HELPMAN JAPAN    活動紹介
介護に関わるすべての人が、立場や役職を離れて対話する場「未来をつくるkaigoカフェ」。今回のテーマは「暮らしの保健室」についてです。ゲストは、新宿区の大型都営団地戸山ハイツで「暮らしの保健室」を運営されている秋山正子さん! 立ち上げのきっかけや具体的な活動事例、最新の取り組みにいたるまでたっぷりお話いただいた後、埼玉県幸手市・神奈川県藤沢市それぞれの地域での取り組みについて、プレゼンターのお2人がプレゼンしました。医療も含んだ地域の中で気軽に相談支援できる場所として、その取り組みを深く掘り下げる会となりました。vol.1では、秋山正子さんのプレゼンをご紹介します!
プロフィール紹介
■本日のゲストプレゼンター
秋山正子さん/株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション統括所長 暮らしの保健室室長
小泉圭司さん/元気スタンド・ぷリズム合同会社 介護予防型コミュニティモール「元気スタンド・ぷリズム」代表社員
菅原健介さん/株式会社ぐるんとびー 小規模多機能ホーム「ぐるんとびー駒寄」代表取締役・理学療法士

地域包括ケアシステムを実現する入り口としての、“暮らしの保健室”です

高瀬 今回は、新宿区の戸山ハイツで暮らしの保健室を運営されている秋山正子さんに立ち上げたきっかけや経緯、現在の取り組みについてお伺いした後、プレゼンターの方からそれぞれの地域での暮らしの保健室の取り組みや、これからのビジョンについてお伺いしようと思っています。ではまず秋山さん、よろしくお願いします。

秋山 (スライドを指さして)この図はみなさんもうご存知だと思いますけれども、この地域包括ケアシステムの図の下の方にある、生活支援・介護予防のあたりに、「暮らしの保健室」は深くかかわってるのかなと思うので、まず先にこの図を開かせて頂きます。色んな人と繋がって、この地域包括ケアシステムを実現する入り口としての「暮らしの保健室」です。

開設のきっかけは、平成4年から新宿で訪問看護をずっと続けてますけれども、私たち訪問看護と繋がるのはかなり悪くなってからの人が多く、もうちょっと手前のところでの気軽な相談が必要なんじゃないかなという思いをずっと持っていました。また、マギーズセンター―がん患者の家族のための病院の外にある相談支援の新しい形ですね、これをぜひ日本に、地域に作りたいなというのをずっと思ってまして。ちょうど空き店舗を安く貸してくれる人がおり、国のモデル事業である在宅医療連携拠点の助成を貰うために手を挙げましたら通りまして、事業助成を貰いながら始められました。
実際はどういう場所かというと、(新宿区の地図を指しながら)これ全体が新宿区なんですけれども、新宿区は人口33万ですが、その中の牛込地区、ここが人口約10万で、この市ヶ谷駅近くが元々の看護ステーションの場所です。そしてここに、坂町ミモザの家という小規模多機能ができます。この牛込地区や四谷地区で私たちは活動をしています。たくさんの医療機関があるところで、女子医大などがあります。高齢化率は、戸山2丁目(戸山ハイツ)では今年の5月で51.6%。新宿全体では約20%なんですけれども、ここだけダントツに高齢化率が高く、新宿は23区中、最も独居率が高い区なんですけれども、その中でもこの地域は一人暮らしの率が高くて、約4割と言われています。

ずっと訪問看護をやってきて、こういう医療相談支援の場所があったらなぁという思いと、地域を詳しく知って、そこに根差したもの―高齢化の進んだ所ですので、治す医療じゃなくて支える医療が必要です。そして情報がちゃんと届き、お互いに連携し合うことがとても重要です。そして、お互いにフラットな関係の中で地域の方も巻き込んで、ボランティアさんが同じ目線で入ってくれている。これも大事かなという風に思っております。

そしてそのベースには、イギリスではじまったマギーズケアリングセンターのようながん相談をしたいという、そこが根っこのところに考え方としてあります。マギーズの考え方は、本人の考えを、自分の力を取り戻すために引き出すということを大事にしているのです。私たちは、自分たちが思い描いてきたことを実行に移して、現実的なものにしていくアクションを起こす、その一歩にしようと始めました。
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よく話を聞きそして少しの助言(情報提供)で、全体の4分の3が解決していっています

(室内の写真を見せながら)中は、真ん中にメインテーブルがあって、オープンキッチンがあるというこういう造りになってまして、木をふんだんに使っています。

午後から必ず看護師がいますので医療相談が多いです。例えばどんな人が多いのかというと、この方は一人暮らしで、とても不安が強くて、以前は本当にしょっちゅう、具合が悪くなると救急車を呼んで病院へ行っていた。そういうことを繰り返ししていた人です。皆が関わっているんだけども情報の共有が無かったり、医療機関のお互いの整理が無かったのですが、ここでゆっくりと相談を受けることでだんだん落ち着いていき、最終的にはむやみに救急車を呼ばなくなっています。こういうお一人暮らしの方の少しの不安に対応していくことで、一人暮らしを地域で続けられる、そういう活動を現在しています。
(相談風景の写真を見せながら)例えばこういう風に、最初は心配顔で来られた方も20分ただ話を聞いているだけなんですけど、やっぱり気持ちが解れてきてこんな感じに。別の日です。やっぱり暗い顔をして来ます。帽子も荷物も置かずに話しし出しますね。つまり緊張がほぐれていない状態です。ちょっと気持ちが解れてきて荷物を降ろしました。もっとほぐれてきて帽子も取りました。

さて、ここのテーブルの上、違いは何かというとオレンジ色の封筒です。これは区役所から来た封筒で、介護保険の更新申請の勧奨通知というもので、表も裏もみっしりと文字が並んでいる。つまり、もうすぐ期限が切れますよどうされますか、ケアマネジャーと相談をして再申請をしてくださいね、みたいな中身なんです。

この方とても真面目なので、この手紙が来てよく読むんだけどよく分からない。お金を払い忘れて督促じゃないか。それか、自分が役所の窓口に行って、何かしなければいけないんじゃないかっていう不安に駆られて、この封筒を出したり、どこに行けばいいかうろうろしたりしていたというところです。

そこで、私は代理で地域包括の方に電話をかけています。この方は要支援のレベルなので、ケアマネジャーさんが地域包括のほうにおられますので、今こうやって心配で来てるんですよと電話で相談をした後その話をした上で、このオレンジ色の封筒に赤いマジックでこれはこのまま放っといていいですって書いてお返ししています。こちらのピンクの洋服を来た人は、肺がんのお父さんをお家で看た娘さんです。私たちにボランティアで来てくれていまして、お茶を出してくれています。

何をしてるかって言われると、こういうことをしているんですよ。向き合って話を聞いて、何が心配なのかを解きほぐしていくっていうのがとても大事かなと思っているところです。

相談の中身はやっぱり医療相談が7割近くですね。それから、どんな風にしてるかっていうと、「よく話を聞きそして少しの助言で情報提供」、これで4分の3が解決していっています。医療機関に繋げる人7%、他機関を紹介する人が7%で14%。非常に複雑な例は意外に少ない。そして多くの所と連携をとっています。相談の内の約3分の1はがん相談です。私たち、がん相談が動機で始めましたけれど、がんに限っていませんが、結果としてやはりがん相談は増えているということだと思います。これで見て貰っても、ずっと年度ごとに統計をとっても、トップにはがん相談が入ります。

学び合い、教え合い、繋がり合い、支え合う。
そういう関係がいま出来てきています

国からの事業助成を受けてこの在宅医療連携拠点事業をしましたので、毎月、多職種が集まる勉強会を重ねてきています。その事例検討の材料の中には、今盛んに言われている地域ケア会議に発展したものもあります。多職種が集まり、顔の見える関係をここで作っています。

事例検討はどういう形でするかというと、連携の見える化というのを行います。(連携図がどう変化したかを見せながら)皆で連携がどう出来るのかというか、同じ例だった場合はどうしたら良かったのかというかということを、話し合っていくということをします。

これは、困難を抱えた人を地縁の中で看取る、血縁を超えた新たな地縁の結び方ということで、元ホームレスの方を様々な人と協力をして、最後、都市型軽費老人ホームで看取ることが出来た事例です。こうした事例をリフレクション―振り返りをしつつ、検討していくってことがとても有効だなっていう風に思っています。

(中略)

都市の中で本当に血縁とか地縁もある意味外れてるんだけど、新たな地縁の中でこうやって人を看取れば、周りの人はその亡くなり方から学ぶことが出来るんだっていうすごく大きな体験でした。そんなストーリー性のあるものを、決して作り話ではなく事実を踏まえながらやってゆく訳ですので、この事例検討の勉強会を通しながら本当に皆が学んでいきます。
ほかにも色んなことをしています。それは、配布したパンフレットの中にどういうことをしているのか書いてますので見てください。お茶を飲みながら地域の皆さんに開放し、居場所にもなっています。さらに、講座も行っています。健康教育というかヘルスプロモーションのようなものもしています。ここには様々な方が協力して下さっていますし、教育の場にもなっています。沢山の方が研修で訪れます。発展的に色んな勉強会をしたり、前新宿区長が訪問に来られたこともありました。全国から多数の取材や来場者が訪れながらいろんなことをしています。時には外へ飛び出しまして、ラジオ体操の場に行って熱中症の予防講座をしたり、障がい者センターに行ったり、自治会主催のバザーに行ったり、地域になるべく溶け込むようにしています。

最近の事例です、80代の男性一人暮らし。認知症が始まった時にどうしていくかと事例検討にあげた時の図です。自助・互助・共助・公助のこの共助である介護保険制度のところのプラットフォームにのせるまでの間、男性のボランティアがずっとこうやって伴走してくれました。非常に不安が強い、そして焦燥感がある、自分の尊厳を失うという危機を本人は感じている、ここの間を誰がどう支えるか。この時に色んな人が出入りしますと、顔が違う、言うことが違うととてもまた混乱してきます。同じ人がずっと支え続けて行く、これが一人暮らしの人には必要だけれども、そこが実はフォローがなかなか出来ない。こういうことをあげて皆でどうしたらいいのかって考えます。

やっぱり一人暮らしになった時、混乱をしていくこの時期を、誰がどう支えるか。これを支援するのが暮らしの保健室の仕事かなと、今は感じているところです。よく認知症の初期集中対応チームという話をしますけれども、そこに連れていくまでが大変じゃないかと。その時に地域がどうやって支えるかっていうのは、こういう事例を重ねて行くことが大事かなっていう風に考えてもいます。

そういう意味では、安心を得られる街づくり―繋がっていていつでも相談できる安心感と空間というか場所が必要であると思います。そういう意味で、まるまる4年経って5年目に入っていますが、この学び合い、教え合い、繋がり合い、支え合うという関係がいま出来てきています。

看護小規模多機能という新しいトライアルをしながら、地域包括的なケアに繋がっていけたら

そして今、新しい試みで「坂町ミモザの家」という看護小規模多機能にチャレンジしています。ミモザの家の名前の由来ですが、ミホさんとモトさんの姉妹が住んでいた家なので、ミモザの家です。ミモザの木があった訳ではありませんが、庭を整備をするときにミモザの木を植えました。来年の6月の黄色いお花がとても楽しみです。

通ってよし、泊まってよし、我が家でよしの施設です。こういったトライアルをしながら、相談支援の本当に予防のところから、訪問看護・訪問介護を通じて、自宅での看取り、プラスやはりこう支えきれない人のために、登録が25人、泊りが5人で本当に小さなところですが―これを地域の中に作ることで、地域包括的なケアに繋がっていけたらなという風に思っています。

それともう一つの夢は、マギーズセンターを是非日本にという夢です。去年の9月にキックオフをし、今年の4月1日にNPO法人となりました。豊洲の土地に今計画を立てて、初冬には着工、今年度中には立ち上げようと計画中です。今日も朝、打ち合わせをしてきました。是非、関心のおありの方は、ホームページやフェイスブック等をご覧頂ければと思います。以上です。私の話を終わらせて頂きます。

暮らしの保健室
http://www.cares-hakujuji.com/services/kurashi

マギーズ東京プロジェクト
http://maggiestokyo.org/
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◆この記事のレポーターは学生編集部のKです。
人間科学部5年生。特養での社会福祉士の実習中、お昼にスマホをいじり、そこでHELPMAN JAPANを知ったことがきっかけで、編集部へ参加。音楽、アートなど興味のあること多数。自分の興味と介護のコラボで何か新しいことができないかなと日々模索中。保険会社に勤める予定なので、そこで介護に対して出来ることも探しています。介護の世界には発見がつきません!毎回学ぶことが多く、楽しいです。

◆編集を終えての感想
「話すだけで大半は解決」「地域でやってくれる人はいるので、看護師さんに出向いてもらえば色んな所で出来る」「子ども会・飲み会から地域包括ケア」。気づきが多く驚きました!具体的な事例を知ることで、地域包括ケアのイメージが、「これなら本当に、私でも出来るかも」と、鮮明になりました。訪問看護の大家でも、コミュニティカフェの主催者でも、立派なお父さんでもありませんが、無理せずやれることをやろうと思いました。超楽しかったです!
[
写真: 提供 kaigoカフェ
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