HMJ活動紹介
2015.12.04 UP
介護現場の“リアル”を伝える、介護男子スタディーズのトークイベント「介護男子のリアル」に行ってきました!介護の現場で働く男性の姿を切り口にしながら、ジェンダー・グローバル・地域での挑戦など、多角的な切り口で介護の未来をみつめる本プロジェクト。ヘルプマンジャパンでも紹介した書籍が話題になっています。今回のイベントでは、ジェンダーがご専門の山根純佳さん(実践女子大学 人間社会学部 准教授)による講演と、書籍に登場した介護男子17名によるトークセッションが行われました!
(書籍「介護男子スタディーズ」の記事はこちら http://helpmanjapan.com/article/4996)
11月11日は介護の日。
「介護男子スタディーズ」の出版記念イベント
イベントは、書籍「介護男子スタディーズ」の出版を記念して行われました。会場となったアートギャラリーには、テレビ局のカメラがずらり。来場者も多く、会場は熱気に包まれていました。会場の壁には、書籍に掲載された介護男子の写真がずらり(・ω・)! 主催者の一人である社会福祉法人愛川舜寿会の馬場拓也さんが、「デフォルメされたものでなく、現場を切り取ったかたちで介護の魅力を伝えたかったので、スタジオではなく現場での撮影にこだわった。介護は再現不可能でとてもクリエイティブなお仕事。霞が関からでなく、現場からイノベーションを発信していきたい」と語っていたのが印象的でした。
(馬場さんに関する記事はこちら→http://helpmanjapan.com/article/2947)
介護のジェンダーの歴史から紐解く、
介護男子の生存戦略とは!?
前半は、ジェンダーがご専門の山根純佳さん(実践女子大学 人間社会学部 准教授)によるお話。介護男子の歴史と未来をテーマに、ジェンダーの観点から考察されました。
近世では、介護技術の習得が男性にも求められ「武士の為の介護休業制度」もあったのだそうです。しかし時代とともに性別分業が進み、70年代には全国半数の自治体で「介護をする孝行嫁」の表彰まで行われるようになったとか(( ;゚Д゚))。
また、圧倒的に女性の比率の高い介護業界のなかで、介護男子の生存戦略として、これまでは「男性ならではのケアをして、家族賃金を要求する差異化戦略」と「ケア職でかつイクメンでワークライフバランスをはかる同化戦略」の2つがあったとしたうえで、今後、働き方の仕組みづくりを行うことで戦略の幅はもっと広がるとして、介護男子へのエールを送っていました。
介護男子17人のリアルにあふれたトークセッション!
後半は、全国から集まった介護男子17人によるトークセッションでした。ファシリテーターは介護分野の研究者である堀田聰子さん(国際医療福祉大学 大学院 教授)と山根さんのおふたり。
まずは、介護男子17人の自己紹介から。
やはり多くの方が、親が介護職あるいは大学で福祉を学び介護職に興味をもって就かれたそうです。なかには、「東京のIT企業と仙台の広告代理店に勤めた後、両親の面倒を見るために地元で介護職に」という方や、「専門学校でスポーツトレーナーを目指していたら、友人から『これからは介護が儲かる』と誘われて」という方も。
17名の介護男子たちは、なんとこの日がお互いに初対面。しかも事前打ち合わせの無しでのトークセッションだったとか。ほんとうの意味で、“リアル”な介護男子の声が聞ける機会になりました!残念ながらすべてのトークはご紹介できませんが、印象的だったものをご紹介します!●介護男子になって半年、何を感じていますか?
「毎日複数の利用者さんがいらっしゃる中で、その時の気分や身体の状態によって、その日の働き方が変わっていくのが面白いです! 何が起こるのか、行ってみなければ分からなかったり、職員の組み合わせによっても変わってきます。施設でテレビ局の取材を受けたとき、「おつかれさまねぇ」と、利用者さんの方から声をかけられ、自分たちが逆に見守られていると感じたこともありました」
●結婚している方に質問です。家庭ではどの様に分業していますか?
「妻子がいて、妻も別の業界で働いています。稼ぎは6:4ぐらいの割合。休日は全て家族のために使うかわりに、平日の子どもの送り迎えや家事などをお願いして、折り合いをつけています」
●利用者さんと地域との間で暮らしの調整をする活動とは?
「京都市のモデル事業で、社会福祉士の資格を活かして、空き家と独居老人のマッチングをして、そこに社会福祉士法人の見守りを入れる活動に参加しています。地域包括から「引っ越ししたいんだけど」という相談電話を受けて、お話をして、不動産業者の方と一緒にその方に合う物件を下見にいっています。転居が決まれば、その後は週に一回お電話と訪問で暮らしを見守っていく流れになっています」
●これからやりたいことは、なんですか?
「介護は誰もが直面する問題なのに、同世代は何も知らないことに問題を感じました。そこで施設長に許可をとって、ブログで自分の介護観・日常の情景などを伝えています。それが次回の介護男子スタディーズに載れれば嬉しいです!
最後は、堀田さんより「批評者には批評者の役割がある。その一方で、現場のケア職から“こうしたい”という声を発して自ら活かすことが素晴らしいことだと思っています」。「介護職の賃金が低いかどうかは、全職業の中で言うと中間ぐらいで、実は微妙な問題なんです。政府に賃金を上げる要求をしようと言いますが、賃金を上げるのは、私達介護職本人。500円のランチに行く人もいれば、2000円のランチを選ぶ人もいます。私たちは2000円のランチ、より選ばれるサービスを考える必要があります」とのコメントで締めくくられました。
トークセッションを終えて、主催者の一人、社会福祉法人福祉楽団の飯田大輔さんは、「彼ら(介護男子)にもっと地域に出て行ってもらって挑戦をしてもらう、そのリスクをとることが、我々経営者の仕事」と話されたのが印象的でした!
イベント終了後には、テレビカメラを前に個別に取材を受ける介護男子たちも多数いて、注目度の高さが伺えました。これからも、“介護男子”たちの活躍に注目していきたいです!
(堀田さんに関する記事はこちら→http://helpmanjapan.com/article/1313)
(飯田さんに関する記事はこちら→http://helpmanjapan.com/article/3585)
◆この記事のレポーターは学生編集部の亀谷ひとみです。
人間科学部5年生。特養での社会福祉士の実習中、お昼にスマホをいじり、そこでHELPMAN JAPANを知ったことがきっかけで編集部へ参加。損保に勤める予定なので、できれば介護部門に携わって学んだことを活かしたいという野望があります。介護の世界には発見がつきません!毎回学ぶことが多く、楽しいです。
◆編集後記
「一番地域に近い人」って誰なんだろう?って考えた時に、今回主役のケア職の方達なんだろうなと改めて感じました。デザインや金融など、どんな立場からでも「地域活性化」には参加ができると思いますが、一番頼りになるケア職の方達に普段の生活の中で会えないのはもったいないなと思いました。 慈善的なイメージではなくて、“クリエイティブな介護男子”を広めるには、内外の「こうしたい」の発信が欠かせない。馬場さんが「“彼ら”介護男子」ではなく「“我々”現場のケア職」って言ってたのが超格好良かったです!
【文: 亀谷ひとみ 写真: 介護男子スタディーズプロジェクト、編集部】