対談
「今月のヘルプな人」第3回(前編)/日本の介護をテーマにした漫画『ヘルプマン!』(講談社)の作者・くさか里樹さんが、さまざまなジャンルの“ヘルプな人”と対談するコーナー。第3回のゲストは、料理研究家のコウケンテツさんです。世界各地の家庭にホームステイして、家庭料理の良さを味わってきたというコウさんは、料理で大切なのは味や技術ではなく、気遣いや思いやりを込めることだといいます。それって相手と心を通わせる介護の世界と似ているかも? 今回の対談では、“高齢者の方に食べてほしいお料理”もコウさんに作っていただきました。栄養満点な2人のトークをぜひご堪能ください!(対談の模様は、7月・8月の2回にわたりお届けします。コウさんのレシピは後編でご紹介!)

料理も介護も
技術ではなく心でつながる

画像/料理をしながら、和気あいあいと対談は進みました!
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コウさんの講演会には高齢者の方が多くみえるそうですが、
いつもどんなお話をしているんですか?
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食の大切さや食育、育児などをテーマに、アジアの旅の話もさせてもらっています。
アジア各地の家庭でホームステイするテレビ番組をやらせてもらっているので。
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へえ~! 
どこか強く印象に残っている国はありますか?
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料理家になって間もないときに行ったフィリピンですね。
1500年間まったく変わらないやり方で
稲作を続けている方々がいるんです。
山奥の田舎にある、15人くらいの大家族が住む家にホームステイして、
そこで食べたごはんがとてもおいしくて。
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ど、どんなごはんなんですか!?
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自分たちの畑で採れたキャベツと白菜を炒めて
ごはんにかけて食べるという質素なものなんですが、
おばあちゃんが食べやすいように食材を細かく切って、
クタクタになるまでじっくり炒めるんです。
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わー、おいしそう!!
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気遣いや思いやりがたくさん込められていて、
家族で料理を食べるってこういうことなんだ、
料理は味や技術だけじゃないんだと勉強させてもらいました。
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お話を聞くと、介護の仕事も料理と似てるなって感じます。
技術や作業ではなくて、結局は心でつながっている。
同じ場所で一緒に生きているとか、
感性で感じ取る部分がとても大きいんですよ。
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なるほど~!
海外では言葉が通じないので、
僕の場合、コミュニケーションは料理なんです。
「みんなおいしく食べてください」と料理で通じ合うことができたら、
どんなことでも乗り越えていけそうな気がするんですよね。
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食事は自分の
アイデンティティにも関わるもの

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ところで、コウさんのルーツは韓国ですが、
韓国の高齢化のスピードもすごいですよね。
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社会のシステムや人の考え方が追いついていなくて、
日本より大変になるっていわれているようです。
儒教の精神が残っていますから、
施設や他人にまったく頼らずに家族が介護して当たり前って意識も根強くて。
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なるほど。
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時代が大きく変わっていると感じます。
人の暮らしぶりも変化していて、
キムチをつけられない人も増えているんです。
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キムチを食べられない子どもも増えているとか?
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そうなんです。
日本でも味噌の味が嫌だっていう子どもがいますよね。
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発酵食品が苦手になってきてるのかな…。
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僕は、発酵食品は人類の英知だと思うんです。
発酵食品とともに文明は発達してきたし、
それを食べられないのは、本当にもったいないことだと思います。
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コウさんは食育の話もよくされていますが、
どんな問題があると感じますか?
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食の欧米化や合理化はどうしても避けられないですけど、
インスタント食品や冷凍食品ばかり使っていると、
それが味覚のベースになってしまうんですね。
例えば、離乳食から出来合いのもので育ってしまうと、
ダシの味をうま味と感じ取れる鋭敏な味覚がなくなってしまい、
大人になってから、基礎となる味を感じる“戻る舌”ができないと思うんです。
ライフスタイルの違い、価値観の違いもあるんですが…。
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それは悲しい…。
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だから、食育という意味では、
そういう舌をちゃんと作ってあげることが大切だと思います。
食事はアイデンティティにも関わることですから。

この世の中で一番大切なのは食べること

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僕は子どものころ、毎日、両親から口酸っぱく言われていたんです。
「この世の中で一番大切なのは食べることだ」って。
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おお~!
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母は毎日、韓国の家庭料理を作ってくれましたし、
共働きでしたから、たまに朝ごはんは隣のおばあちゃんが
食べさせてくれることもあったんですね。日本の佃煮とかお味噌汁とか。
だから僕は幸運にも、母の韓国家庭料理と
日本の家庭料理の両方を味わえる環境にいたんです。
母にもそのおばあちゃんにもすごく感謝しています。
感性が豊かになるし、感謝する気持ちも芽生えますから。
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食を通して、心が広がっていくんですね。
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はい。だからアジアの知らない家庭にパッと入り込めるし。
その食体験が、いまの僕の活動の原点なんですよね。

おじいちゃんやおばあちゃんの
知恵を受け継ぐこと

画像/コウさんからは、ヘルプマンジャパンにかわいらしいサインをいただきました!
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子どものころの話で思い出したんですけど、
僕、幼稚園のときに友達とけんかをしたことがあって。
そのとき、近所のおばあちゃんが仲裁してくれたんです。
「手を出しなさい」っておばあちゃんに言われるがまま、みんなが手を重ねたら、
「あれ? あんたらいつのまに手をつないで仲良しになってるの?」って(笑)。
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いい話ですね~(笑)。
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そういう仲裁の仕方って、人生経験を積んだ人にしかできないですよね。
いま思い出しても、おばあちゃんの知恵ってすごいと思う。
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そういうふうに、おじいちゃんおばあちゃんが自由に発言したり、
動けるような居場所があると、力を発揮できるんですよね。
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料理でいえば、国が郷土料理を復活させる取り組みを始めているんです。
地産地消で、学校給食でも地元のものを使おうとか。
先人の知恵を守ろうという、とてもいい流れが生まれていると思います。
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おじいちゃんやおばあちゃんが、料理の先生として活躍できるかも!


(続く/コウさんのレシピも紹介する対談の後編は、8月25日に公開予定)

★くさか里樹のつぶやき★

「コウさんが介護士さんだったら、時代を明るくリードするすんばらしいヘルプマンだったに違いない。じじばばにもご家族にも大人気だったに違いない。ヘルプマン魂は、介護現場じゃないところにもいっぱいあるんだなあ!」(くさか里樹)
[
文: 成田敏史(verb)
写真: 片桐圭
]
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