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機械警備や常駐警備、ホームセキュリティなどの警備事業をトータルに手掛けている綜合警備保障株式会社(以下、ALSOK)。同社では、通常のホームセキュリティに加え、見守りシステム、介護施設の運営と、高齢者に関わるサービスを多部門にわたって展開している。警備と介護の共通項である“守る”“安心”に基づく信頼性が、何よりの強みだ。今回の取材では、介護事業部長の伊藤 貢さんをはじめ高齢者向けの事業に携わる方々にお話を伺った。

ホームセキュリティから介護まで
トータルで高齢者の生活を支援

ALSOKが介護事業をスタートさせたのは2012年。100%出資子会社を設立(2015年に組織再編)し、訪問介護サービスを手掛けた。2014年には、株式会社HCM、2015年にはALSOKあんしんケアサポート株式会社(旧・アズビルあんしんケアサポート株式会社)、2016年には株式会社ウイズネットを子会社化。この3社のグループ化により、ALSOKは首都圏を中心に在宅介護や施設介護、福祉用具販売・レンタルをトータルに提供する事業基盤を整えた。2017年6月現在では、3社合計で訪問介護105拠点、デイサービス35拠点、グループホーム83施設、介護付き有料老人ホーム等55施設、福祉用具販売・レンタル事業所6拠点を展開し、利用者数は約1万2,000人にのぼる。2017年度の介護事業での売上高は約250億円である。

同社における介護事業の経緯について、介護事業部長の伊藤 貢さんは次のように説明する。

「もともと当社は銀行や一般事業会社などの法人の警備を得意としてきました。そこから次第に個人向けのサービスであるホームセキュリティにも進出していったわけです。ホームセキュリティは家や財産をお守りすることが使命ですが、高齢者向けの見守り商品である『HOME ALSOK みまもりサポート』等の開発を通じて、そのサービス範囲を高齢者マーケットにまで徐々に拡大してまいりました。

その結果、現在の商品群は、高齢者の見守りに限らず、空き家や留守宅の管理、BLEタグ等を用いた地域みまもりシステム等、暮らしを支える幅広いサービスにまで及んでいます。

また、自治体が進める高齢者向け緊急通報事業においても、個人マーケットにおける当社実績と警備会社ならでの対応力を評価していただき、多くの自治体から業務のアウトソーシングを受けております。

介護への参入もこれら事業の延長線上にあります。現在、セキュリティ会社としての当社を信頼していただいているお客様、とりわけ、高齢化が進展する中で見守りサービス等をご利用いただいているお客様に対し、介護サービスも提供することを通じて、生涯にわたってお客様からの期待にお応えしていきたいと考えています」

高齢化社会が進展して介護市場が拡大し、業界内の競争も激しくなる中、警備会社である同社は何を強みとするのか。伊藤さんは次のように言う。

「1965年の創業以来50年以上経ちますが、警備会社として社会の信頼を積み重ねてきたと自負しています。その信頼をベースに個人のお客さまから家の鍵をお預かりし、いざというときはお宅に駆けつけ、“安心”をご提供してきたことは介護事業においても強みになると考えています。ご家族やご本人にとって、入居施設の運営だけではなく、施設自体の警備も提供できるALSOKならば、より安心していただけるのではないでしょうか。そのために、日ごろから介護施設と近隣のALSOK事業所が連携した避難訓練・災害訓練を実施するなど、“いざという時にもALSOKだから安全・安心”という体制を整備しています」
▲「いざというときはお宅に駆けつけ、“安心”を提供してきたことは介護事業においても強み」と語る伊藤さん
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スポーツ界とのつながりから
「ALSOKあんしんヨガ」を開発

同社は、“ALSOK体操”のテレビCMでもおなじみのとおり、オリンピック選手への支援にも取り組んでいる。こうしたスポーツ界との関わりによる元気でいきいきとした企業イメージを生かし、高齢者の健康づくり・介護予防のオリジナルコンテンツ「ALSOKあんしん体操」を開発し、介護施設などで実践しているという。さらにこのほど、シニアヨガインストラクター・トレーナーの助言も得て「ALSOKあんしんヨガ」を開発。椅子に座ったままで無理なく体操やヨガを楽しめる内容となっており、デイサービスなどで「シニアヨガ教室」を実施し始めたという。

「普段は消極的な男性のご利用者さんもレクリエーションとして参加されているようです。コミュニケーションの有効な手段ともなっていますね」

規模を拡大し、新たな試みを続けるALSOKの介護事業だが、今後の課題について伊藤さんはどのように捉えているのだろうか。

「介護スタッフの確保に取り組みつつも、ICT活用による省力化を進めることで、いかに事業を拡大していくかが重要だと考えています。人材確保という意味では、給源拡大を図るためシニア人材の活用も重要なテーマとなると考えています。省力化に関していうと、警備事業においては、かつてのガードマンによる人的警備の体制から、オンラインセキュリティシステムや無人管理システム、警備ロボットの活用によって機械化・省力化を図ってきた実績があります。こうしたノウハウを介護領域にも応用していきたいですね」
▲「呼吸法」「姿勢(ポーズ)」「瞑想」からなる約30分のプログラムを基本とする「ALSOKあんしんヨガ」

「みまもりタグ」「みまもりタグ感知器」を
地域包括ケアの有効なツールに

次に、ホームセキュリティ領域の高齢者向けサービスについては、HOME ALSOK営業部 HOME ALSOK企画第二課の主任、武内陽子さんにお話を伺った。同営業部は、これまで居宅の警備をはじめ、家事代行や女性のストーカー対策、さらには盗聴器探索といった個人向けサービスを幅広く手掛けてきており、2013年から“高齢者の見守り”サービスを開始。今年度からは、高齢者向けのサービスに特化したHOME ALSOK企画第二課が新たに発足されたという。

今年6月には、認知症高齢者の徘徊対策商品として「みまもりタグ」と「みまもりタグ専用靴」および「みまもりタグ感知器」の一般販売を開始。以前から、認知症の高齢者や女性、子ども向けに通話機能・安否確認付きのモバイル型見守りセキュリティデバイスの「まもるっく」を提供してきたが、GPS機能を搭載したことにより、認知症の高齢者にとってはサイズが大きいため常時携帯が難しいケースや、充電忘れなどの問題があったという。

「ケアマネジャーさんなどにヒアリングすると、認知症のお年寄りに常に何かを携帯してもらうのはハードルが高く、出先に置いて帰ったり、捨てられてしまうリスクが大きい、とのことで、当社では、小型化してキーホルダーにしたり、首から下げたりできないかと改良を検討してきました。そんな中、あるケアマネジャーさんから『靴に装着できると効果的では』とのアドバイスをいただいたのです。そこで、長さ56.5㎜、幅29㎜、厚さ11.6㎜と親指より一回り大きいサイズの『みまもりタグ』を開発し、これを実装して使用する専用靴を用意しました。靴は、介護靴のシェアトップメーカーの徳武産業さんに開発してもらいました」

「みまもりタグ」は、Bluetooth無線技術によって小型化を実現。約20mの範囲内でBluetooth無線をキャッチする装置が「みまもりタグ感知器」だ。感知器を自宅などに設置することで、高齢者の“外出”や“帰宅”を検知し家族にメールなどが届く。室内の動きも検知するので、一定時間反応がないときにも通知が届き、場合によって隊員が現場に駆けつける。室内の温度や湿度も測定するため、基準を超えた場合に通知することで熱中症の防止にも役立つという。

「この『みまもりタグ感知器』を街の各所に設置することで、街全体としてお年寄りを見守ることができるようになります。まさに“地域包括ケアシステム”の有効なツールになるはずです。たくさんの商店主さんや企業に、ボランティアで『みまもりタグ感知器』設置にご協力いただければと思っています」と武内さんは期待を寄せる。
▲ALSOKが開発した、みまもりタグと専用靴、みまもりタグ感知器。「靴のベルト部分にタグを収納し、履いても違和感がないようにクッション性を高めるなどの工夫をしています」と武内さん

国土交通省のモデル事業に
全国の10自治体で実証実験

これらの商品を活用した“地域の見守り”活動が国土交通省の「スマートウェルネス住宅等推進モデル事業」に選定され、2019年3月まで茨城県笠間市、東京都稲城市、奈良県生駒市など10の自治体で実証実験が行われる。費用の3分の2は国が、3分の1はALSOKが負担しており、実験終了後の効果検証を経て、さらなる拡大につなげる予定だ。

実証実験中ながら、「みまもりタグ」などの一般発売を決定した経緯について、武内さんは次のように説明する。

「市販を前提に開発は進めていたのですが、あくまでも実証実験後の発売を想定していました。ところが、国交省の実証実験に参画する情報が出たことで、自治体や介護事業者、さらには個人の方までから『どこで買えるのですか?』といった問い合わせが相次いだのです。そこで、自治体向けはもちろんのこと、個人の方や介護施設等に向けて発売することに決めました。施設側からも『ご入居者さんの徘徊に対する初動を早めたい』という声をたくさんいただいています」
▲「この商品は高齢者だけでなく、女性や子どもにも有効です。これから伸びる市場だと認識していますので、しっかり取り組んでいきたいと考えています」と武内さん

社内認定制度「ALSOK介助」を開発
現場に駆けつける全ALSOK隊員が修得

次に、警備の現場での取り組みについて、セキュリティサービス第二部 機械警備業務指導課の課長、庄司正吉さんにお話を伺った。同社では、緊急通報システム「HOME ALSOK みまもりサポート」をはじめ、高齢者向けサービスの拡大とともに、隊員が高齢者の元に駆けつけて対処することが増えてきている。こうした事態に対応するため、2015年から隊員が介助技能を習得する社内認定制度「ALSOK介助」を開発・導入し、2017年3月には全隊員が修得している。
▲「隊員からは『落ち着いて介助できるようになった』と好評」と語る庄司さん
実際の現場では、「ベッドに寝かせてください」「椅子に座らせてください」など、介助を要請されることが多いという。

「2014年以降、介護事業者がALSOKグループに入ったことも認定制度をつくるきっかけとなりました。それまで隊員は、護身術や救急救命処置の訓練は重ねているものの、高齢者介助の訓練は経験していなかったのです。そこで、介護のプロフェッショナルが持つノウハウを習得することにより、警備と介助の融合を図り、より安心してご利用いただけるサービスに磨き上げられるのではと考えました」

「ALSOK介助」の内容は、次のとおり。
●高齢者の心・身体への知識
・加齢に伴う身体機能の低下によるさまざまな障害への知識
・高齢者の認知症などへの知識
・接触時の感染症への知識
・高齢者の訴える容態への知識
●介助の知識・技能
・高齢者への声掛けの仕方
・容態の観察方法
・介助方法の基本実技(立ち上がり・起き上がり介助方法、歩行介助方法)
・身体機能のメカニズム(ボディメカニクス)

これらのプログラムを学んだ隊員は筆記および実技試験を受け、合格すると修了証が授与される。導入にあたっては、まずグループ会社の介助福祉士から指導を受けた所属員が本社指導員として認定される。その後、本社指導員が各種研修などを通じて各事業所の管理職を介助指導者として認定し、2016年度に492名が介助指導者試験に合格。その介助指導者が管轄するそれぞれの隊員に指導を行うという流れで全隊員への教育を完了させ、現状では全員が試験に合格している。
▲介助技能講習の様子
「隊員からは、『以前は不安を感じていたが、現在では落ち着いて介助できるようになった』といった声が届いています。お客さまにも一層安心してサービスを受けていただけるようになったのではと思っています」と庄司さん。

介護と警備はまったく異なる分野のように見えるが、今回ご紹介したALSOKによる数々の取り組みからも、「安心を提供する」「人に寄り添う」「危険から守る」など、その提供価値には多くの共通点があることが分かる。今後も、警備と介護のシナジーから、いままでにない新たなサービスが生まれ続けることを期待したい。
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文: 髙橋光二
写真: 刑部友康
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