ふたり
ふたり
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大野 裕俊さん
和が家の古民家デイ いぶき
社会福祉士
介護福祉士
生活相談員

山田 フヂエさん
和が家の古民家デイ いぶき
利用者
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千羽鶴

91歳になるフヂエさんは、冬場になると朝、頭が重くてふらつくようになり、デイサービスに来られない日が多くなった。大野さんは、そんなフヂエさんに「近くの保育園にプレゼントするので、千羽鶴を折ってみたらどうですか?」と声をかけた。「気持ちも重いだろうから」との気遣いだった。

「もう、うれしくなって。昔折ったことを思い出して、折り始めました」というフヂエさんは、小学生のころ、戦地に赴く父親に贈る千羽鶴を母親と折ったことを思い起こしたのだという。「一羽できると『これで誰か喜んでくれるかな?』って思うんです。一羽、また一羽と夢中になりました」

そんなフヂエさんが最初にプレゼントしたのは、「いぶき」で仲良くなった友達。転んで足を骨折し、近くの老人ホームに入居してしまったからだ。「よく笑う人で、あの笑い声が聞こえなくなってとてもさみしくなりました。早くよくなって、また『いぶき』に戻ってきてほしいと、大野さんと千羽鶴を持って行ったの」

すると、その友達は涙を流して喜び、フヂエさんも“もらい涙”を流してしまったとか。そして次は、生まれたばかりの大野さんの子どもにプレゼント。「元気でやさしい人になりますように、という思いで折りました」

生きがいをつくる

「自分の子どもにまでいただけるなんて、と感激しました」と大野さん。フヂエさんにとって、千羽鶴を贈ることがひとつの生きがいになったことから、これからも折り続けてもらえるようサポートしたいと意気込む。

大野さんの祖父は将棋が大好きで、よく相手をしていたという。その祖父が認知症で、将棋もさせなくなった姿を見て、介護の世界に転じる決心をした。

「元気がなかった方が、施設に通ううちに元気を取り戻してくれると、やりがいを感じます」という大野さん。利用者が好きなことや、人生のバックグラウンドを知ることもこの仕事の醍醐味だという。「ご利用者さんが夢中になったり喜ばれたりしている姿を見ると、こちらもうれしくなります」と大野さんは目を細める。
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文: 髙橋光二
写真: 阪巻正志
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