩み続けていきます。
[
文: 小野田直人
写真: 平山諭
]