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行政・自治体の取組

2022.03.04 UP

全国から参加者が集まるイベントに!市民参加型のオープン会議が生んだ豊中市の『いきてゆくウィーク』

高齢者の社会参加や多世代交流、介護の魅力発信を目的にしたイベントが豊中市主催で2021年11月7日~11月13日まで、オンライン(一部、現地開催)で行われた。これまで約20年間続いた「いきいき長寿フェア」のリニューアルを行い、学生・企業・市民・市民団体・福祉関係者など、誰でも企画段階から参加できる「オープン型」の実行員会で事業を練り上げ、これまでにない新しい取り組みが数多く生まれたそう。高齢者が被写体となって、おしゃれに撮影された写真がイベントをさらに盛り上げた。
今回は、イベントを企画した豊中市の担当 図師様に、詳しいお話をお聞きする。

立場や背景、目的の違う者同士が、それぞれの強みで創るからこそ生まれた“面白い”かつ“まじめな”イベント

――今回の『いきてゆくウィーク2021』を開催するまでの経緯を教えてください!

『いきてゆくウィーク』は、豊中市・豊中市介護保険事業者連絡会の共催で約20年にわたって開催されてきた「いきいき長寿フェア」をリニューアルしたイベントです。フェアが始まった当時から、当事者である高齢者の方に喜んでほしい、と始まったイベントではありますが、もっと多くの人にこのイベントを届けたい、知って欲しいなどの課題をもっていました。
2年前より、イベントの方向性を決める会議体のメンバーである、福祉事業所の職員とともに、ワークショップなどで検討を重ねてきました。あくまで行政はファシリテーションをし、現場の介護職員が主になって意見を出す。そのワークショップを通じて、20年前から大切にしていたイベントの目的を今の状況に合わせて「高齢者の社会参加及び多世代交流」「介護の魅力を発信する」「介護保険制度を正しく知ってもらう」にリニューアル。それとともに、イベント自体の刷新も図ることとしました。

本イベントの最大の特徴は、企画段階から、学生、企業、市民、市民団体などにも参画していただけるような「オープン型」の実行委員会形式で実施したことにあります。以前は、実行委員会を行政と介護事業者のみのクローズで企画検討していくスタイルだったのですが、多様なメンバーが関わることで、新しいアイデアの創出や市民・地域の巻き込みを期待して企画しました。
具体的には、7月に、誰でも参加できる「オープン会議」を開催して、継続して関わりを希望する方と実行委員会を立ち上げ、介護事業者や看護師、大学生、民間企業、一般市民、介護家族の方が集まり、ワークショップを開いてアイデアを持ち寄りました。結果的に実行委員会メンバーは、前身の「いきいき長寿フェア」から関わってくださった介護事業者のほか、学生や企業、市民、市民団体など新たに参加する方々で構成されました。

▲「オープン会議」の様子。この「オープン会議」はオフライン・オンラインで実施。延べ約60人が参加した。

イベントを企画する中で特に苦労した点は、それぞれの立場や背景、目的が違う者同士が、意見をすり合わせつつ、同じ方向を目指すイベントを創っていくことです。特に、実際の介護サービス利用者や介護者家族の実態を把握する現場職員の想いと、介護を楽しく伝えたいという新しいメンバーの想いの共有は大変でした。
例えば、介護を一般の方に知っていただくために、“魅せ方”や“デザイン”など、表面的な企画の面白さのみにこだわってしまうと、介護現場の正しくまじめに介護を伝えたい思いを軽視することにもつながりかねない。これまで長年関わってきてくださった方の想いをベースにしつつも、デザインし直していく過程は、相応の時間を要しましたね。結果的に、高齢者当事者や介護従事者に配慮しつつも、前例にとらわれない新コンテンツの創造やデザイン面で大きく変わり、それぞれの強みを生かしたコンテンツを作り上げることができました。そうすることで、これまで参加されなかった学生や子育て世帯の参加にもつながる効果も生まれました。


▲「オープン会議」の案内チラシ。デジタルとアナログの両方を使い、イベントの告知を行った。オンラインでのSNSを使用した宣伝は、Facebookをメインに行い、20~40代の方を対象に宣伝を行う。一方で、シニアの方向けには、豊中市内の公共施設や地元商店、コミュニティサロンなど、生活線上にチラシを置くことで目に触れる機会とした。

――イベント当日の様子についても教えてください!

本イベントについては、リアルでの開催をめざしていたものの、全国的な感染拡大の影響をうけて、急遽オンラインでの開催に転換しました。オンライン開催になったものの、3日間で合計460名ほどと、高齢者や多世代含めて多くの方に参加いただいたことは一定の成果がありましたね。豊中市の方はもちろん、関東の方など全国から参加いただきました。

イベントの主なコンテンツは、「いきてゆく写真館」「いきてゆくウィークトークライブ!」「おばあbar」、自分の最期について向き合い、周りの人と共有する「『最期』の話をしよう」など。どのコンテンツも、タイトルに“面白さ”や“楽しい”印象が感じられ、興味を持ってもらえるようにすると同時に、介護やケアの考え方をベースとした構成です。

コンテンツ内容の一部をご紹介します。

●『おばあbar』

「誰かに話を聞いてほしい。」「おばあちゃんに褒められたい…」というような参加者の悩み・想いを、人生経験豊富な「おばあ」たちがお答えする企画。「おばあ」1人に相談者が数人で、おしゃべりしました。
高齢者の社会参加に加え、相談を受けるということを通じて、これまでの経験や特技などのできることを生かしつつ、主体性を大切にしてほしいという想いから生まれたコンテンツ。高齢者というと、何かと支援を受ける側となってしまうイメージがある中で、支える側として、多くの参加者のお悩みをお聞きしました。

▲『おばあbar』で悩み相談に応える様子。「子育て」「恋愛」「生き方」等、多感な時期に悩むことをテーマに、5名の方が回答。最後は全員で知恵を絞って、相談者の悩みに向き合った。

 

●『いきてゆく写真館』

いつもどんな時代でも、自分らしくいき、そして今をいきている、豊中市内に住む高齢者たちの写真展。“歳をとる“というと、どうしてもマイナスに捉えられがち。そのイメージを変えるためにも「こんなにも素晴らしくって、カッコ良い」ということを伝える機会となりました。


▲本コンテンツについては、感染症対策を実施したうえで現地開催され、約100名の方が来場した

 

60歳から100歳まで、20名近い方を撮影したスタッフの水本さんからは、「豊中市にある岡町商店街を舞台に、あっちで撮ろう、これ着てみて、と言いながら撮影しました。車椅子移動なのに、これ掴んで立ってみて、鏡にもたれてみて、と我儘を炸裂させたのですが、気合いが入る様子で長く立っていらっしゃり、スタッフを驚かせていましたね。あとは『失礼になるんちゃうかな』と内心ではビクビク。しかし動じない懐の深さに触れて、年齢に関係なく、今を楽しめることが、長い人生を生きていく秘訣なのかもしれないと感じました。」と、撮影当時を振り返っています。

▲実際に写真展でも展示されたお写真(上・下)

 

●『いきてゆくウィークトークライブ!』

日本の各地で、福祉や地域包括ケア、介護にまつわる活動を行う人たちがたくさんいる中で、その方々をゲストにお招きし、トークライブや座談会を開催。連日さまざまな角度で福祉にまつわる取り組みをしているみなさんをお呼びすることで、参加者の視野を広げ、新たな福祉の可能性を感じていただきました。
講義形式ではなく、グループワーク機能を用いて参加者同士の交流も行うことで、横のつながりもでき、介護施設と市民活動団体が連携した新しい活動につながるなど新たな展開がありました。

イベント全体を通じた参加者の感想としては、「高齢者や介護の延長線上には“死”や“老い”は切っても切り離せませんが、今回、イキイキと自分らしく生活されている高齢者やそれを支える介護職員さんと接点を持つことで、高齢者や介護のイメージが大きく変わりました。」など、プラスの声をいただくことができました。

――リニューアルした『いきてゆくウィーク』。これから先、どうされていきたいかお教えください!

高齢者を中心に参加をめざしていくイベント趣旨から考えると、来年度にはリアルでの開催をめざしていきたいです。例えば、商店街と連携して実施することも検討しています。一方で、今回のイベントを通じてオンラインの価値も感じられたので、それぞれの良さを利用したハイブリット版で展開できればと思います。
『いきてゆくウィーク」は、まだ道半ばの状態です。今後も、さまざまな方が企画段階から関わっていただくことで、みんなに育てていただき、さらにネットワークも広げ、皆さんに喜ばれるイベントになればよいと思います。

 

▼イベント「いきてゆくウィーク2021」の詳細案内

https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kenko/kaigo_hukushi/tyoujyu-fair/ikiteyuku.html

――図師様、ご紹介いただきありがとうございました。

本イベントは行政や団体、企業が主導で行うのではなく、コンテンツ企画から市民が参加し、かつ介護を受ける当事者である高齢者も、主体としてイベントを盛り上げた。限られた人だけでなく、様々な立場の人が、福祉や介護を自分事として捉え、一同で介護のイメージを変えていく取り組みは、これからの社会にさらに求められていくのではないだろうか。

【文: 豊中市・HELPMAN JAPAN 写真: 豊中市】

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