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2015.10.15 UP
歯ごたえのある筑前煮のタケノコやレンコンを、分厚い牛肉のステーキを、まるでプリンをすくうかのようにスプーンで簡単に崩せる――。しかも、見た目も風味も、栄養もほとんど通常のものと変わらない。
テクノロジーの進化が生み出した、驚きの介護食。これは広島県立総合技術研究所が開発した「凍結含浸法」や、イーエヌ大塚製薬による「酵素均浸法(酵素均質浸透法)」が実現したものです。
キーワードは、「酵素」。食材を酵素液につけ、圧力の変化を用いて酵素を食材の内部へと一気に染み込ませる仕組みで、染み込んだ酵素が、食材の細胞同士の結合を断ち切って軟らかくしてくれる。お肉をパイナップルに漬けると柔かくなるのと、ちょうど同じ原理です。
これらの技術を用いた食品は、すでに介護現場でも活躍中です。かむ力が低下して食欲の落ちたお年寄りの食が進んだり、きざみ食や流動食では食事に2時間かかっていたという高齢者が、凍結含浸法を用いた食事で食事時間が20分にまで短縮されたり。また、見た目や味を楽しむだけでなく口から食べて消化器官を働かせることで、全身の機能が回復しやすくなるというメリットも。一般的な認知度はまだまだ低いですが、注目したい技術です。
HELPMAN JAPANでは、これまでも次々に発展する高齢者食・介護食市場に度々フォーカスしてきました。最新の数字に注目すると、今や同市場の潜在的な規模は2.8兆円との試算が(※)。2016年1月開催の高齢者食・介護食の専門展示会「メディケアフーズ展2016」では、また新しい技術や驚くべき商品に出合えるのでしょうか? 続報にご期待ください!
※ 要介護認定者561万人×(介護保険上の1日当たりの食費の基準費用額(1,380円)×365日(農林水産省試算)平成27年度行政事業(医福食農連携推進環境整備事業)レビューシートより
【文: 成田敏史(verb) イラスト: 株式会社コットンズ】