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HMJ活動紹介

2024.04.04 UP

ICT導入から定着力強化へ繋げるための取組みノウハウについて/セミナー報告

2024年1月18日、HELPMAN JAPANはオンラインセミナー「ICT導入から定着力強化へ繋げるための取組みノウハウ」を開催。ケア記録システム「ケアコラボ*」のサービス提供を行う、ケアコラボ株式会社様に登壇いただき、ICT導入から人材定着へつなげるヒントについて教えていただきました。本記事では、当日のセミナーでご紹介いただいた情報の概要をご紹介します。

*ケア記録システム「ケアコラボ」とは:福祉現場でのケアや支援を、いつでもどこでもかんたんに記録し共有できる、ケア記録システム。日々の様子などの情報を利用者中心に集めて、利用者に関わるすべてのスタッフとご家族に共有することができます。

「ICT導入から人材定着へつなげるヒント」をご紹介いただいたお二人「ICT導入から人材定着へつなげるヒント」をご紹介いただいたお二人

セミナー登壇者様 ケアコラボ株式会社 佐藤さん

セミナー登壇者様 ケアコラボ株式会社 赤沼さん

――現在、福祉業界ではICT化がどれくらい進んでいるのでしょうか?

福祉現場を取り巻くICTの現状としては、厚生労働省のデータ*によると、介護サービス全体での介護ソフト導入状況は、83.3%という状況。多くの法人様が介護ソフトの導入を進めていることが分かります。
*厚生労働省:介護現場におけるICT環境の整備状況等に関する実態調査
 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000899391.pdf
一方、介護ソフト以外のICTについては、導入が進んでいないという情報もあり、今後導入が広がっていくのではないかと思われます。

――ICTツールにはそもそもどのようなものがありますか?

例えばですが、以下のようなツールがあります。
・介護ソフト ※ケアコラボはここに当てはまります!
・見守り支援
・コミュニケーション
・グループウェア
・勤怠、シフト管理
・テレビ会議 など、たくさんの種類があります。

送迎に特化したサービスや、勤怠に特化したサービスなど、いろんなサービスがある中で、多くの場合、費用を基準に選択をしてしまいがちです。ツールを検討する上で大切なポイントは、①自法人の課題を明確にし、②その課題を解決するために必要なツールは何か、という基準を設けて選択することです。その際、「法人としてどのような姿を目指すのか」、「日常業務の中で何が滞っているか」という問いから課題を明確にできると良いと思います。

ご紹介したさまざまなICTツールの中で、どんなツールを導入すべきかを決めることができたら、いよいよ導入に進んでいきます。ここからはICTツールの導入・定着のポイントについてお話します。

私たちの扱うケアコラボを導入する法人様の事例をみると、ICTツールの導入にあたり、それぞれの施設に合った進め方で導入されていらっしゃいます。
例えば、
・導入までにじっくり時間をかける法人様
・まずは手早く導入を進める法人様
・導入後、混乱から学びつつ進める法人様
・混乱を避けるために事前に準備をする法人様
と様々です。プロセスは異なる中で、それぞれ困難にぶつかる場面の違いもあることも見えおり、

例えば以下のような壁があります。

そんな壁にぶつかった法人様が、ICTツールの導入と定着に向けて実施されたことが3つあります。

ここからのお話を通じて、ICT導入を成功させるヒントにしていただければと思います。

――導入してから定着するまでの具体的な事例についても教えてください

弊社のケア記録システム「ケアコラボ」を導入されたお客様の事例を3つお伝えします。

1つ目の事例を紹介します。

1 どのようなきっかけ?
この法人さんが、どのようなことがきっかけでICT導入を検討し始めたのか。それには以下の3つの理由がありました。
・スタッフから利用者へ心理的虐待があった
・紙でそのストレスが感じられる文言が記録されていた
・業務量がひっ迫していて、業務改善を行いたいとスタッフから提案あり

2 どのようなアクションをした?
スタッフの記録をタイムリーに見られるようになれば、心理的虐待を防げる可能性があるのではと考え、業務改善を行いたいという提案をした2名と担当者のAさんでチームを組んで取り組むこととなったそうです。

具体的には、
・ツールの機能把握
・業務でどのように使うのかを検討
・質問窓口を作り、スタッフがすぐに疑問解消できる仕組みづくり

ICTの定着につなげた!という流れです。

――ICTを現場に定着させることに難しさを感じる法人様に役立つヒントですね。

2つ目の事例です。

1 どのようなきっかけ?
こちらの法人さんのICT導入検討のきっかけは、以下のものでした。
・細かな支援を行っているにもかかわらず、記録が残らない状況だった
・申し送りはノートで行っていたため、全員把握しているのかわからず、タイムラグも発生していた

2 どのようなアクションをした?
キーパーソンとなる担当者の方が、以下のアクションをされました。
・自ら学び、機能を把握・現場のリーダースタッフに、ツール提案をして意見を聞く
・担当者が責任者として動く、ビジョンと必要性を訴える

3 どのように浸透させた?
・どのように記録するかを担当者が現場リーダーとイメージを共有
・現場リーダーが自らチーム分けをし、スタッフへレクチャー→大きな混乱もなく現場スタッフへ浸透した

4 ICT導入の効果は?

――単なる記録ではなく、支援方法の前向きな見直しにも繋がり、職員のモチベーションアップにもつながっているんですね。

ケアコラボを通じてご家族とやり取りできることが、嬉しい・楽しいというスタッフからの声が上がっていました。続いて、3つ目の事例です。

1 どのようなきっかけ?
こちらの法人さんのICT導入検討のきっかけは、以下のものでした。
・拠点が点在する中で、スタッフ間にてタイムリーに情報共有できないこと
・他記録をつかっていたが、詳細な記録が難しかった
・多くの拠点があることから、申し送りに時間がかかること
・事務所のPCからのみ記録が可能だったため、時間を確保しなければならないこと

2 どのようなアクションを?
こちらの法人さんも2つ目の法人さん同様、キーパーソンの方がどのようなアクションを起こしたのかが大きなポイントとなっています。具体的には以下のアクションです。
・5年間かけて利用者本位の支援を行うためには?という意識改革を行い浸透させた
・リーダー職や主任にも同様に伝えた
・ICT導入は上記の意識改革の一環として行っていった

3 ぶつかった壁は?
・他記録のリース期間が残っていた
・高齢スタッフへの対応

4 どのように乗り越えた?
・目指す支援を伝え、記録システムを変更することの必要性を伝えた
・押しつけるのではなく、便利なことを伝えるなどコミュニケーションを増やした

5 導入の効果は?
定性的には以下のような効果が見られました。

以前は、記録のために事務所に一度帰らなければならなかった状況でしたが、クラウドで使えるケアコラボにしたことで、各拠点で記録ができるようになりました。そのため、移動時間の削減や記録のためにパソコンが空くのを待つ必要がなくなったため、残業時間が削減できたとお聞きしています。

定量的な効果についてもお伝えします。
親愛会様では、8拠点の申し送りを一拠点ずつ行っていました。1日に1回、約30分くらいかけて行っていたのですが、ケアコラボに書いてあることは事前に読んでおくことで共有完了とし、直接伝えておきたいことのみを申し送り事項とされたそうです。その結果、【5分】にまで短縮することができたとお聞きしています。

さらにそこから派生した変化として、申し送りの残りの時間でグッドニュースを共有することにしたそうです。プライベートのことでも、利用者のことでもいいニュースに関することであればOKで、コミュニケーションが生まれるきかっけになったそうです。スタッフ間の関係性が深まることにも繋がり、連絡・相談しやすい関係性が作れるように変化したそうです。

――記録すること自体が楽しいという感情が、スタッフの自発性につながったんですね。便利ということだけでなく、プラスの感情があることも大切ですね。ICT導入がどう人材定着につながるのか、事例を通じて見えたことも教えてください。

ICT導入をした結果、どう人材定着につながるのか、法人視点とスタッフ視点のそれぞれで見ていきたいと思います。

●法人視点での導入効果では、
・柔軟な運営方法ができること
・ICTのハードルが下がること
それによって、
・職員の働きやすい環境づくり
・常に新しいことを取り入れる文化醸成にもつながっている

●スタッフ視点の導入効果としては、
・自信につながる
・次のICT導入に向けた挑戦につながること
・空いた時間をケアに使えることそれによって、
・認めてもらえる職場
・残業のない労働環境につながる

結果として、ICTの導入によって効率的=楽になるだけではなく、楽しいという感情も生まれ、上記のような文化醸成も加わって、人材定着につながるのではないかと捉えています。

ケアコラボを利用している法人様に調査をしたところ、離職率は10.57%*という状況です。こちらについては、ケアコラボを導入した=離職率が低い、というわけではなく、ICT導入をはじめとして色々なことを話しやすい・相談しやすい環境があるのでは、と推測しています。良い雰囲気が作れている法人だからこそこの数字が生まれているのかと思います。
*介護労働安定センター 令和4年度介護労働実態調査 介護職員:離職率 13.6%

本日のお話をまとめると、ICTの定着には以下のことが大切です。

・仲間をつくること
└トップダウンだと押しつけられていると感じられてしまう。導入の担当者がすべてを担うのではなく、仲間をつくって推進すること
・課題を明確に
└送迎が大変なのか、記録が大変なのか?どんな課題を解決したいのか、課題を明確にすること
・自らが知る
└現場のスタッフに理解していただくためにもICTツールを導入することで何が変わるのか、担当者本人がしっかりと把握すること。

また、人材の定着には以下のことが大切です。
・相談できる環境を作る└ICTツールのことに限らず、現場の方が相談できる環境を作ること
・現場の方が使えるツール選定
└ツールを使うのは現場の方。現場の方が楽しい、使えそうだと思ってもらえるようなツールを選定すること
・チャレンジをサポートする
└現場の方がやりがいを感じられる、チャレンジを認められているという環境を作る

――ご紹介いただき、ありがとうございました!お二人のお話は、セミナー参加者様からも好評でしたね。アンケート結果も一部ご紹介します。

●セミナー満足度
*1 満足度10点中7.1点

●フリーコメント
・職場環境改善研修を実施しています。事業者視点でのICTの活用、定着、効果等とてもよくわかりました。ありがとうございました。
・ 当法人では一部システム化しているものはありますが、まだ新しいIT機器の導入にはハードルが高い状況です。そのような中、IT機器を駆使している今後を担う若い世代は、紙ベースでのやりとり (稟議、休暇、超勤申請など)は当然にしてストレスとなり、モチベーションの低下や定着率の低下につながることから、管理職員が若い世代の視点に立ちつつ、先頭を切ってIT化を推進する必要があるとの考えに至りました。

――最後に、ケアコラボ株式会社のご紹介です。

高齢者・障がい者福祉現場のケア記録を、いつでもどこでもかんたんに共有できる記録システム「ケアコラボ」。お客様が自主的に、自律的に取り組めるサポートをモットーに、現場のことをよく知っている経験者(社会福祉士・介護福祉士)が、導入前の相談から活用・定着までをサポートしています。

【文: HELPMAN JAPAN 写真: ケアコラボ株式会社】

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