漫画ヘルプマン!
2018.03.07 UP
あらすじ&作品紹介
介護ミスのトラウマから魂が抜け落ちた百太郎は、復活を願う旧友で介護総合情報センターを営む神崎仁や宝来みのりの支援もむなしく、母に実家の弁当屋を継ぐと言い自宅に引き籠っていた。そんな百太郎に母は、介護のプロとして、妻に先立たれ息子夫婦と分かれた独居高齢者の松島大吉の生きる気力を取り戻すよう頼む。
ヘルパーの仕事に興味を持った主婦・山重茜は、仕事内容を詳しく訊くため介護総合情報センターへ。そこで仁から、「ヘルパーの最大の仕事は、生きる意欲を掻き立てること」とプレッシャーを掛けられ、後退りしてしまった。仁は引き籠もる百太郎を無理やり連れて茜の住む団地へ。仁は茜に、百太郎を同行者に付き添わせ「ヘルパー体験」を提案。寝耳に水の企画に、百太郎は動揺する。
簡単な介護ができるホームヘルパー1級・2級の資格廃止の代わりに、国は“初任者研修”という新たな制度をスタート。それにより、介護業界は深刻な人手不足に陥ってしまい、仁は、高齢者に対して血も凍るような冷徹な介護保険制度改正だと怒りを露わにする。大吉の様な高齢者を救うため、有償ボランティアのあり方、そして地域支援の未来を睨み、介護素人の茜の存在や、煮え切らない百太郎を復活させるため、ある作戦を決行!
そんな矢先、大吉が高血圧で倒れてしまう。有償ボランティアをしていた茜は、大吉の生活ぶりを把握もせず、独居だからという理由のみで、大吉宅を売却し同居を迫ろうとする大吉の息子や義理娘に納得いかない。そこへ独居老人の妻夫木蝶子が現れ、援護射撃をするのだが……。
ヘルプマン!!主人公
恩田百太郎(おんだももたろう)
恩を百受ける男、恩田百太郎。介護を通じ、高齢者の圧倒的な知識や経験に学び、それを原資に、介護業界の矛盾を、等身大の高齢者視点で改善しようとする破天荒な青年。介護業界の主人公は高齢者自身とするがゆえに、介護保険制度や固定観念と日々対立。現在は、フリーの介護士として働き始める。
神崎仁(かんざきじん)
矛盾に満ちた介護業界の構造と闘う社会福祉士。介護福祉士、ケアマネジャーとキャリアを積む。ケアマネジャー時代に独居の在宅高齢者から頂いた“おしるこ”の温かさに触れ、目指す未来が明確に。人と社会をつなげるために日夜奔走中。現在は、介護の可能性を探るためショッピング施設内に地域の住民や機関・団体などをつなぐ「介護総合情報センター」を開設。
編集者からのコメント
介護ボランティアの生活支援の限度は!?
本作は、第8巻、第9巻の続編です。第6巻、第7巻『密愛編』で、介護ミスによる事故のトラウマを抱えてしまった主人公の恩田百太郎は、本作「介護ボランティア編」でも引きずり続け、精神的ショックは癒えず、ついにクライマックスを迎えます。2035年には独身の人口が日本の人口の約半分を占めるとまで言われ、少子高齢化による人口減少も止まりません。近い将来誰もが老いを経験するので、今後の日本の高齢化社会の中で、どのような仕組みが必要になってくるのか?
「公助」だけでは支えられなくなった日本社会に、民間企業や団体が知恵を出し合って新たな社会インフラを作ろうとしています。そんな新たなサービスを紡ぎ出す介護イノベーター達に取材を通じ沢山会ってきましたが、その中で興味深い動きをする方々は、介護とは無縁の方だったりします。固定観念にとらわれないアイデアは、時に思いもよらぬ盲点をついたりしますが、本作も、介護ド素人の主婦が、超高齢社会日本の問題点に触れることで、イノベーションを起こします。
今回は、『介護ボランティア編』のラストということもあり、介護保険制度では賄えない生活支援のあり方、そして介護ボランティアの限度はどこまでか?といった、この先の時代に必ず必要になってくるテーマに対する一つの解を提案する内容になっています。感動のクライマックスぜひ御覧ください!!
また本作で、講談社から朝日新聞社へと移籍し2003年から15年間続いたヘルプマンシリーズは終了し、新たに『ヘルプマン!! −取材記−』として、週刊朝日にて新連載をスタートしております。これまでの様に、作中の登場人物やエピソードのほとんどをフィクションしたストーリーではなく、長年の取材で出会った多くの興味深い事例や最新の事例をノンフィクションとして描き、主人公のみ新キャラとして新聞記者がストーリーテーリングして参ります。もちろん恩田百太郎や神崎仁などの主要メンバーも時々登場しますので、ぜひ今後ともご愛読いただけますと幸いです。
================================================
★ヘルプマン!! Vol.10 介護ボランティア編
価格:691円(税込)
【著者】くさか里樹 【発売日】2018年3月7日 【ISBN】978-4-02-331679-9 【発行】朝日新聞出版