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2023.06.08 UP

介護の仕事の魅力を発信するために必要なこととは?「地域×介護 つたえる、つたわる 魅力発信 勉強会」開催レポート

2023年3月22日、HELPMAN JAPANは介護人材確保の前提となる『魅力発信』について、自治体の事例を交えて学べるオンラインイベント「地域×介護 つたえる、つたわる 魅力発信 勉強会」を開催。滋賀県、高知県の担当者より魅力発信の事例を紹介いただくほか、基調講演として、日本初の自治体マーケティング課が設置された流山市 河尻様より、自治体が行うマーケティングについてご紹介いただきました。さらに、各事例についてより知見を深めるため、全登壇者でトークセッションを実施。本記事では、当日のイベントの様子について概要を報告します。プログラム内容など、詳しく知りたい方は、HELPMAN JAPANへお気軽にお問い合わせください。

目次

・事例1:イメージの向上のための「広報」と、人材を獲得するための「宣伝広告」は目的や目標が異なる「介護×地元愛『しがけあ』」(滋賀県)
・事例2:安心して長く働ける職場環境の整備や職員と利用者双方に優しいケアの実現へ「高知家ノーリフティングケア」(高知県)
・基調講演:「自分にメリットがある」「好き、楽しい、心地よい」「人に自慢できる」の3つの要素が集まって人が動く。自治体による「マーケティング」(千葉県流山市)
・トークセッション:「情報発信の際に活用できるツール」は?「新たな関係者を巻き込むために必要なこと」とは?

 

人材確保の前提にある「魅力発信」。各事例の共通点を知り、理解を深める

HELPMAN JAPANがこのイベントを開催する背景は、「人材確保の前提にある『魅力発信』に関する各事例の共通点を知り、理解を深めること」。介護業界を知らない一般の方に対して、介護・福祉業界で働きたい!と思っていただくためには、相手の方を理解し、それぞれの方に合わせて魅力的な情報を発信するという「マーケティング」の考え方が重要。今回のイベントでは各自治体様の「魅力発信」の事例を学び、共通点を知るほか、介護・福祉業界外のマーケティング事例を知り、明日からの介護・福祉業界の魅力発信・人材確保、そしてさらなる取り組みの向上につなげていただくことを狙いとして、開催いたしました。

 

事例1:イメージの向上のための「広報」と、人材を獲得するための「宣伝広告」は目的や目標が異なる。介護×地元愛「しがけあ」(滋賀県)


事例1として、「地元愛×介護 しがけあ」と題しまして、滋賀県 健康医療福祉部 医療福祉推進課 介護・福祉人材確保係 主査 今井 武義さんよりご講演をいただきました。
令和3年度から始まった滋賀県介護のしごと魅力発信事業。今井さんが行政職員として、本事業をどのように進めてきたかについて教えていただきました。この事業では、「しがけあ」という魅力発信の情報サイトの運営やイベントの開催、広報活動をされています。
取り組みに至る経緯として、「介護現場の中核を担っていく若者の関心が低い」「まずは介護の仕事を就職先の選択肢の一つとして意識していただくための取組が必要」という意見からスタート。取り組みの方向性については、広報専攻学識者とも連携し推進をしたとのことです。学識者からは、「信頼を得ることやイメージの向上のための『広報』と、人材を獲得するための『宣伝広告』は目的や目標が異なるため、分けて考えたほうが良い」という提言があり、その考え方を参考にして本事業を推進したそう。ターゲットである若者の周辺においても話題になり、友達に喋ってみたいと思えることをテーマに「しがけあ」サイトの運営やイベントを実施。
令和4年度は、「しがけあ」サイト来訪者の実人数5万人到達という目標を立てたところ、無事に達成。事業効果として、より”直接的”に行動喚起へつながる施策は、イベント・SNSであることが確認できたそう。プロジェクトの在り方としては概ね狙い通りになっており、認知拡大を中心としたプロモーションも一定効果が出たとのこと。
今後は、より認知拡大から行動喚起までを目指すこと。そして、「しがけあ」という「広報」を通じて、介護業界や介護の仕事への関心が高まったところに、福祉人材センターや民間職業紹介事業者が「宣伝広告」により就職を説得することで、より豊富な人材または志を持った人材の確保に繋げることまで狙いたいと締めていただきました。

▲「しがけあ」を通じて認知度が上がったことや一定の態度行動変容があったことが可視化され、魅力発信の事業の成果が定量で表れている。

事例2:安心して長く働ける職場環境の整備や職員と利用者双方に優しいケアの実現へ。「高知家ノーリフティングケア」(高知県)


事例2として、「高知家ノーリフティングケア」と題し、高知県 子ども・福祉政策部 長寿社会課 福祉・介護人材対策室 若江 あゆみさんより講演をいただきました。
はじめに、ノーリフティングケアになぜ行政である高知県が取り組んでいるのか、について教えていただきました。令和22年の高知県における高齢化率は41.2%と見込まれている一方で、中山間部が多いという地域性から、介護ニーズの高まりと人材の確保が喫緊の課題であったことから、介護人材を安定的に確保できる体制作りが必須という状況であったそう。そこで、安心して長く働き続けられる職場環境を作り出し、介護イコール腰痛を引き起こす重労働という現状の解消と、イメージの払拭を図るため、職員と利用者の双方に優しいノーリフティングケアを高知のスタンダードなケアとすべく取り組みを推進し始めたそう。
取り組みを推進するために、腰痛予防のための福祉機器の補助制度を創設。しかし、創設当初申請が想定より少なかったとのこと。その理由として、そもそも福祉機器を使って介護を行うことに抵抗感のある職員がまだ多く、導入の意義や目的といったところがしっかりと理解されていないこと、現場に余裕がないことで、新しいことを実践することや定着させる仕組みや体制作りができないといった実態があったそう。そこでハードとソフト両面から取り組み支援を始め、管理者層やリーダー層を対象とした組織的なマネジメント研修なども実施。
様々な取り組みを進める中で、実践効果に関するアンケート調査への回答結果で職員や職場における変化の問いに対し、55.6%の事業所が介護する際の負担が減ったという回答を得られたとのこと。

▲職員や職場における変化として、負担が減ったという声の他、離職率が減少(14.2%)、人材確保への効果(9.7%)という声があった。

今後高知県が目指していることとしては、「安心して長く働ける職場環境の整備や職員と利用者双方に優しいケアの実現」。介護職員が定着する環境が生まれ、専門性の向上や、組織力の強化に繋がる。その結果として、サービスの質が向上し、職員と利用者双方の満足度がアップ。さらには、業界のイメージアップに繋がることで、新たな人材の参入促進への効果ももたらされる、そうした好循環を目指す姿としてノーリフティングケアをさらに推進していきたい、とお話されて締めていただきました。

 

基調講演:「自分にメリットがある」「好き、楽しい、心地よい」「人に自慢できる」の3つの要素が集まって人が動く。自治体による「マーケティング」(千葉県流山市)


続いて基調講演として、自治体による「マーケティング」について、流山市 総合政策部 マーケティング課 課長 河尻 和佳子さんより講演をいただきました。
はじめに、マーケティングの定義の一つとして「選ばれるための仕組みづくり」であることを教えていただきました。
さらに、マーケティングに必要な視点として「強みを見つける流れ」について教えていただきます。そもそも得意なことよりも苦手なことを克服するほうに目が行きがち。そのため、強みを見つけることに苦戦される方は多いそう。強みを見つける一つの策として、枠組みに合わせてとにかく小さいことでもいいので書き出すことが大切と教えていただきました。

そして伝えるだけでなく、伝わるための基本として、「普段から人の話を聞いて伝え方や喋り方のバリエーションを増やし、ストックすること」「自分が言いたいこと、知ってほしいことを伝えるのではない」など、気を付けたいポイントについて触れていただきます。これらのことは基礎訓練のように日々の中で取り組むことが大切です。
最後に、伝わったとして、その後人が行動に移すためのポイントも教えてくださいました。人は正しいことでは継続的には動かず、人が動く理由として①自分にメリットがある ②好き、楽しい、心地よい ③人に自慢できる の3つにほぼ集約できるということを、具体的な例も含めて教えていただきました。

 

トークセッション:「情報発信の際に活用できるツール」は?「新たな関係者を巻き込むために必要なこと」とは?


トークセッションのパートでは、登壇者3者様に再度ご登壇の上、参加者様から事前に質問のあった2つのテーマについてお答えいただきました。

テーマ①「情報発信の際に活用できるツールとツールを使う際に大切にしたいこと」。
・発信するために使えるSNSのそれぞれの違いや、どのように活用できるか、ツールの違いももちろん、そもそも共感されやすい文章にすることが大切。(流山市 河尻さん)。
・発信すること自体については数値化ができるものの、受け取った人がどう思ったのか、気持ちのところをどう数字として可視化するのかが難しく悩みどころ(滋賀県 今井さん)

テーマ②「新たな関係者を巻き込むために必要なこと」。
・福祉や介護は、どうしても特定のプロの人だけの話に思われがち。介護って、生活にも関係あるよね、もっと広く見たら街作りにも関係あるよねと、大きく捉えることも必要ではないか(滋賀県 今井さん)。
・なぜ一緒に活動していきたいのか、目指すところが同じであるということを説明し、具体的にイメージしていただく、そうすることで当事者意識を持っていただいて、一緒に活動していくことができるのではないか(高知県 若江さん)。

イベント参加者様からのアンケートでは、「活用することのメリットを定量的に見ることができれば、提案もしやすい」「『イメージ向上のための広報』と『人材獲得のための宣伝獲得』の違い」「プロジェクトの評価指標で、受け取った側の心の動きを数値化すること。効果測定で大切にするポイント」が学べたという声や、「行動変容のためのきっかけにすべく、よりよい活用方法を模索していきたい」という言葉をいただくことができました。

ご登壇いただいた3名のみなさま、そして参加くださいましたみなさま、ありがとうございました!

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【文: HELPMAN JAPAN 写真: HELPMAN JAPAN】

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