業界最新トレンド
小売大手のイオンの店舗が大きく変化しています。社会の“シニアシフト”に合わせた新たな商品やサービスを導入しているのです。そんなイオンのシニアシフトを象徴する取り組みのひとつが、「G.Gモール」と呼ばれるアクティブシニアをターゲットにした店舗の出店です。店内には、個人の要望に応対するコンシェルジュサービス、カルチャー講座の設置、ユニバーサルデザインを取り入れた表示など、買い物をする場所だった従来のショッピングモールとは異なる、さまざまな提案が取り入れられています。団塊の世代が高齢者となり、高齢者像が変わるといわれているいま、新しい高齢者サービスや介護のヒントがあるかもしれません。
プロフィール紹介
1958年生まれ。1983年4月、ジャスコ株式会社に入社。ジャスコ山崎店長、ダイエー富田林店長などを経て、2012年3月、イオン葛西店長に就任。同店は2013年5月、「G.Gモール」としてリニューアルオープンしている。2013年9月からG.G推進チームに在籍し、同チームのリーダーを務めている。

ターゲットは人生で最上の時を楽しむ
グランドジェネレーション

画像/2014年4月25日にオープンしたイオンマリンピア店のG.Gモールのフロアサイン
イオンはこれまで、30~40代のファミリー層をメインターゲットにしてきました。しかし、超高齢社会を迎えた日本では、いま、シニアのマーケットが年々拡大しています。

そうした方々にもイオンのファンであり続けていただき、お子さまやお孫さんと一緒に足を運んでいただきたいという思いから、イオンはシニア層への商品やサービスを強化する「シニアシフト」という戦略を掲げ、新しい店舗づくりを行っています。

シンボル的な取り組みとして挙げられるのが、2013年5月にイオン葛西店(東京都江戸川区)を、行動的で趣味や消費活動に積極的なアクティブシニアをターゲットにした「Grand Generation’s Mall(G.Gモール)」としてリニューアルオープンしたことです。

「Grand Generation」とは、放送作家の小山薫堂氏が提唱する、“シニア”に代わる世代の考え方です。イオンは小山氏のコンセプトに賛同し、55歳以上の方をG.G世代と定義し、シニアが人生の中で最上(Grand)の世代(Generation)であることを、皆さんに認知していただきたいと考えています。

2014年4月にはイオンマリンピア店(千葉県千葉市)を、G.Gモール第2号店としてリニューアルオープンしました。「ゆったりとした時間を過ごすことができる」と、さまざまな世代のお客さまからご好評いただいています。
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G.G世代の個別の要望に応対する
コンシェルジュサービス

G.Gモールでは、G.G世代をはじめ、あらゆる世代のお客さまにより便利にお買い物いただけるよう、接客のレベルを高めて、お客さまのための“コーディネート”を提案することに重きをおいています。例えば、葛西、マリンピアの両店舗とも、お客さまの個別のご要望にお応えし、お買い物のご相談を専任で行うコンシェルジュサービスを導入。ベッドひとつ購入するにしても、「どの高さのものが腰掛けやすく、立ち上がるときに体に負担がかからないか」「今後もし介護が必要になったときに、どんなベッドなら長く使えるか」といったアドバイスを対面でしています。

このサービスを取り入れたことで、お客さまからご意見をいただく機会も増えました。われわれも常に勉強できますし、そこで得た新しい情報は他のお客さまともシェアできる。このようにして、サービスの質の向上をはかり、お客さまのニーズにお応えしているのです。

また、お買い上げいただいた商品を、その日のうちにお客さまのご自宅までお届けする「即日便」サービスや、公共料金の収納代行や家事代行業務、冠婚葬祭のご相談など、お客さまの暮らしをサポートするサービスステーション「くらしのコンシェルジュ」などにも取り組んでいます。

モノの購入からコトの体験を促す
ショッピングモールに

画像/イオンマリンピア店のG.Gモール。奥に見えるカフェを中心に、書店やCDショップ、イベントスペースなどが設置されている
従来のショッピングモールは一般的に、フロア内に商品をできるだけ多く陳列し、品揃えを充実させることが大きな目的でした。しかし、G.Gモールでは、“モノ”を買うことに加えて、新たな体験をしたり、ゆったりとしたひとときを過ごすといった、“コト”を提案する空間づくりを行っています。

葛西店ではカルチャー講座を展開していますし、両店舗とも店内にカフェを設置し、そこを中心にして、書店、CDショップ、手芸・クラフトショップ、イベントスペースなどを配置し、お客さまの趣味が広がるような空間にしているのです。カフェのような“くつろぎのスペース”は、直接的な売り上げに結びつかないものだと考えられていましたが、そうした空間を用意することで、お客さまの滞在時間が伸びるだけでなく、従来のショッピングモールにはない、上質なフロアを演出できたと自負しています。

例えば、仕事に忙しく、十分な余暇を取れていなかったような男性のお客さまは、カフェの席に座れば、自宅とは違ったほどよい緊張感を保ちながらリラックスできると思います。特に誰と会話するわけでなくても、心地よい雑踏の中に身を置くことで社会に帰属していたいという欲求を満たすこともできるでしょうし、共通の趣味を通じて新しい出会いが生まれる可能性もあるのです。

実際、G.Gモールは、近居している親御さんとお子さん、お孫さんが触れ合いながら、お買い物を楽しむ場所として使っていただいています。おしゃれをして来店されるG.G世代の方も多く、ご夫婦のデートの場として活用してくださる方もいる。そうした光景を見ると、われわれもうれしくなりますね。

買い物の肉体的な負担を
フロアづくりで自然にフォローする

画像/コンシェルジュサービスの様子。イオン葛西店のG.Gモールにて(写真提供:イオン)
フロアづくりについて付け加えると、店内の商品表示や案内看板にユニバーサルデザインを導入。また、店内各所にゆったりと座れる椅子やソファを配置しています。

G.G世代のお客さまの中には、買い物が肉体的な負担になり、本来買いたいと思ったものが疲れて買えなかったという方も少なくありません。そこで、ふと疲れたな、という気持ちになったときにひと休みできるスペースが自然とあるような買い物空間をご提供しているのです。

私は葛西店の店長をしていたのですが、G.Gモールとして葛西店をリニューアルしたあと、ご高齢のお客さまからお褒めの言葉をいただけたのがありがたかったですね(笑)。

今後もG.Gモールを展開
地域や時代に合わせた店舗づくりをめざす

G.Gモールは今後も各地域で展開していく予定ですが、チェーンストアだからといって、他の店舗でやったことを、判で押したようにやり続けても意味がないと考えています。

葛西店の立ち上げ時も、「G.G世代に受け入れてもらえるショッピングモールとはどんなものか」と、社長から私のような現場の人間も含めて、みんなで膝を突き合わせて考えました。スーパーマーケットの黎明期のような熱意や面白みが、そこにはあったと思います。

これからも各地域のお客さまの声を参考にしながら、品揃えもサービスも店舗ごとに変化させたい。そして、G.G世代をはじめ、さまざまな世代のお客さまに満足していただける店舗を作っていきたいと考えています。
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文: 成田敏史(verb)
写真: 芹澤裕介
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