介護の現場から
2017.09.28 UP
介護の現場から vol.41
湯本 亘さん
特別養護老人ホーム 大慈弥勒園 主任/介護福祉士
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林 純子さん
特別養護老人ホーム 大慈弥勒園 入居者
特別養護老人ホーム 大慈弥勒園/漫才のかけあいのように話すふたり
漫才のようなかけあい
「純子さんいくつね?」「88歳」「ほんまー。87歳にしか見えんわ」「はっはっはっ」。まるで漫才のかけあいみたいに話すふたり。「湯本さんは1m75cmもあるし、男前やし優しいし、モテモテよー。みんなで取り合いになっとる」と笑う純子さん。
「純子さんの笑顔で本当に元気になる。そういう意味で、介護の初心に帰らせてくれる人です」と湯本さん。
純子さんは、この施設に入所した当初、新しい環境になじめず笑顔もなかったという。主任である湯本さんは基本的に担当を持たないが、純子さんを気にかけるようになった。
「元気?」「今日もキレイだね」
湯本さんが声をかけるようになって、徐々に心を開いた純子さん。いまでは、朝起こしに行くと「待ってました!」と返したり、重たいものを持っていたら、「あんた、無理したらアカンよ」と気遣う。「いつも僕を見たら絶対に笑ってくれるんです」。特別なことは何もない。ふたりの「心のこもった」軽妙なかけあいの積み重ねが、お互いの信頼関係へとつながった。
ホストと介護の共通点
高校卒業後、友人の紹介でホストの仕事をしていた湯本さん。23歳のとき、母方の祖母が大慈弥勒園に入所したことをきっかけに、同じ施設で介護の仕事を始めた。「同居していた父方の祖母のことも頭にあり、介護が必要になったときに役に立つかなあと思って」
働き始めた頃は、食事や介助などの事務的な仕事に追われていたが、次第に心のケアが大切だと感じるようになった。「介護士とホストには共通点が多い」と湯本さん。見た目だけではなく、目配り、気配り、思いやり、そしてしゃべりにも磨きをかける。女性の「乙女心」に寄り添うコミュニケーション力は、やはりホスト仕込みだ。
湯本さんのモットーは、「一笑懸命」。1日1回、ゲストに笑ってもらえると、素直にうれしいと語る。「人に喜んでもらうことが、僕の仕事です!」
【文: 高村多見子 写真: 川谷信太郎】