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2017.07.11 UP

ブライダル業界で介護スキルを発揮! 仕事経験を生かせる「ケアアテンダー」とは?

少子高齢化、晩婚化が進む中、注目を集めつつあるサービスがある。結婚式に参列する高齢者の付き添い介護を行う「ケアアテンドサービス」だ。結婚式の演出を中心に、専門アーティストの養成や人材派遣、結婚式のコーディネート事業を手掛ける東京音楽センターが2015年よりスタートさせた新事業で、利用者は着々と増えているという。実際に結婚式でサービスを提供するのは「ケアアテンダー」。介護の仕事の経験がある人にとっては、新しいキャリアのひとつの選択肢ともなり得そうだ。そこで、代表取締役社長の東薫也さんと、同事業の企画・立ち上げを担当した介護福祉士の伊東香緒里さんに話を聞いた。

自身の結婚式での経験が
サービス誕生のきっかけに

東京音楽センターは、司式者や聖歌隊、オルガニスト(オルガン演奏者)など演奏者や司会者、音響オペレーターといった、結婚式の演出を行う人材のコーディネートを手掛けている。登録アーティストは全国で約3,000人、演出に関わる結婚式は年間3万5,000件を超えており、このウェディングプロデュース事業で売り上げの約9割を占めるという。

そんな同社が、2015年12月に開始した新たな事業が「ケアアテンドサービス」だ。

「ケアアテンドサービスとは、結婚式専門の付き添い介護サービスです。『ケアアテンダー』と呼ばれる、結婚式のマナーやホスピタリティの研修を受けた専門の介護スタッフが、ご家族の方に代わって式中の介助や見守りを行います」(東さん)

介護が必要な方が式に参列する場合、一般的には家族や親戚が介助を行う。東さんは、自身の結婚式での経験から、ケアアテンドサービスの必要性を感じたという。

「結婚式のとき、父が足を悪くしていて車いすで参列したんです。母が食事やトイレ、挨拶などのたびに横について父の面倒を見ていましたが、式の後に『大事なあの場面を見逃した』などと残念がっていたのです。結婚式の間、安心して介助を任せられるサービスがあれば、母のように後悔する人が減るに違いないと考えたのが、事業化を考え始めたきっかけです」(東さん)▲東京音楽センターは、1973年に東氏の父・暉久氏が東京都小平市で創業。現在は名古屋、大阪、福岡など7つの拠点を持ち、全国にサービスを展開している

ブライダルの研修を受けたスタッフを
現場に派遣し、介護サービスを提供

とはいえ、同社は結婚式の演出を専門に手掛けてきた会社であり、介護の知識はまったくといってなかったという。そこで、まずは介護の知識がある人を自社に迎え入れようと募集を行い、入社したのが、介護施設での勤務経験があった伊東香緒里さんだ。

デイサービスで働いていた伊東さん。逆にブライダルの知識はまったくなかったため、結婚式の現場を見学したりしながら、伊東さんが中心となり、このサービスの枠組みを作っていったという。

「実際に式場へ行き、車いすや杖をついて参列している方が非常に多いと感じました。また、施設そのものはバリアフリーになっていても、車いすでは通りにくい厚みのある絨毯が敷かれていたり、滑りやすい床だったりすることも少なくありません。結婚式について学ぶうちに、ますますケアアテンドサービスの必要性を感じました」(伊東さん)

サービス内容は、伊東さんが介護現場で培った経験や知識をもとに、社内で話し合いながら、移動・トイレ・食事・送迎の同伴といった枠組みや、ケアアテンダーの募集、採用後の研修などについて決めていったという。

「ケアアテンダーは、(旧)ヘルパー資格2級以上を条件にしており、介護の仕事経験がある方を募集しています。介護現場で働いている人や資格取得を目指している人、介護だけでなくブライダルにも興味がある人など、いろいろな方からの反応がありますね」(伊東さん)

現在、登録しているスタッフは10人。登録までのステップは、事前に面接を行い、結婚式での仕事を実際に見学。その上で登録するかどうかを本人に決めてもらうという。登録後は、結婚式の流れやマナー、介助内容について研修を受け、ケアアテンダーとして現場に派遣される。▲介護の仕事経験があったとしても、不安なことがあればその人に合わせて研修を実施している。また、サービス当日までに必ず施設の下見を行い、当日のシミュレーションをしておくという

サービスを選択するだけの
簡単な料金体系を導入

ケアアテンドサービスのような付き添い介護は、介護保険適用外のサービスとなることもあり、「料金体系については特に頭を悩ませました」と東さんは振り返る。

「外出付き添いなどの介護保険適用外サービスを参考にしました。特徴としては、時間単位ではなく『挙式のみ』『挙式と披露宴』というようにお客さま自身がプランを選べることです。時間制だと時間を気にしながら列席することになりますし、実際に結婚式は予定より時間が延びるケースも多いからです」(東さん)

具体的には、打ち合わせ、式場下見、近隣の医療機関の場所の確認、スタッフ移動にかかる費用を含めた「基本料金」と、「挙式参加」「披露宴参加」「送迎同伴」というアテンドサービス料金の組み合わせだけで金額が決められるため、分かりやすい仕組みとなっている。

例えば、挙式参加だけの場合は「基本料金」+「挙式参加」で3万3,500円、さらに「披露宴参加」を加えれば4万5,500円、「送迎同伴(往復)」が必要であればそれを加えて5万7,500円(金額はすべて税抜き)となる。

一方、ケアアテンダーの報酬はどのように決めているのだろうか。

「初めてのことなので、伊東と相談しながら決めました。いまのところ不満の声は聞かれませんが、サービス内容と同様、報酬についても検討・改善していきたいと考えています」(東さん)▲サービスを周知させるために、専用のホームページやチラシの作成以外に、SNSを活用した取り組みも進めている

成約・問い合わせ件数が前年比で増加
登録スタッフの倍増を目指す

サービスがスタートして約1年半。件数や売上額は公表していないが、成約件数、問い合わせ件数共に増えており、前年比・前月比で100%を切ったことはないという。問い合わせ件数では、前年比で3倍以上になる月もあるそうだ。

新郎・新婦からご両親やご祖父母の介助を依頼する問い合わせが最も多いというが、新郎・新婦のご両親・ご家族からの依頼や、式に列席する高齢者が利用している介護施設からの問い合わせも増えているという。

「情報発信は、当サービスのホームページがメインとなりますが、インターネット広告を駆使するなど周知を図っています。うちの強みは、演出の事業で培ってきた結婚式場とのつながりですから、ケアアテンダーの登録者数を増やし、式場とタイアップするなどして直接、新郎・新婦さんに訴求できるようにしたいですね。3年以内に、そのための体制を整えたいと考えています」(東さん)

介助を受けたご利用者さんからは、「このサービスと出合えてよかった」と言われるなど、「心のこもったアテンド」や「親切で丁寧な対応」「細やかな気配り」に感謝されることが多いという。

また、実際にサービスを利用した新郎・新婦やその家族からも、

「貴重な両家の親睦の場なので、楽しんでもらいたいと思って利用しました。家族もヘルパーさんがいて本当に助かったと喜んでいました」

「母は介護拒否することも多いのですが、ケアアテンダーの方の人柄がよく、安心して任せることができました」

といった喜びの声が寄せられているという。

結婚式を熟知しているからこそ、式の進行に沿って「ここを見逃さないように、事前にお手洗いに行っておきましょう」というようなきめ細かいサービスができる。その点についても評判は上々だ。

一方、同社では事業拡大を目指してケアアテンダー登録者を増やす計画だが、まだまだサービスの認知が進んでいないこともあって、人材確保には苦労も多いという。結婚式と介護がかけ離れているため、仕事のイメージが涌きにくいのではないかと東さんは分析する。

「いろんな方法を試して、まずは20人くらいまで増やしたいですね」(東さん)▲介護度が高く対応が難しいと判断した場合には、2人体制で介助を行うことも

「あって当たり前」のサービスを目指し
ブライダル市場を盛り上げたい

同社が目指すのは、「ケアアテンドサービスがあって当たり前」という未来だ。

「式場の支配人さまや経営者の方々にケアアテンドサービスを紹介すると、『いますぐにでもサービスのラインアップに加えたい』と言われることが多く、現場のニーズは高いことが分かってきました。当社の概算でも、要介護の方が列席される結婚式は、年間25%程度となっています。これは規模の大きな式を中心にとったデータですから、実際の割合や人数はもっと多いのではないかと考えています」(東さん)

こうした現状を踏まえ、当面の目標は、同社が演出を手掛ける年間結婚式数の10%、約3,500件までケアアテンドサービスを提供する式の件数を増やすことだという。ケアアテンドサービスも含めた「その他の売り上げ」のシェアも、現在の約1割から3割程度に拡大させたいと考えている。

「ブライダル市場は少子化などで縮小傾向にありますが、だからこそ市場を活性化するひとつの手段になると信じて取り組んでいます。実際に『おじいちゃんやおばあちゃんが来てくれるならちゃんと式を挙げたい』と考える新郎・新婦もいらっしゃいますし、式場としても列席者が増えるのはうれしいはずです。当社としてもサービスの幅が広がり、お客さまへの付加価値を高められます」(東さん)

「介護の仕事の枠組みの中に、ブライダルというジャンルを作っていきたい」と伊東さん。同社では、そうした状況を実現させるためにも、ケアアテンドサービスをひとつの先行モデルにしていきたいと意気込んでいる。▲以前、デイサービスで働いていた際に、外出の付き添いをした経験があった伊東さん。「施設でのさまざまな経験が、いまのケアアテンドの仕事に生かされています」

【文: 志村 江 写真: 桑原克典(TFK)】

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