介護の現場から
2020.01.23 UP
介護の現場から vol.44
影山 純さん
プラウドライフ株式会社 はなことば相模原 ケアスタッフ
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金子 清子さん
プラウドライフ株式会社 はなことば相模原 利用者
お兄ちゃん、時々、坊や(笑)まるで家族のような存在
首元にリーフのブローチをのぞかせ、上品ないでたちと笑顔であらわれた金子さん。 影山さんのことを「お兄ちゃんみたい」な存在と話す。「だって、私の『あれしてちょうだい、そんなのイヤ!』ってやんちゃを言うのを受け止めてくれるから。でも、時には坊やみたいかな(笑)。とにかく、他人じゃないですね。家族です。私の人間らしさを取り戻してくれましたから」
自分も安心させられる場所
祖父母と接する機会が少なかった影山さん。この仕事を始める前は飲食業の仕事を続けていたが、同じサービス業ならと、好きなお年寄りに接する介護の道に。 「人生の大先輩からいろいろな話を聞いて、自分もまたしょーもないジョークを言って、楽しく過ごすことができています。こうしていると、安心感を覚えるんです。年長者とこういうふうに関わることに、飢えていたのかもしれませんね」
楽しみだった絵をもう一度
8年前にご主人を亡くし、一人暮らしを続けていた金子さん。5年前、先々を心配した家族が老人ホームを探し、「はなことば相模原」に入居する。「50年ほど暮らした家や、楽しみにしていた油絵の一式を捨ててきた私はどうなっちゃうんだろうって、当初は泣いてばかり。心をガチガチに閉ざしていました」と振り返る。 そんな金子さんを担当することになった影山さんやスタッフは、金子さんに日々、笑顔で「どうしました?」と声をかけたという。また、はなことば相模原では、自分の好きなコーヒーが選べたり、食堂のテーブルに花を飾ったり、上品なテーブルクロスを選んだりと、スタッフが利用者を喜ばせる工夫を重ねてきた。それらの行動が、金子さんの心の扉を少しずつ、少しずつ開いていく。
「施設ではできなかったと思っていた絵も、できると聞いて水彩画を始めたり。何より、くだらない冗談を言う影山さんに、つい笑わせられてしまって」
そう話す金子さんの心は「もう、全開状態」と笑う。
【文: 髙橋 光二 写真: 阪巻 正志】