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HMJ活動紹介

2015.11.30 UP

<未来をつくるkaigoカフェ> 「地域に暮らしの保健室をつくるには」に行ったきました vol.2

介護に関わるすべての人が、立場や役職を離れて対話する場「未来をつくるkaigoカフェ」。今回のテーマは「暮らしの保健室」についてです。vol.1での秋山正子さんのプレゼンに続き、vol.2では、埼玉県幸手市幸手団地内でコミュニティカフェ「元気スタンド・ぷリズム」を運営する小泉圭司さん。神奈川県藤沢市のUR団地の一室で小規模多機能ホーム「ぐるんとびー」を立ち上げた菅原健介さん。2人のプレゼンターによる、それぞれの地域での暮らしの保健室の取り組みについて、プレゼンの模様をお届けします。

「カフェやお寺など、地域のコミュニティに、看護師が出向いて暮らしの保健室を開催しています」(小泉)

高瀬 小泉さんの方から、「元気スタンド・ぷリズム」で開催されている、暮らしの保健室の仕組みのご紹介をよろしくお願いします。

小泉 どうもこんばんは。本来ですと暮らしの保健室は、東埼玉総合病院の「菜のはな」という部署が中心になってやっております。私は、(運営するコミュニティカフェで)暮らしの保健室を開催して頂いているという立場なので、それほど詳しくはご説明出来ないかもしれませんけれども、“コミュニティデザイナーとコミュニティナースがつくる暮らしの保健室”ということでお話させて頂きたいと思います。

東埼玉総合病院の資料を見ますと、暮らしの保健室のそもそもの立ち上げのきっかけは、リスクを抱えながらも、医療や介護に繋がらない住民の方々が地域には沢山潜在しているという部分と、地域コミュニティでは本人の訴えがないために、潜在的な健康や生活リスクが放置されている可能性があるのではないかと。「大丈夫ですか?」と聞いても、大抵の人が大丈夫ですと答えてくるので、そういった方々のサポート。それから、健康と生活に関する包括的なアセスメントを行い、適切な地域包括サービスへと繋げ自立支援と重症化予防を行うことが必要ということですね。

先ほど、秋山先生のお話にあったように、自分の症状といいますか問題について、どこに行けばいいのか分からないという方が沢山いらして、そのままになっている方もいらっしゃる。そこで、暮らしの保健室を秋山先生のところからのれん分けをさせて頂いて立ち上げたということです。秋山先生のところとの大きな違いは、どこか一か所に常設しているのではなく、地域のなかに複数展開している点です。

秋山先生が先ほどおっしゃったように、日本のなかでも新宿区、なかでも秋山先生のやっておられる団地の周辺は特に高齢化が進んでいますので、常設型の暮らしの保健室というのが有効だと思われますが、幸手市と杉戸町は、地域全体で高齢化が進んでいる地域です。そのため、一か所に暮らしの保健室を展開しているのでは足りない。

その一方で、地域コミュニティを支えている方々というのが、地域には沢山いらっしゃいます。そこで、地域でコミュニティを築いている方々のところに、コミュニティナースと呼ばれる看護師さんが出向いて行って、そこで暮らしの保健室を開催することによって、地域の方々をサポートしていこうという取り組みです。

例えば、コミュニティカフェですとかサロンでの開催、お寺で寺小屋みたいにしてやっているところ、空き店舗を利用してやっているところ。あとは行政の施設とかを利用して展開しているところですとか、体操教室などもあります。ほかにも、お祭りなどのイベントとかでも、出張型の暮らしの保健室を不定期に行っていたりします。ほとんどが、月1回ですとか、四半期に1回、イベントがある時だけという形でやっていて、杉戸と幸手で現在23か所で展開しています。

■医療・介護などのコーディネートや、
色んな相談のワンストップ相談窓口に■

「菜のはな」で行っている暮らしの保健室は、秋山先生のところとほぼ同じで、医療・介護などのコーディネートの役割を果たしていたり、色んな相談のワンストップの相談窓口として、介護に関する相談であったり、色んな悩みごとを、看護師さんに話すことによってスッキリして解決されます。あとは、健康づくりや予防などの情報を、講話を通じてアピールしています。

私がやっているコミュニティカフェ「元気スタンド・ぷリズム」での暮らしの保健室ということでご紹介させて頂くと、個別相談がメインです。調子が良くないけれども、病院に行くほどでもないかなって方が沢山いらっしゃいます。そういった方々の相談に、看護師さんが答えてくださってます。この事業は、北葛北部医師会と幸手市の事業ということで展開しているので、「何病院の何先生の所に、どういう風な言い方で行くと良いよ」というふうに具体的にアドバイスをしてくださるんですね。そして、次の日にもう一度電話をするんです。で、「(先生に)ちゃんと言えた?」という具合に、アフターフォローもしてくださるのでとても助かっています。

コミュニティカフェでお客様との会話で、私が「病院に行った方がいんじゃないですか」と話すのと、看護師さんがお話をするのって、全然効果が違うんです。この間も私がお弁当を配達しているお客様のところで、体調が悪いってことでお話を聞いていたのですけれども、私が聞いてるだけじゃなかなか良くならないんですよね。そこに、コミュニティナースの方を連れて行って、お話をして頂いたら、話を聞いただけでも元気になられて、先ほどの秋山先生のお話と全く同じ状態です。その方は3か月前にご主人を亡くして、凄く不安だったっていうのが根本の原因にあって、お話をすることによって、すっかり元気になられました。

それから、秋山先生のお話にもあったように、「元気スタンド・ぷリズム」でも講話を行っています。サロンとかですと、月に1回、何時から始めますということで、一度に人が集まるので大変やりやすいのですが、うちのコミュニティカフェでは、バラバラにお客様がみえるので、人が集まった時に「さぁ今だ」っていうことでやっているような状態です。その都度、季節にあった話ですとか、この間は餅をのどにつまらせて亡くなった方がありましたので、餅を詰まらせたときにどうすればいいのかという講話をして頂きました。

■コミュニティデザイナーとコミュニティナースがつくる“暮らしの保健室”■

先日、慶應大学の秋山先生という方が、「コミュニティヘルスのある社会へ」という本のなかで私たちの取り組みを紹介をくださったのですが。その中に、コミュニティーナースという言葉が使われていてそれから、この「菜のはな」の看護師さんのことをコミュニティーナースと呼び、地域に出る看護師さんとして活動をしてくださっています。

一方で、私のように地域で暮らしの保健室を立ち上げて、地域と「菜のはな」などの医療機関をつなぐ役割を担っている人たちを、コミュニティデザイナーと言っています。

たとえば、私のところに色んな情報が入ってきて、「○○さんがそこで転んでたよ」とかいう話が来たりするんですね。それを、「菜のはな」の看護師さんに電話で相談する。そうすると、看護師さんがその方のところに行ってくださって、救急車で搬送されたこともこれまでに2件ありました。一人の方はお亡くなりになったんですけど、もう一人の人は元気になって、「自分の体操教室で暮らしの保健室やるんだ」ってことで、今そうした活動もしてくださってます。

それから、今23箇所で暮らしの保健室を行っているんですけれども、それぞれの暮らしの保健室をやってくれているコミュニティデザイナーが月に一回、病院で集まって、「みんなのカンファ」という事例発表も行っています。

皆さん―私を含めてなんですけれども、聞いた話を抱え込んでしまうと。主催している方々の調子が悪くなってしまうんではないかという心配があるので、それぞれが抱えている様な事例ですとか、様々な―こういった問題があって、こういう風にしたとかいう話をそこですることによって、自分のところで起きたら、事前にどうすればいいのかっていうことを話し合っています。先ほどの秋山先生のお話にあったように、図式化はしてないんですけれども、こんなことがあったよっていうのを皆で話し合っています。まとめますと、コミュニティカフェとかサロンを拠点に、介護予防に繋げたり、地域の支え合いとか、配食サービスによって、生活支援を行っています。で、何かあった方は、見守りを通じて暮らしの保健室に繋げたり、時には、暮らしの保健室から包括支援センターの方に情報を伝えて介護に繋げたり。こうした連携を、幸手・杉戸あたりでは「しあわせすぎステーション」と呼んでいます。

「しあわせすぎステーション」というのはインフォーマルサービスのネットワークで、そうした活動を行う方々をコミュニティーデザイナーと呼んでいます。コミュニティデザイナーが地域にいればいる程、沢山の方々を結び付けることができるので、「コミュニティーデザイナー養成講座」を開催して、より多くのところに暮らしの保健室を普及させるということも行っています。

参加する人が増えてくれないと意味がないので、埼玉健康と暮らしを支える市民勉強会を立ち上げて、こういったものが必要なんだよっていうのを、一般の住民の方々と、行政と一緒に考える機会を設けてアピール活動を行ってます。住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けるためにはどうすればいいのかっていうことを、住民主体で行い、暮らしの保健室に繋げています。

高瀬 仕組みとして、色んな取り組みをされていて、また、アイデアも凄く豊富で、いろいろ勉強させてもらうことが、沢山あるなと思います。ありがとうございました。

「団地の一室で、“子どもとつくる”小規模多機能を立ち上げました」 (菅原)

高瀬 引き続きまして、菅原健介さんに、これから、今立ち上げられた事業についてと、暮らしの保健室での取り組みを、お話の方をよろしくお願いします。

菅原 こんばんは。ぐるんとびーの菅原と申します。最近子どもたちと一緒に立ち上げた、「子どもとつくる小規模多機能」ということで、URの団地でもうすでに、子ども役員と子ども会議が始まっていて、今日も子ども会議で遅れそうになりました(笑)。

元々、東日本大震災で、病院を辞めてボランティア団体の「キャンナス」のコーディネーターとして被災地へ行く中で、平時からの地域のつながり、しかも専門職だけではなくて多職種・多業種の平時からのつながりが凄く大切だなと思って、どうしたらそれが作れるのかなと思っていたところに、「おたがいさん」という小規模多機能に出会って、そこに色んな人が―子どもからみんなが集まっている、地域の拠点になっているというのをみて、小規模多機能「絆」というのを始めました。で、その後に「ぐるんとびー」を家族と一緒に立ち上げて、団地の一部屋でやっております。

(写真を見せながら)こんな感じで、団地の6階ですね。下に僕の自宅が入っています。さらにその下は事務所として借りています。なので、自宅は事業所と両方に挟まれているので子どもが暴れても何しても大丈夫で、たとえ僕が辞めたとしても、他の子育て世代の管理者が入って子どもを自由に遊ばせられるということでやってます(笑)。こんな感じで、230世帯ある小さな団地です。テナントではなくて、普通の住居でやっているので普通の部屋です。小規模多機能なので、通いと、訪問と宿泊がここでできるようになっています。

うちの小規模多機能の特徴なんですけれども、地域すべてが生活を楽しむ空間ということで、例えば、釣りが好きな方だったら、釣りに一緒に行っちゃったりですね。プールに行きたいという話があればプールに。プールに行きたいというか、元々プールに友達がいて、自分がプールに行ったら元気になるんじゃないかと思われているんであれば、そこに一緒にお手伝いさせて頂いて行くと。この方もどんどん元気になっていって、行くと友達が沢山いるので、友達が支えてくれる。で、どんどんそれで好きなことをやっていくと元気になっていって。

利用者さんの約60%の要介護度が下がって、(以前の「絆」のときで)5から2とか、5から1とか。一番下がったのは、5から支援2とかですね。好きなことやってると、生活が楽しいから目が輝いて元気になる、元気になるから次の目標が見えてきて、っていう繰り返しで、機能訓練とかリハビリとかっていうのではなくて、自分がやりたいことを続けて行くっていうことを、「絆」での3年間で利用者さんから学びました。

(菅原さんに関する記事はこちら→http://helpmanjapan.com/article/4891

■一緒に夕飯食べながら医者が話を聞いてあげたり。暮らしの“居酒屋”に近いかもしれません(笑)■

うちが、やっているエリアなんですけれども、藤沢市の駒寄というところです。人口3万人で、高齢化率が藤沢市1です。所得の格差も大きいエリアになっています。そこで、暮らしの保健室というとおこがましいですが、その様な取り組みもしています。団地の、人が集まる場所っていうのを意識して、どうやったら人が集まってきてくれるかなっていうのを考えて動いてます。

毎日、子どもが遊びに来てて、今日もまた7人ぐらいいて、最近の悩みは子どもがうるさい。でも、放課後の居場所がないってことなんで、自分たちで子ども会を作ってリーダーとか副リーダーを作りながら色々やってるんですね。自分たちの居場所を作りたいんですけど、ここの小規模多機能だけだと、うるさかったり、時間がやっぱりずっといられる訳ではないのと、利用者さんの中には子どもが苦手な方も想定すると、ほかにも選択肢があった方がいいと思っていて。で、本人たちで課題にしたのが、お金がないと集会所が借りられないのでお金をどうしようというのと、大人がいないと危ない人が来た時に怖いといって鍵をかけようとか、色々話したんですね。でも、鍵をかけたら子どもが入れないじゃないかって他の子どもが言い合っていて、そんなことをしています。

子どももいますし、91歳のあばあちゃんが一升瓶を抱えて飲みに来てですね、一緒に飲んで帰っていくと。夜はまたご飯を食べて。この写真に出ている方も87歳だったり、この旦那さんは91歳で一緒に来て、一緒にご飯食べて。そんなことをしながらですね。これは91歳のおばあちゃんが、足に湿疹が出来ていて気になるということだったので、一緒に飲んでた医者が話をきいてあげて、一緒に美味しいお酒と美味しいご飯を食べて帰っていくと。暮らしの中の“居酒屋”に近いかもしれないですね。

団地の人が集まる場所っていうのを意識して、どうやったら人が集まってきてくれるかなっていうのを考えて動いてます。人として繋がって、その中で必要があれば専門性を出していくというところで、医療職とかだけでなくて、税理士さんがいたり、お菓子屋さんがいたり、色んな人がいながら、必要があった時に声がけして、必要に応じて、専門機関につないでおければいいかなと思っています。うちも、タイミングがあって、向こうから必然と声がけして下さるまで特に何もしていかないので、そういう形で団地の中に入っていって、団地が一つの家族になるような取り組みをしていきたいと思っています。

僕の中で地域包括ケアって一人ひとりの意識改革だと思っていて、一人ひとりが自分こととして取り組んでいく。それが、枠を全部超えて、医療とか福祉とか、そういう話ではなくて、暮らしの中で人が繋がっていって、人が主体的に関わっていくということが大切だと思います。

例えば、この間、猫ちゃんが捨てられてたんですね、団地の下に。その時に大人たちは、エサをあげちゃダメですって、猫に餌をやらないようにって、団地に張り紙が貼られて。これはURさんがやってくれますとか、保健所の方が来るんで、皆には関係ないっていう、大人が、子どもたちにそう言っちゃうんですね。でも子どもたちは猫が小っちゃくて弱っていて、おなかが減っているのも分かってるんです。大人に、ご飯何かあげたいからってくるんですけど、それを大人が全部止めてしまっています。困った猫を見捨てろと教育をする。それが本当にいいのか、それの積み重ねが、自分の専門分野以外への無関心に繋がっていくんじゃないかなと思ってます。

今度、子どもたちが、動物の勉強会をやりたいっていうのでやりますし、必要があれば医療の勉強会もやっていきますし、それを繰り返して行くことで、一人ひとりが考えられる子どもが育って、結果、地域包括ケアに繋がっていくんじゃないかと。その夢や街づくり、村づくりを、団地単位で広げていって、それを集めて行くということです。どうも有難うございました。

高瀬 介護の枠組みを超えて、地域全体でみていくというか、皆が必要とする場所になってくるんじゃないかなと思って、これからも楽しみにしています。


◆この記事のレポーターは学生編集部のKです。
人間科学部5年生。特養での社会福祉士の実習中、お昼にスマホをいじり、そこでHELPMAN JAPANを知ったことがきっかけで、編集部へ参加。音楽、アートなど興味のあること多数。自分の興味と介護のコラボで何か新しいことができないかなと日々模索中。保険会社に勤める予定なので、そこで介護に対して出来ることも探しています。介護の世界には発見がつきません!毎回学ぶことが多く、楽しいです。◆編集を終えての感想
「話すだけで大半は解決」「地域でやってくれる人はいるので、看護師さんに出向いてもらえば色んな所で出来る」「子ども会・飲み会から地域包括ケア」。気づきが多く驚きました!具体的な事例を知ることで、地域包括ケアのイメージが、「これなら本当に、私でも出来るかも」と、鮮明になりました。訪問看護の大家でも、コミュニティカフェの主催者でも、立派なお父さんでもありませんが、無理せずやれることをやろうと思いました。超楽しかったです!

【写真: 提供 kaigoカフェ】

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